店内に客は疎(まば)らで、三人は周囲に客がいない席へ腰を下ろした。しばらくして、ウエイトレスが水コップをトレーに乗せて現れた。各自が注文を済ますとウエイトレスはオーダー書きを確認した後、楚々と去った。
「今どき、ハンディで注文、取らないんですね、この店…」
「いいじゃないか、レトロで…」
鴫田が訊ね、口橋が軽く返した。
「口さんが私に訊いた話なんですがね。情報は公安内部のある署員から聞いたんですよ、実は…」
「とある地へ埋葬されたって言ってましたよね。それは?」
「公安に迷惑がかかるかも知れませんので、今のところ、ドコソコとは話せませんが…」
「そうですか…。それと、例の祈祷師の婆さんが、署長に訊けば分かるって言ってたんですが、何のこってす?」
奥多摩の山深い庵で暮らす祈祷師の老婆に乗り移った[憑依した]Й3番星から来た異星人が老婆に言わせた話である。口橋には皆目、見当もつかなかったが、署長に訊けば分かると言ったのだから訊ねたのである。一瞬、鳩村はギクッ! とした。というより、鳩村に乗り移った[憑依した]Й3番星から来た異星人がギクッ! としたと言った方がいいのかも知れない。
「ああ、そうでしたか。いやなに、私がお婆さんに少しお話したことですかね?」
「と、いいますと…」
「ははは…他愛もない話です…」
鳩村に乗り移った[憑依した]Й3番星から来た異星人は内心で『つまらんことを言う奴だ…』と、自身の存在がバレる危うさに気づき、先遣者の異星人を愚痴った。