狐の日記帳

倉敷美観地区内の陶芸店の店員が店内の生け花の写真をUpしたりしなかったりするブログ

百夜の悲しき常闇に卵の来生を統神に祈む

2019年11月29日 23時41分56秒 | VSの日記



 本日11月29日は、ロシア帝国支配下のポーランド・ワルシャワで十一月蜂起が起こった日で、プロイセン王国・オーストリア帝国・ロシア帝国がオルミュッツ協定を締結した日で、サンドクリークの虐殺があった日で、トーマス・エジソンが発明品の蓄音機を公開した日で、大日本帝国憲法施行され第1回帝国議会が開会した日で、日本初のアメリカンフットボールの試合が明治神宮競技場で開催された日で、国連総会でパレスチナ分割決議案が可決された日で、ミーチャック村の虐殺があった日で、革命的共産主義者同盟全国委員会(中核派)が国電同時多発ゲリラ事件を起こした日で、北朝鮮の工作員によって大韓航空の旅客機が飛行中に爆破されて乗客・乗員115人全員が死亡した日で、国連安保理で対イラク武力行使容認決議が採択された日で、イラクへ派遣されていた日本人外交官2人が何者かに射殺された日です。

 本日の倉敷は晴れでありましたよ。
 最高気温は十一度。最低気温は一度でありました。
 明日も予報では倉敷は晴れとなっております。




 昔、蔵屋敷が立ち並ぶ通りに源助という金持ちの商人が住んでいた。
 此の人にお園という一人の娘があった。
 お園は非常に怜悧で、また美人であったので、源助は田舎の先生の教育だけで育てる事を遺憾に思い、信用のある従者をつけて娘を京にやり、都の婦人達の受ける上品な芸事を修業させるようにした。
 斯うして教育を受けて後、お園は父の一族の知人の商人に嫁けられ、ほとんど四年の間その男と楽しく暮した。

 然るにお園は結婚後四年目に病気になり死んでしまった。
 その葬式のあった晩にお園の遠縁の子である狐という変わった名前の子供が、『お園さんが二階の部屋に居たよ』と云った。
 お園は狐を見て微笑んだが、口を利きはしなかった。
 それで狐は不思議に思って二階から降りてきて大人に話したのであった。

 そこで、一家の内の誰れ彼れが、お園のであった二階の部屋に行ってみると、驚いたことには、その部屋にある位牌の前に点された小さい灯明の光りで、死んだ女の人の姿が見えたのである。
 お園は箪笥すなわち抽斗になっている箱の前に立っているらしく、その箪笥にはまだお園の飾り道具や衣類が入っていたのである。
 お園の頭と肩とはごく瞭然はっきり見えたが、腰から下は姿がだんだん薄くなって見えなくなっている――あたかもそれが本人の、はっきりしない反影のように、また、水面における影の如く透き通っていた。

 それで人々は、恐れを抱き部屋を出てしまい、下で一同集って相談をした。
 お園の夫の母の云うには『女というものは、自分の小間物が好きなものだが、お園も自分のものに執著していた。たぶん、それを見に戻ったのであろう。死人でそんな事をするものもずいぶんあります――その品物が檀寺にやられずにいると。お園の著物や帯もお寺へ納めれば、たぶん魂も安心するであろう』
 それで、出来る限り早く、この事を果すという事に極められ、翌朝、抽斗を空にし、お園の飾り道具や衣裳はみな寺に運ばれた。
 しかしお園は次の夜も帰って来て、前の通り箪笥を見ていた。
 それからその次の晩も、次の次の晩も、毎晩帰って来た。
 なので、この家は恐怖の家となった。

 狐は、お園姐さんが自分を祟ったりはすまいと考え、お園姐さんが箪笥の中に何か隠しものをしていたのならばまだそれは箪笥の中にあるに違いないと考えて幽霊の出る部屋に入った。
 すると、お園の姿が不意に箪笥の前に、いつとなく輪廓を顕して現れた。
 その顔は何か気になると云った様子で、両眼をじっと箪笥に据えていた。
 狐はお園に話しかけた。
 『私は御姐さんのお助けをする為に、ここに来ました。定めしその箪笥の中には、御姐さんの心配になるのも無理のない何かがあるのでしょう? 御姐さんの為に私がそれを探し出して差し上げましょうか?』
 影は少し頭を動かして、承諾したらしい様子をした。
 そこで狐は一番上の抽斗を開けてみた。
 しかし、それは空であった。
 つづいて狐は、第二、第三、第四の抽斗を開け、抽斗の背後や下を気をつけて探した。
 しかし何もない。
 お園の姿は前と同じように、気にかかると云ったようにじっと見つめていた。
 『どうしてもらいたいと云うのかしら?』と狐は考えた。
 が、突然こういう事に気がついた。
 抽斗の中を張ってある紙の下に何か隠してあるのかもしれない。
 と、そこで一番目の抽斗の貼り紙を剥がしたが――何もない。 
 第二、第三の抽斗の貼り紙をはがしたが――それでもまだ何もない。
 しかるに一番下の抽斗の貼り紙の下に何か見つかった。一冊の薄い草紙である。
 『御姐さんの心を悩ましていたものはこれ?』と狐は訊ねた。
 女の影は狐の方に向った。
 その力のない凝視は草紙の上に据えられていた。
 『私がこれを焼き棄てましょうか?』と狐は訊ねた。
 お園の姿は狐の前に頭を下げた。
 『すぐに焼き棄て、私の外、誰れにもそれを読ませません』と狐は約束した。
 姿は微笑して消えてしまった。

 草紙は焼き棄てられた。
 それは顎が尖った若い男二人が睦み合う表紙の草紙であった。
 草紙が焼き捨てられた後、果してお園の影は遂に顕れなかった。



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『ヴィンランド・サガ』第23巻/幸村 誠

2019年11月29日 20時46分47秒 | 漫画・ゲームに関する日記

 昨日の夜は、幸村 誠の漫画『ヴィンランド・サガ』の第23巻を読んでいました。

 北海最強の戦闘集団ヨーム戦士団の空白となった団長の座を巡る二つの勢力の争いが終結する。
 アイスランドに帰郷したシグルドを待っていたのは厳父・ハーフダンとの対決だった……。

 『ヴィンランド・サーガ』の最新刊です。


 争いがなぜ無くならないのか戦争がなぜ無くならないのかを描きつつ、復讐の連鎖や争いを無くすことについて描いています。
 人間の負の部分・恨みや嫉妬や欲望や破壊衝動を明け透けに描いて無くならないとし、理想や誤解から戦争になることも描いて、それでもそこからどのように脱出するか、その困難さを描いています。

 このお話はヴァイキングの北米大陸の入植の歴史からどのような終結を迎えるのかある程度は分かるのですが、どのようにそこに向かっていくのか楽しみです。

 今巻はジグやんが主人公でありますね。
 そしてジグやんの父親のお話でもあります。
 次はいよいよ西の海の果てのヴィンランドへの入植の話となるのでしょうか? 


 今巻も面白かったですよ。
 次巻が楽しみです。


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