「Jerry's Mash」のアナログ人で悪いか! ~夕刊 ハード・パンチBLUES~

「Jerry'sギター」代表&編集長「MASH & ハードパンチ編集部」が贈る毎日更新の「痛快!WEB誌」

<短編>【通勤ひと駅】小説 「ブラウン・アイド・ガール」との夜・・・ (「広島の旅」VOL.5 初日番外編)

2011-05-13 12:21:07 | 編集長「MASH」の短編小説集
広島の街は眠らない
 
俺はホテルのロビーで待ち合わせ
軽くビールを飲みたい
という意見で一致した
 
ただ、ホテルの中とか居酒屋とか
そういう場所は
この時間の男同士なら
当然避けなければならない。
 
そもそも、俺は居酒屋が嫌いだ。
あの大衆臭さで飲むんなら、
自分の店で閉店後に飲んだ方が、まだ、ましだ!」
と、いつも思っているし、実際そうしている。
 
そう言えば小さい頃から
街の片隅のバーで飲むことに憧れていた。
実際ハイ・ティーンになってからは
飲みに行くといえば数人でバーばかりだったし、
彼女達ともバーで過ごす時間が多かった。
 
ラッキーだったことに
学生生活も、その後のサラリーマン生活も
東京が拠点だった。
 
そのお陰で、良いバーをいくつも梯子できたのだ。
嗅覚はその時に養ったもので、
当然、今も鈍らない
 
そして、「いつしか自分もバーを経営したい
と強く思うようになっていた。
 
時計は23時を回っていた。
バーの世界では一番良い時間だ。
帰らなければいけない人は帰路を急ぎ、
残る者は帰る場所をこれから探す人達・・・
バーの人間模様が色濃い時間。
 
ただ、俺達は数件の目ぼしいバーを見つけてはみたが、
残念ながら「感じない・・・・」店構えばかりだった。
 
雰囲気の良い「アメリカン・ダイニング・バー」からは
「エアロスミス」が流れてきたので、入るのを止めたり・・・。
そんなことを何軒か繰り返していた。
 
ここだ!
というポイントが見つからないまま
俺達は色々な道をあても無く歩いていた。
 
そんな時に耳慣れた曲が聴こえ、俺はふと立ち止まった。
 
ブラウン・アイド・ガール
 
そう。
ヴァン・モリソン
実に古い名曲が
「ココへおいでよ!」
と語りかけているようだった。
 
間違いない!
この最高の瞬間こそ
今夜の場所にふさわしい!
俺は直感し、Aを促し
そして、中に入った。
 
やっぱり!
 
俺達の顔に笑顔が浮かぶ
ヴァン・モリソンの曲が流れるのも当然と言える
本格的な「アイリッシュ・パブ」だった
 
俺達はギネスやハイネケン、そして、カールスバーグを飲んだ。
 
そして、俺達の横には2人の女性がいた。
1人は帰ってしまい、もう一人だけが残った。
もう彼女は何杯か引っ掛けているようだったが、
帰る気は無く、まだ飲み足りない雰囲気だった。
 
どれくらい飲んだの?
4杯くらい・・・
何を飲んだんだい?
えっーと・・・・
と言いながら、メニューに可愛らしい指を這わせ
シッカリと酔った口調で説明してくれた。
甘いが、決してソフトではない大人のカクテルばかりだった。
 
それから自然と俺達は3人で話し始めた。
1時間くらいが経ち
良い気分になりだした頃
 
年はいくつ?
と聞かれた
いくつに見える?
えっー、わからないよぉ。
別に当たっても何も出ないぜ。ただのクイズなんだからさ。
28!
おっ鋭い!奴は?
彼女はAを見て
同じくらい?
と答える
 
惜しいなぁ、俺が29で奴が27!
あっー、30とか言われたらショックだったぁ?
いやぁ、男は年齢よりも上に見られた方が嬉しい時もあるぜ!
へぇー、そうなんだ。
私は23!
イイ年齢だね。
そうなん?
少し彼女の声が高揚した
そうさ。その頃が一番素敵だよ!君だからかもな!
彼女は一瞬だけ、うっとりし、
いっつもそんなこと言ってるんでしょ?
と俺を見上げて笑う。
好きなのを頼めよ!一杯おごるぜ。ニアピン賞だ!
わーい。嬉しい!
彼女は素直に喜び、
バーテンのお任せによるウォッカ・ベースのカクテルを口にした。
うわぁ、強いよ、コレ!
おっ、飲ませてよ!
確かに強い
これでクロージングにする気だな!
と俺は感じた。
チビチビやれよ。じゃなきゃ、すぐにぶっ倒れちゃうぜ!
うん。こりゃ強いわ!
 
それから彼女のチビチビ
どれくらい付き合ったのだろうか?
 
気が付いたら1時半になっていた。
もう日付が変わり「火曜日」になっていた。
あれだけいた客も
今や俺たち3人しかいなかった。
 
酔った彼女は
このバーで働く友人の家に泊まることになっていた。
俺達は軽い抱擁を交わし、店を出た。
 
Aとも別れ
ホテルの部屋へ戻りシャワーを浴びる・・・
 
ヴァンのあの歌が
頭の中で響き続ける・・・
まったりとしていた火曜日 一体何が起こったのか?
そうヴァンは歌っていたっけ。
 
そしてヴァンになりきって歌ってみる
そこには君が、ブラウンの目をした僕の女がいた!
 
イイ夜だった・・・
と誰もが感じていた。
 
< MASH
2011年5月13日 筆