二人が特製大盛りラーメンをズルズル~っと音を立てて食べ始めて数分したところで、オカメの店主が訊ねるでなく声をかけた。
「確か…あんたら、警察の人だったね…」
「ああ、そうですが…」
「ほん今まで、ここに座っていた人も警察のお偉いさんでしたよ」
「警察の?」
「ええ、麹町署の署長さんとか言ってらしたが…」
「本当かいっ!!」「ええっ!」
二人は思わず顔を見合わせた。
「どこへ行くとか言ってられませんでしたか?」
口橋が箸を置いた。
「いや、そこまでは…」
「どっちへ行かれました?」
鴫田は麵を啜りながら訊く。
「右手へ歩いて行かれたと思いやすが…」
「おい、行くぞっ!」
口橋が鴫田の肩を軽く叩いて急かす。鴫田は名残惜しそうに半ば食べ終えたラーメン鉢を見ながら立った。
「親父さん、ここへ置いとくっ!」
口橋は勘定をカウンターに置くとオカメを飛び出した。鴫田もあとに続いた。
「気の早いお方だ…。ほん今、といっても十分以上前なんだが…」
オカメの店主はニンマリと哂(わら)った。