2023年師走の世相である。政界は与党の政治資金収支報告書不記載という一大事件で揺らいでいた。そうはいっても、政権担当能力を保持する野党は存在せず、多くの政策集団がアァ~でもないコォ~でもないと罵(ののし)り合う中、混迷を深めたまま年を越そうとしていた。
「哀れだな…」
風呂上がりの赤ワインをチビリチビリと啜(すす)りながら、雲上はキッチンで調理した特上の神戸牛のひと口ステーキを頬張った。昨日、とある友人から届いたお歳暮だった。
『美味だ…』
赤ワイン⇔肉という組み合わせは食通なら誰もが知っている知識だが、政治の最良の組み合わせは現時点で完成されておらず、先行き不透明の未知数が続いている。雲上は、まあいいか…と思うでもなく思いながら、またパクリッ! とひと口頬張ってはグラスをチビリッ! と傾けた。何がまあいいのか? は自分でも分からない雲上だったが、不安が広がる歳末の世相に嫌気がさしていた。
『野党[デモクラシーが熟成したparty]は無理か…』
雲上は深い溜め息を吐(つ)いた。完成する見込みがない政党の組み合わせに対する諦(あきら)めの吐息だった。まあ、いいか…と雲上はリモコンのボタンを押し、テレビをオフった。この、まあ、いいか…は、今日の大掃除だった。^^
完