駐車場を出たところでT字路になっていて、右に折れれば駅へ、左へ進めば坂の下に出る。その坂の下に、地球外物質が指示したマンホールがあった。
城水は一歩、また一歩と近づいていった。いつもと違い、少し未知に対する恐怖心もあった。それは、人間の感じる恐怖心ではなく、どこか異質の恐怖心だった。初めて知る感情だったことが、城水をそう感じさせたのだった。城水の脳内では数値が渦巻き、計算式が乱れ飛んでいた。城水自身にも分からない数式で、地球で使用される数式ではなかった。それでも、脳が指示する内容は自分の意志として理解出来た。城水は他のクローンとは異質の、人間と異星人の合体生物に変身していたのである。
駐車場の前のT字路を左へ折れ、しばらく歩いた城水は⊥字路に出た。坂の下である。マンホールの蓋(ふた)は、ちょうど⊥字路が交差する中央分離帯にあった。今の時刻は深夜ではない。夜とはいえ、時折り車が往き来するから、動きが途絶えた瞬間を待たねば人目(ひとめ)に触れて大ごとになる。城水はマンホールのすぐ傍(そば)まで近づき辺りを窺(うかが)うと、車の動きが途絶える瞬間を待った。その瞬間は、割合と早く巡った。城水はその瞬間を逃さなかった。城水がテレパシーを送った瞬間、マンホールの蓋は地球外物質が告げたようにスゥ~っと浮き上がった。城水が階段を下がり中へ入ると、マンホールの蓋はただちに閉ざされた。マンホールの中は照明がないにもかかわらず、不思議な眩(まばゆ)い光に照らされ明るかった。
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