多くの人々が生活する上で、どうしても生じるのが貧富(ひんぷ)である。この内面を分析すれば、意外なことが分かってくる。豊かさとは何も金銭的に裕福だとか、地位、名誉などに恵まれているといった外的なものだけではない。内的に満たされた豊かな心・・といった見えない富(とみ)もあるのだ。━ 貧しいながらも楽しい我が家 ━ などと言われるのが、まさにそれである。
とある大会社の昼休みである。会社ビルの屋上で二人の平サラリーマンが昼食後の話をしている。
「俺達ゃ、普通入社だから、まあ、普通のコースで終わりだろうなっ!」
「ああ、数十年後に上手(うま)くいって課長。で、定年! ははは…貧(まず)しい貧しいっ!」
「そこへいくと、金倉(かなくら)は違うぜっ!」
「だなっ! ヤツは入社から期待される特別コースだもんなっ!」
「そうそう。大株主の御曹司(おんぞうし)で富裕層(ふゆうそう)だからなっ!」
「ははは…金持ちってのは、いいよなっ! 出来不出来は関係ないっ!」
「ああ…」
二人の話す姿をこっそりと遠目(とおめ)に見つめる一人の男・・話題の金倉である。
「気楽でいいよな、あの二人…。そこへいくと俺なんか期待されてるから気苦労ばっかりだっ! 代(か)わって欲しいよ、ったくっ! ああ、貧しい貧しいっ!」
分析の結果、貧富には、コレだっ! と断言できない実体のない姿が見え隠れする。^^
完
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