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水本爽涼 歳時記

日本の四季を織り交ぜて描くエッセイ、詩、作詞、創作台本、シナリオ、小説などの小部屋です。

甘辛(あまから)ユーモア短編集 (92)欲(よく)

2021年08月20日 00時00分00秒 | #小説

 欲(よく)がないと人らしくないようだ。ただ、この欲にもいい欲と悪い欲があるという。いい欲は意欲というヤツで、人にやる気を起こさせる。今風に言えば、アグレッシブな辛(から)い気分にさせてくれる訳だ。^^ 一方、悪い欲の場合は、その人を甘(あま)い声で誘惑し、堕落させる方向へと向かわせるから注意が必要だ。皆さん、注意をしましょう! えっ? それがいいんじゃないかっ! って? …勝手にしてください。^^
 とある俳句教室である。
「なかなか、いい句が出来ません…」
 一人の生徒が先生に訊(たず)ねた。
「ははは…欲ですよ、欲っ! 俳句なんてもんはねっ! 楽しく作りゃいいんですよっ! いい句を作ろう! なんて欲張っちゃいけないっ!」
 指導する先生は静かに生徒へ返した。
「なるほど…楽しく詠(よ)みゃ~~いい訳ですねっ!?」
「そうそう! 風情(ふぜい)ですよっ! 侘(わ)び寂(さ)びのっ!」
「風情の侘び寂びか…」
「侘び寂びの風情でもいいんですよっ!」
「んっ!? どう違うんですっ!?」
「ははは…欲に対して甘(あま)いか辛(から)いか・・ってとこじゃないですかっ!?」
「…?」
 今一、分からない生徒は訝(いぶか)しげに先生を窺(うかが)った。
「暑い朝 蛙ひょっこり おはようさん・・ どうですっ!?」
「はあ…?」
「欲ばらんのがいいんですよっ! 欲ばらんのがっ!?」
 そう言った先生だったが、内心はいい句を作ろう! と作った欲ばった一句だった。^^
 甘くも辛くも、欲は人から離れがたい。^^

                  完


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