水本爽涼 歳時記

日本の四季を織り交ぜて描くエッセイ、詩、作詞、創作台本、シナリオ、小説などの小部屋です。

SFコメディー連載小説 いつも坂の下で待ち続ける城水家の諸事情 -70-

2015年10月05日 00時00分00秒 | #小説

 城水がしばらく階段を下りると、奇妙なことに階段は消え、霧状の光が城水の足下を覆(おお)った。そして次の瞬間、城水の両足は、その光に乗るように中へと吸い込まれていった。城水の足下の感覚は、恰(あたか)も空港のコンベア路に乗って移動する感覚そのものだった。ただ、眩(まばゆ)い光に包まれ視界は四方八方、閉ざされているから、自分がどこへ向かっているのかが城水には分からなかった。
 不思議な光に乗り、城水がしばらく移動すると、彼方にポッカリと丸い暗闇が見えた。UIO編隊が降り立った山麓の岩肌だった。見えているのは異星人達が通路用に貫通させた地下トンネルの出口だった。もちろん、このトンネルは人間の目には見えなかった。
 城水はコンベア路を下りる感覚で光の中から外へと出た。出た瞬間、城水の足に地上を歩く感覚が戻(もど)った。外へ出て辺りを見回す城水の目に映ったのは、山林のあちこちに降り立つUFO編隊の機体だった。その機体の群れは、まるで様々な光で輝くLED電球の点滅にも似て、眩く美しかった。城水は、しばらくの間、ウットリとその光に見とれていた。すると、光り輝く編隊の中の一つの機体から光線が城水を目指して照射された。次の瞬間、城水の前に城水が立っていた。もちろん城水と同じ、別のクローンである。
[私が指令だ。理解したと思うが、マンホールの蓋(ふた)と、この岩肌が出入り口として繋(つな)がっているのだ]
 指令が言うことは理解出来たが、城水には瞬間移動できるはずの異星人達が、なぜ通路から出入りする必要があるのか? が分からなかった。それぞれ、目的の場所へ瞬間移動すればいい話なのだ。


この記事についてブログを書く
  • X
  • Facebookでシェアする
  • はてなブックマークに追加する
  • LINEでシェアする
« SFコメディー連載小説 い... | トップ | SFコメディー連載小説 い... »
最新の画像もっと見る

#小説」カテゴリの最新記事