水本爽涼 歳時記

日本の四季を織り交ぜて描くエッセイ、詩、作詞、創作台本、シナリオ、小説などの小部屋です。

疑問ユーモア短編集 (52)疲れ

2020年02月25日 00時00分00秒 | #小説

 疲れといっても二通りがある。身体(からだ)の疲れと気疲れだ。身体の疲れは休息や栄養を摂(と)ることでなんとかなるが、気疲れはメンタル(心理)面の見えない疲れだから厄介(やっかい)である。ただ、なぜ疲れるのか? という疑問には答えかねる。人それぞれで違うからだ。孰(いず)れにしろ疲れるということは、人が機械ではないという証(あかし)だろう。^^
 冬の季節、案山子(かかし)湯という謳(うた)い文句で多くの観光客を呼び込んでいるとある地方の温泉である。疲れが不思議なほど消えることで好評だ。早朝の駅近くで待機する温泉バスが一台、エンジンをかけながら観光客の到着を今か今かと待ち侘(わ)びる。バスの中は暖房が効(き)いて暖かい。
 温泉バスの中、運転手とガイドが話している。
「まだ、疲れるずら?」
「ああ、疲れが取れにゃあ。まあ、しょんないさぁ~」
「シィ~~!! 番頭さん、疲れは禁句ずらっ!」
「おっと!!」
 そこへ駅から下りた温泉客が乗り込んできた。
「このバス、案山子湯へ行くのん?」
「そうだら…。温泉、行かれるだか?」
「そらもぉ、疲れ、取らなっ! お~~い!! 皆、こっちやでぇ~~!!」
 ゾロゾロとあとから観光客の集団が乗り込む。温泉バスは全員を乗せると発車した。
「なんで[案山子湯]て、言うんどすか?」
「さ、さあ~? ははは…分からにゃ~」
「分からんのどすか。せんないどすなぁ~」
「でも、疲れは取れるよ」
「疲れは取れるそうどす、皆さん!」
 バスの中は賑(にぎ)やかな笑い声に包まれた。
 全国各地にある温泉の疲れを取る効果の差? は疑問だが、温泉に浸(つ)かることで疲れが取れるのは間違いないだろう。^^

                                


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