演技とはいえ、美味そうに、よくパクつけるな…と尾豚は感じながらテレビ画面を観ていた。画面には、とある食品メーカーのCMが流れていた。キャストされた出演者が美味そうにその食品メーカーから発売された新製品をパクついていた。世相は飽食の時代の真っただ中を突っ走っていた。
『コイツっ! 美味そうに食べやがるっ!』
自分はカップ麺で、コイツはコレかよっ! と尾豚は飽食の時代の食料格差に少し怒れた。だが、怒ったところでこの食料格差は仕方がなかった。親会社が不景気で、尾豚が務める子会社のそのまた下の下請け工場は給料未払いの日が続いていた。だがようやく、昨日、工員達に半額が支給された矢先だった。これでは年が越せんぞ…と、尾豚は疲れ切った身体を癒そうと、タオルとポリ風呂桶を片手に銭湯へ向かった。師走の風が冷たく尾豚の頬を撫でた。食料格差がいっそう尾豚の心を冷えさせた。
また、美味しいごちそうを食べられる日もありますよ、尾豚さん!^^ そう、テンションを落とされず頑張って下さいっ!^^
完