その頃、鳩村は口橋がよく出入りするラーメン屋のオカメで特製大盛りラーメンを食べていた。だが、鳩山はハプニングさえ起きなければ、来年三月の人事異動で警察庁へ返れる・・という未来を忘れていたのである。鳩村はただの署長になり果てていた。鳩村の体内には彼の記憶の一部を喪失させたЙ3番星から来た異星人が潜んでいた。むろん、そのことを鳩村自身は認識していない。実のところ、五体のミイラが発見されたのも署内の霊安室から忽然と消えたのも、このЙ3番星から来た異星人が関与していたのである。
口橋と鴫田がラーメン屋へ入ろうとしたとき、Й3番星から来た異星人が乗り移った[憑依した]鳩村は、ちょうど勘定を済ませて店から出た直後だった。
「…おいっ! あれ、署長じゃねぇ~か?」
「ははは…署長がこんなラーメン屋へ入る訳ないじゃないですか…」
「ああ、そう言われればそうだな…。後ろ姿がよく似てたが…」
「年恰好の似た男は大勢いますよ、口さん」
「そらそうだ。署長は制服だしな、ははは…」
二人はオカメの暖簾を潜ると、どういう訳か鳩村が座ったカウンター席へ座っていた。これも、Й3番星から来た異星人が引き起こした小細工だった。
「婆さん、妙なことを言ってたな、鴫田…」
「ええ、署長さんに詳しいことは訊いて下さい・・でしたか?」
「だったな…」
「署長がコトの真相を知っておられるってことですよね…」
「ああ…」
「とすれば、とにかく署長を探すことに全力を尽くそう!」
「はいっ!」
「へいっ! 特製大盛りラーメンっ!」
鴫田の返事と同時に、店の店主が特製大盛りラーメンを二人の前へ置いた。