「ウイルスのお話でごぜぇ~ましゅが、実のところ私どもが撒き散らした微生物でしてのう…」
「それは…」
人が悪性菌を撒き散らすなど、国内に及ばず世界的にみても犯罪行為であることは疑う余地がない。ただ、この老婆にそれだけの大ごとが出来るとも思えない…と口橋は考えた。
「これ以上のことは私めの口からは申せましぇん…。お告げを申したいのは山々ですが、これ以上、口を開けば胸が苦しゅうなって死によりますだ…」
「誰が死によりますか?」
「私めが死によります…」
老婆に乗り移った[憑依した]Й3番星人は、自分の意思でないことを言った場合、その者を抹殺するようなのである。実にもって怖く、恐ろしい事実だった。だが、そんな現実離れした事実が刻々と進行しているなどとは、口橋も鴫田も知る訳がなかった。
「どうしてでしょう?」
「いろいろと先々のことが分かるようになりましてからというもの、そのような苦しゅうことになりよりましゅだぁ…」
「ご祈祷をお始めになってから、ということですか?」
「そうでごぜぇ~ましゅだぁ…」
老婆は首からぶら下げた勾玉を片手で握りながら皴枯れ声で説明した。