最近の慌ただしい世相に、思わず時の流れが速(はや)過ぎると思うのは私だけなんですかね。^^ 車社会になってしまったからかも知れません。^^
木地師の村吉は山へ入り、器になりそうな木を探していた。これはっ! と思える木を適当に切り倒して適当な寸法に裁断して山裾の製材場へと運び、製材後の適当な寸法の木を加工小屋で個々に器にするのだ。この山では木地にするまでで、漆の塗りは山を下りた村でやっていた。その村にも最近は隣町から車が頻繁に出入りするようになり、どことなく時の流れが速くなったな…と村吉は思うでなく感じていた。
「村吉さん、腹が減りましたね。そろそろ昼にしましょう…」
仕事仲間の山神はそう言うと、チェーンソーのスイッチを切った。喧しいほどの音が半減し、村吉も切ったことで山に静けさが戻った。その静けさは人が忘れつつある自然の静かさであった。なんとなく心も落ちつきを取り戻し、村吉は山神に続きいて切り倒された木に腰を下ろした。いつものように保温ポットに入れた熱い味噌汁を木地椀に注ぎ、握り飯と沢庵を頬張る。総菜は温室栽培のレタスと焼き豚のスライスだ。動いたあとだから無性に美味かった。瞬く間に握り飯の数個は胃の腑へと治まり、別の保温ポットの熱い茶を飲み終え、村吉は人心地ついた。さて、そうなると、辺りは人っ子一人いない時が完全に停止した山中である。村吉はふと、慌ただしい下界の動きとのギャップを感じ、下界の時の流れは速過ぎるな…と、思うでなく思うのではなく、完全そう思った。^^
確かに、車は激しく動き続けてますが、人の動く姿は最近、時折り見かけるだけで、ほとんど目の当たりにしませんよね。^^
完