水本爽涼 歳時記

日本の四季を織り交ぜて描くエッセイ、詩、作詞、創作台本、シナリオ、小説などの小部屋です。

甘辛(あまから)ユーモア短編集 (83)疲労

2021年08月11日 00時00分00秒 | #小説

 動物である以上、動けば疲れる。当然、人も動物だから疲れる。疲れが溜(た)まれば、疲れてるな…と意識するようになる。意識すれば、これも当然、疲労をなんとかしなけりゃ…とかなんとか、考えるでなく思うようになる。ここで辛(から)く、なにがなんでも…と思うか、まっ! 適当に…と甘(あま)く思うかの二つのパターンに発想は分かれる。疲れを取ろうっ! と意気込んで思っても、取れるものは取れるし、取れないものは取れない。^^
 とある会社の夕方である。多くの社員が退社したあと、今夜、残業する社員二人が話をしている。
「鹿山(しかやま)さんっ! なんかお疲れのようですが…」
 若手社員の鶏冠(とさか)が年配の鹿山を心配して窺(うかが)った。
「いやあ…毎度のことだよ、鶏冠君」 
「そうですか? お大事にしてくださいよ。鹿山さんに今、倒れられたら、僕、困ります。まだ、ここへ配置されて二ヵ月なんですから…」
「ああ…。君は若いから疲労なんてないだろ?」
「えっ! ああ、まあ…。三日前の徹夜マージャンでは流石(さすが)に疲れましたが…」
「ははは…そりゃ、誰だって徹夜すりゃ疲れるさ。だが、その疲れが取れるか取れないか、が問題でね」
「ええ、まあそうなりますか…」
「ああ、そうなるんだよ。君も私の年になりゃ分かるさっ!」
「ですかっ!?」
「ああ…個人差はあるがねっ!」
「僕はどうでしょう?」
「ははは…私は医者じゃないから、そこまで辛く分らんよっ!」
「ですよねっ!」
 疲労の感じ方は、甘い場合も辛い場合もあるのである。あなたは、どうですか?^^


                   完


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甘辛(あまから)ユーモア短編集 (82)生温(なまぬる)い

2021年08月10日 00時00分00秒 | #小説

 どんな場合、どんなコトでも生温(なまぬる)い状態は気分がいいものではない。甘(あま)く中途半端(ちゅうとはんぱ)というヤツだ。辛(から)目の熱い、暑い、冷たい、寒いといった場合、それはそれで心構えも出来るというものだが、生温いというのは気分が曖昧(あいまい)で、心の置きどころに困る。^^
 気象庁観測部のとある課である。
「今年の梅雨明けは、なんか生温いなっ!」
「ですねっ!  明けたようで、そうでもないような…。こんなお湯に浸(つ)かるの、嫌ですよねっ!」
「んっ!? ああ…」
「景気もコロナで今一、生温いようですし…」
「んっ!? ああ…。禊屋(みそぎや)のデリバリー[出前]もなっ!」
「はいっ!? え、ええ…。でも、昨日の冷酒は美味(うま)かったですねっ!」
「んっ!? ああ…。辛口の初雪だろっ!?」
「はいっ!」
「課長の人当たりは、もう少し生温い方が助かるがっ!」
「はいっ!? え、ええ…」
 生温くても、いい場合があるようだ。^^

 
                  完


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甘辛(あまから)ユーモア短編集 (81)科学

2021年08月09日 00時00分00秒 | #小説

 いつやらの短編集でも似た内容を書いたが、ここでは科学を甘(あま)い辛(から)いの観点で書いてみたいと思う。勝手に書いたらっ! と言われる方もおられることだろう。確かにそれもそうなので、多くを語らないようにしよう。などと言って語ってる私である。^^ 宇宙はビッグバンでどうのこうの…[どうたらこうたら…]と偉い教授の先生方が言われるが、あんた見たんかいっ! と辛口でお訊(たず)ねしたいくらいのものなのだ。^^ というのは、ビッグバン前の宇宙という存在は三次元科学で考える有限の私達が暮らす世界の話なのである。小難(こむずか)しいので分かりやすく言えば、それじゃ、そのビッグバン前の宇宙の周(まわ)りはどうなってるのっ!? と甘く考えざるを得ないということだ。私達は縦×横×高さといった有限の世界に存在しているからである。
 とある高校の地学の授業時間である。先生が、教壇の上で生徒達を見下ろしながら得意げに語っている。
「そうして、今の宇宙は出来たんだっ!」
「先生っ! そうは言われますが、どうも僕には先生が言われる科学が今一、分かりません。誰か、見たんですかっ!?」
「い、いや、それは…」
 生徒に辛口で訊(たず)ねられた先生は、思わず甘い笑い顔で口籠(くちごも)った。
 科学とは、甘くも辛くもない謎(なぞ)めいた学問なのである。^^

 
                  完


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甘辛(あまから)ユーモア短編集 (80)積極的

2021年08月08日 00時00分00秒 | #小説

 コロナウイルスの関係で遅れて開催された国技館での七月場所を観ていると[テレビです^^]、お相撲さんの取り口にも積極的な方と、どこかショボい方がおられることに気づかされる。とある元横綱の超有名な解説者さんに言わせれば、『…でしょう! 今場所は前へ前への攻めがいいですねっ!」などとなる。^^ 要するに、積極的な取り口がいいことをおっしゃる訳だ。このことは万事に通じる。同じ短い時間でも辛(から)く捉(とら)えて、『まだ五分もあるのか…よしっ! やってしまおうっ!』と積極的にやって成功するか、甘(あま)く諦(あきら)め、『チェッ! 五分か…やめた、やめたっ!』とそのままにして失敗するかの差となる訳だ。^^
 とある大相撲の○○場所である。アナウンサーと解説者が、しきりにガナっている[失礼っ!^^]。
「軍配どおりでしたねっ! 少し攻めてたのがよかったんじゃないですか?」
「体を預けた分ですね?」
「そうです! いや、そうでしょう!」
「はい、私もそう思いましたっ!」
「アナウンサーのあなたも思ったんだから、そうでしょう! 人生は辛く、こうでなくっちゃ!! これは関係なかったか、ははは…」
 なにごとにも辛く取り組むのはいいように私にも思える。ただ、ワサビの入れ過ぎは、やめましょう。^^

 
                  完


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甘辛(あまから)ユーモア短編集 (79)天気

2021年08月07日 00時00分00秒 | #小説

 天気がどう変化するか? は万人に予測不能である。今の時代、天気予報で大よそのことは分かるようになったが、そうかといって必ずしもそうはならない大ハズレな異常気象も度々(たびたび)起こっている。ということは、辛(から)く考えたとしても、成るようにしか成らないということになる。ほう! 今日は晴れか…、そろそろ梅雨明けだな…くらいに軽く考えた方が楽で気疲れしないという結果を導(みちび)ける。そういうことで、でもないが、私もお天気に関しては余り辛く考えず、甘(あま)く思うようにしている。^^ 身体の疲れに加えて、気づかれするのは嫌(いや)だからだ。^^
 とある町役場である。朝から機嫌が悪そうな課長の嘘林(うそばやし)が出勤してきた。
「おいっ! 課長、お天気悪そうだぜっ! 嵐(あらし)にならんといいが…」
「だなっ! 昨日(きのう)は快晴でニコニコだったんだが…」
「だから、お天気屋の渾名(あだな)がついてんじゃないかっ!」
「ああ、そうだったな。しかし、猛暑、豪雨だけはやめてもらいたいなっ!」
「ははは…被害が出るっ!」
「いつだったか、席に呼ばれて集中豪雨、食らったことがあったぞっ!」
「床上(ゆかうえ)浸水かっ?」
「いやっ! まあなんとか甘めの床下(ゆかした)で勘弁してもらったが…」
「よかったじゃないかっ!」
「よかないが、まあ命に別状はなかったからな…」
「それが、なにより…」
 嘘林の視線が向き、二人は急に寡黙(かもく)になった。
 天気はどんな場合でも甘い方がいい訳だ。^^


                   完


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甘辛(あまから)ユーモア短編集 (78)具合

2021年08月06日 00時00分00秒 | #小説

 人に限らず全ての物には具合が存在する。人が具合悪ければ病気である。物なら故障といったところだろう。要は、具が合うか合わないかだが、具は合った方がいいに決まっている。^^ ただ、この具合の感じ方にも辛(から)い甘(あま)いがある。辛く感じる人だと放っておけなくなるし、甘い人は放っておいても気にならないといった差になる。一つ言えることは、辛めに考えて放っておかない方がいいに決まっているということだ。^^ トイレに行きたければ不具合になる前に行った方がいいに決まっているだろう。洗濯しなくてもいいからだ。^^
 とある家庭の一コマである。浮気相手の女性から社長の夫にかかってきた電話に応対したのは妻だった。妻の横には応接セットの長椅子で寛(くつろ)ぎながらテレビに観入る夫がいた。
「えっ? 宅の主人でござぁ~~ますかっ? はい! しばらくお待ちくださいまし・・・ あなた、電話っ!」
「んっ? 誰からだ!?」
「・・・あのう、どちらさまでござぁ~ましょう?」
 浮気相手の女性は瞬間、具合が悪いわ・・・と感じた。
『社長秘書の豚野(とんの)と申します…』
「トンノさま? あなた、とんのさんから…」
 その名を聞いた夫は瞬間、こりゃ、具合が悪い・・・と瞬間、感じた。
「おっ! ああ、そうか! …はい、私だがっ! き、君、具合が悪いから、ここへは電話するな、と言っただろうがっ!」
 受話器を手にし、夫は少し焦(あせ)った声で呟(つぶや)くように言った。だがこのとき、妻はすでに浮気相手からだと知っていたのである。内々に探偵社に夫の素行調査を依頼していたのだ。そのことを知らない夫は詭弁(きべん)を弄(ろう)したのである。
 電話を短く切り、受話器を置いた夫に、妻は嫌味(いやみ)をポツリと言った。
「あなた、具合が悪いんでしょ! 診(み)ておもらいになったらっ!」
「んっ! いやいや、大事ない大事ないっ!」
「そおう?」
「あ、ああ…」
 この先、この夫婦の関係がどうなったか? まで、私は知らない。
 一つ言えるのは、甘い辛いに関係なく、具合がいいに越したことはない・・ということだ。^^


                   完


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甘辛(あまから)ユーモア短編集 (77)雨

2021年08月05日 00時00分00秒 | #小説

 梅雨明け前の雨が今日も降っている。ほんとに明けるのかい? と訊(たず)ねたくなるような冷気を秘めて降っているのだ。梅雨明け前ならムッ! とするような熱気があるはずなのだ。当然、ジトォ~~っと汗が滲(にじ)むはずなのだが…と、ついつい辛(から)く考えてしまう。よくよく考えれば、年によって違う訳なのである。私は自分の甘(あま)さに、ついニタァ~~っと苦笑いをしている。雨は甘い辛(から)いに関係なく、降る時は降るのである。^^
 とある街の商店街である。店の軒下で俄かに降り出した雨が止むのを待つ一人の老人がいる。
「やはり降ったか…。今日の予報は外(はず)れたな…」
 一人、呟く老人だが、なにもテレビの天気予報が外れた訳ではなかった。むしろテレビの予報士は、『雨が降りますから傘を持ってお出かけください』と親切にアドバイスしていたのだ。それをこの老人は、いやいや、降らん降らんっ! と手前味噌な天気予報して出かけたのだった。老人の気分は自分の予報は辛く、テレビの予報は甘い・・というものだった。なんのことはない。老人の方が、メッチャメチャ甘かった訳である。^^ 雨は辛い甘いの予想を覆(くつがえ)して、降るときは降り、止むときは止むのである。^^

                  完


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甘辛(あまから)ユーモア短編集 (76)年金化

2021年08月04日 00時00分00秒 | #小説

 どうも最近は発想が年金化していけない。^^ どういうこと? と問(と)われれば、まあ、そういうこと・・と答えざるを得ない。^^ 私の場合、恥を晒(さら)すようだが、二ヶ月に一度、振り込んでいただける年金を当てに生活する、しがない住民税非課税世帯なのである。お笑いください。^^
 さて、この年金を辛(から)く促(とら)えるか? 甘く促えるか? によって暮らし方が大きく変化するのだから怖(こわ)ぁ~~い。^^
 どこにでもいそうな、とある老人の一軒家である。
「今月は…政府からコロナで10万円も下さったから、上手(うま)くやり繰(く)りすれば、5年は凌(しの)げる…」
 老人は一人ごとを呟(つぶや)きながら、最近5万円で買い求めた茶椀をシゲシゲと見た。この老人の場合は、考え方がポケて甘く、年金化はしていなかったのである。^^
 年金化の発想もボケれば、辛さが取れて甘くなるようだ。^^

                   完


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甘辛(あまから)ユーモア短編集 (75)健康

2021年08月03日 00時00分00秒 | #小説

 健康は心身ともに維持されてこそ成立する。心身どちらの場合も、疲れて不健康になる前に回復させる必要があり、そのままにしておけば、やがては治療を必要とする病気となる。その判断は本人以外、他人には分からない。『顔色が悪いよ。診てもらった方がいいんじゃないか?』などと、大よそは他人にも分かるが、その原因が失恋によるものとは本人以外、知る由(よし)もないということだ。^^ 自らの健康をどう捉(とら)えるか? は人によって違う。辛(から)い人は、小さな異常でも放置せず治療するだろうし、甘(あま)い人は、そのままにしておくことだろう。しておいていい場合はそれでいいが、放置したことで偉いことになることもある訳だ。皆さん、ご自身に異常を感じた場合は、辛く捉えて健康を維持しましょう。^^
 仲のいい二人が話をしている。
「最近、頭が薄くなったんじゃないか?」
「ああ、そういう君も、白くなったなっ!」
「ははは…お互い、年だからなっ!」
「ああ…。俺も健康には辛いが、こればっかりはなっ!」
「ははは…確かにっ! どうしようもない」
「こればっかりはっ!」
「ははは…こればっかりはっ!」
 健康は甘く考えても辛く考えても、こればっかりは成るようにしか成らないのである。^^

 
                  完


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甘辛(あまから)ユーモア短編集 (74)誰もいない

2021年08月02日 00時00分00秒 | #小説

 市役所に訊(たず)ねてみようと課に電話したところ、いっこうに繋(つな)がらない。混んでいるのか? …とも思え、もう一度と思ったが、ツゥ~~ともビィ~~とも受話器の応答音がない。妙だなぁ~…と訝(いぶか)しげに電話機の接続口を見れば、モジュラープラグが抜けていた。^^ 繋がらない訳だ…と自分の甘(あま)さにアホになった気分でもう一度、電話した。だが、やはり誰も出ない。今度は電話音はしている…と、ふたたび妙に思えた。よしっ! 代表電話にかけようとダイヤルしたところ、ようやく繋がった。ところが、その応対者の言葉が『今日から四連休なんです、どうも…』だった。話の感じでは部外者に思えた。おそらくは警備員さんか誰かだったのだろう。それにしても、インフラ[社会資本]で重要な部分を占める官公庁が四日、誰もいない・・というのも如何(いかが)なものか…と思えた。辛(から)く要望すれば、フレックス・タイム制などで、やはり小人数は各課に配置して欲しいものだ。応対できないほど電話がかかってきたらどうすんだっ!! と怒られる方もお有りだろう。そこはそれ、重要な必要最小限の応答だけ・・などという条件付電話にすれば如何だろう。^^『その内容に関しましては、休日以外におかけなおし下さい…』みたいな応答だ。^^
 とある繁華街である。いつもの休日なら人でごった返しているのに、この日に限って誰もいない。病葉(わくらば)は低いテンションでショボく歩いていた。
「誰もいないのかよ…」
 ついつい、愚痴が漏れるというものだ。するとそこへ、一人の老婆が通りかかった。病葉は、これ幸い…とばかり、思わず声をかけた。
「お婆さん、今日は町中、休みなの?」
 老婆は立ち止まり、病葉を上目遣(うわめづか)いに見た。
「あんた、知りなさらねぇ~のかっ!? 今日からコロナ封じに、国を挙げて10連休だが…」
「エエ~~~ッ!!」
「オリンピックまでには…と、辛い気分なんじゃろうのう」
 オリンピックが、どうなるか? まで甘い私には分からないが、開催国以外、諸外国の観光客が誰もいないというのも開催の意味がないような気も辛くする。^^

                   完


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