「ミイラは消えるわ署長が消えるわでは、話にならないじゃないですかっ!」
鴫田が突然、絶叫したような声を出した。
「ともかく、全てが消えた地点はこの署内だってことは疑う余地がないっ!」
口橋が理詰めの考えを呟いた。鴫田は、それは当たり前でしょ! とは思ったが、とてもそんなことは言えなかった。
「では今、ミイラや署長はどこなんですっ!?」
「鴫田、それは簡単な話だ。すべては俺達が想像もつかない無い地点に存在しているのさ…」
「無い地点って!?」
「ははは…それが分かりゃ~なっ。まあ、いいさ…おいっ! いくぞっ!」
何がいいのか分からないが、口橋の脚は動き始めていた。^^
「口さん! 待って下さいよっ!」
鴫田は口橋の後を慌てて追った。二人が立ち去るのを手羽崎は呆然と見送る他なかった。
『署長っ! かくれんぼ、してないで出てきて下さいよ…』
これが手羽崎の偽らざる思いだった。
その頃、忽然と消えた署長の鳩村は、国土地理院の地図上には無いとある地点で、署内で展開する騒動の一部始終を眺めていた。だが、その事実は口橋が仄(ほの)めかした以外、誰も知らない。それは異星人が作り出した実際には無い地点だった。
さて、ここは麹町署の外である。口橋が向かったのは、よく出入りするラーメン屋、オカメだった。腹が減っていたのだ。^^
「口さん、どこへっ!?」
「どこへっ? って決まってるだろうが、オカメよっ! お前、よく腹が減らねぇ~な?」
「あっ! そういや、何も食ってませんでした…」
鴫田はボリボリと頭を掻いた。