達成感を味わいたいのなら辛(から)く物事に処す必要がある。と、誰もが思うだろうが、実はそうでもない。^^ 甘(あま)く処した場合でも達成感を味わうことが出来る場合もある・・ということだ。達成感とは胸にジィ~~~ンと来る、なんとも言えない感慨なのだが、達成するまでのプロセスが辛く長いほど、甘ぁ~~~く心に染(し)み入るように感じるものなのである。この感覚を味わいがため、傍(はた)から見れば無意味なことでも人は頑張る訳だ。^^
とある高山地帯の中腹である。夏山シーズンということもあり、多くの登山家が訪れている。
「豚尾さんっ! もう少しじゃないですかっ! 頑張りましょうよっ!!」
「牛皮君、そうは言うが、まだ中腹だろっ!? まだ半分もあるじゃないかっ!!」
「大丈夫ですよっ! 登りの峠は越しましたから…。あとは稜線伝いに緩い登りだけですから…」
「上手(うま)いっ! 峠を越すと山の峠をかけた訳だなっ!」
「いや、そんなつもりじゃ…。とにかく頂上を目指(めざ)しましょう!」
「達成感を味わうために、なっ!!」
「ええ。山頂の山小屋で飲む辛口の冷えた缶ビールは、また格別ですよっ!!」
「ああ!!」
息を切らしていた豚尾は俄(にわ)かに元気になり、また少しづつ登り始めた。
人の達成感は、甘い楽しみで一層(いっそう)辛く高まるようである。^^
完