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『Starman』が選ぶ『Rock今夜の1枚!』(Vol,6) Gerry&The Pacemakers『Second Album』(US)&『Ferry Cross the Mersey』(カナダ)

2024-12-14 10:58:02 | 『スターマン★アルチ 』音楽コラム集

今回も引き続きジェリー&ザ・ペースメイカーズの盤をご紹介します!ビートルズ同様リヴァプールの出身であり、ビートルズと同じマネージャー、プロデューサーによって見出され、ファーストシングルの「How do you do it」いきなり全英1位と華々しくデビューした彼ら。今回はそんな彼らのアメリカでの2ndアルバム、タイトルはそのまま「Gerry and the Pacemakers' Second Album」(US Org MONO)になります。

それでは早速、針を落としてみましょう!1曲目の「I Like it」イギリスでの2ndシングルで、なんと、こちらも全英1位に輝いております。「How do you do it」と同じく、作者はミッチ・マーレイ。1stシングルの勢いをそのまま、同じ路線のポップロックに仕上げており好感が持てます。ちなみにこのミッチ・マーレイと言う人は、当時の様々なビートグループに曲を提供しており、オリジナル曲を書ける人が少なかった当時のブリティッシュビート界においては貴重な存在だった裏方のひとりです。2曲目以降はアメリカのR&Bのカバーを中心に収録されているのですが、基本的にUKデビューアルバムからの未収録曲が収録されています。それ自体は当時としては珍しい話ではないのですが、たとえば前作のようなジョージ・マーティンによるオーケストラのような革新性はなく、カントリーやR&B等、アメリカのルーツ色の濃い選曲となっております。USオリジナル盤の音の良さとダイレクト感は十分に感じられるのですが、前作が素晴らしかった分、若干パワーダウンした気はいなめません。

ただ、その中でボーカル&ギターのジェリー・マースデン「It's happend to me」「It's all right」と2曲のオリジナル曲を書き、バンドとしての進化を見せます。ちなみにB面のラスト2曲は「Slow down」「jambalaya」と、それぞれ後にビートルズやカーペンターズも取り上げた曲。あれ?これ聴いたことあるぞ!と突然の「デジャ・ヴ」に襲われ、思わず前作のUSファーストアルバムを見ると、なんと全く同じ曲が収録されているではありませんか。いくら短い期間でリリースされたとは言え、前作と2曲も曲が被ると、さすがに当時のファンも黙ってなかったんじゃないのかな~。その心配は的中し、なんとこちらのアルバムはアメリカのチャートで129位までしか上昇せず・・・早くも苦境に立たされたジェリー&ザ・ペースメイカーズ。「このまま消えてしまうのか!」と頭を抱える僕。ここで次のアルバムを紹介しましょう!こちらは翌年1965年にリリースされた「Ferry Cross the Mersey」で、USのUAレコード盤とは違いジャケがカッコイイ!そんなカナダ・キャピトルから出されたオリジナル盤からのレビューです。曲含め内容はUS盤と同じなのですが、マニアックな僕はついついコレを推してしまうのです。

こちらはメンバー達が主演を務める同名映画のサウンドトラック盤なのですが、12曲中9曲がジェリー&ザ・ペースメイカーズ(しかも全てオリジナル曲)、そしてもう1曲はプロデューサーのジョージ・マーティンのオーケストラによる作品なので、実質彼らのオリジナルアルバムと言えるでしょう。針を落とした瞬間、「It's Gonna Be Alright」のアコースティックギターによるフォーキーながらもテンションの高いマイナー調のイントロで、明らかに「違い」を感じる僕。まず違いの一つはジェリーのヴォーカル。今までの明るく楽観的な雰囲気はなく、終始、緊張感の高い演奏となっております。バンドの演奏もアコースティックギターの比率が増えています。しかし、アメリカのカントリーミュージックとは異なる、イギリスならではの何処か湿った感じが何とも切なく心地よいのです。映画のコンセプトによる部分もあったのかもしれませんが、あえてアメリカ的な部分を排除し、ブリティッシュトラッド的なアプローチがふんだんに取り入れることで、結果的に彼らの新しいスタイルを開拓する形となっております。

B面はさらにその傾向が高くなり、予想外の「美しい音楽」にため息がでる僕。4曲目のみイギリスのシンガー「シラ・ブラック」が歌っているのですが、こちらも同じくアコースティック路線の美しいバラードで、とにかくアルバムとしての統一感が素晴らしい。最後の曲は、映画のタイトルと同じ「Ferry Cross the Mersey」。アコースティックギターと微かなパーカッション、そしてジョージ・マーティンによる美しいオーケストラが織りなすこの曲はアルバムのベストトラックと言えるでしょう。

ここで僕は、ボブ・ディラン2020年にリリースした17分にも渡る「最も卑劣な殺人(Murder Most Foul )」という曲を思い出さずにはいられないのです。ケネディ大統領暗殺事件を主軸に、ビートルズビーチボーイズを始め黒人音楽Jazz、クラシックにいたるまで、様々なミュージシャンや曲名が歌詞に登場する大名曲です!その中でボブは「マージ―河のフェリーボートに乗って、みんなを虜にするよ」と歌っているのです。2020年のボブあえてジェリー&ザ・ペースメーカーズの曲名を歌詞に入れるぐらい、当時は印象的な存在だったのだと改めて実感した次第です。

さて、オリジナル9曲という圧倒的な存在感を見せつけた彼ら。チャートでも、イギリスで19位、アメリカで13位とかなりのヒットとなりました。よく考えてみたら、USのセカンドアルバムの多くは既にレコーディングされた曲を集めた「編集盤」と言える内容なので、このサントラまでの合間を埋める「繋ぎ」だったのかもしれません。残念ながら、このサントラ盤は彼らにとって「最後の輝き」となってしまいます。その後、数枚のアルバムを出しながらも人気も音楽もフェードアウトしていきます。いつの時代でも、「長く成功し続けるというのは本当に難しいもんだなぁ~」とひとり口にする僕。

しかし皆さん!サッカー・イングランドプレミアリーグの名門「リヴァプールFC」の試合では、すべてのサポーターにより今でも彼らの「You'll never walk alone」がスタジアムで大合唱されている事実をご存知か?!そう!「ジェリー&ザ・ペースメーカーズ」の音楽は今でも確実にその姿を残しており、イギリスだけでなく世界中の多くのサッカーファンの耳にも自然にすり込まれているわけです。ぜひ皆さんも今こそ「ジェリー&ザ・ペースメーカーズ」の音楽に、針を落としてみてはいかがでしょうか?特にサッカーファンの君やサッカー少年・少女たち、そしてその親御さんにこそ入り易い!(笑)

と言うことで、今日はこの辺で失礼いたしましょう。次回もお楽しみに!

 


『Starman今夜の1枚!』(Vol,5) Gerry&The Pacemakers「How do you like it?」&「Dont let the sun catch you crying」

2024-11-24 11:55:07 | 『スターマン★アルチ 』音楽コラム集

今回ご紹介するのは「ジェリー&ザ・ペースメーカーズ」です!この名前に「聞き覚えがある」と言うあなた!そして「無い!」とキッパリと言い切るあなた!どちらにも分かりやすくお伝えしますので、どうぞ引き続きお読み下さい!

まず彼らは、あの「ビートルズ」や、前回紹介した「サーチャーズ」と並び、リヴァプール出身であり、彼らと同様にデビュー前にドイツのハンブルグで数多くのギグをこなした修行バンド軍団の1つなのです。残念ながら当時活躍した数多くの「ブリティッシュ・インヴェンジョン」バンドと同じく短命で終わってしまいましたが、あえて今こそ!彼らの魅力について語りたいと思います。

「ジェリー&ザ・ペースメーカーズ」は、リードヴォーカル&リードギターの「ジェリー・マースデン」と二歳上の兄でドラムの「フレディ・マースデン」を中心に結成されました。重要な点は、なんと!マネージャーがビートルズと同じ「ブライアン・エプスタイン」という点!そしてプロデューサーも、これまたビートルズと同じ「ジョージ・マーティン」!と言う事で、今ではビートルズと比較され「二番煎じ」と結論付けられている彼らなのですが、決してそんな事はありません!今回はUKデビューアルバム「How do you like it?」

そして、USデビューアルバム「Dont let the sun catch you crying」

両盤を聴きながら、彼らのオリジナリティ溢れるサウンドについて解説したいと思います。

彼らの特徴の一つは、当時のロックバンドでは珍しく「正規メンバーにピアニストがいる」という点ではないでしょうか。たとえば初期のビートルズではピアノの音が入る際は、プロデューサーのジョージ・マーティンが弾いていますし、その曲数も限られています。アニマルズデイヴ・クラークファイブでは、ピアノではなく、電子オルガンが取り入れられており、その音色はピアノよりも上で鳴っているフワフワしている印象です。他のバンドでは、リズムギターがビートを刻むのに対し、「ジェリー&ザ・ペースメーカーズ」では、鍵盤弾きの「レス・マクワイア」がその役を務めています。ほぼ全曲で「ピアノ」が演奏されるそのサウンドは、演奏だけを聴くと、例えばビッグ・ジョーターナーマディ・ウォーターズのような感じにも取れ、非常に興味深いです。ピアノの特性上、左手で低音(ベース音)を弾き、右手でメロディを奏でる事が出来ますので、そのピアノと、エレクトリックベースでのダブルの「ベース音」を奏でることで音に厚みが増しています。それにより、ジェリーがバッキングからリードギターに切り替わっても、音がすかすかに鳴らず、終始素晴らしいグルーヴで演奏されているのです。

聴けば聴くほど、非常に計算されたアレンジである事が分かります。1963年に発表されたこのUK盤デビューアルバムは他のバンド同様、やはりカバー曲が中心なのですが、イングランドの名門サッカーチームである「リヴァプールFC」の応援歌「You never walk alone」は現在でも歌い継がれる余りにも有名な名曲ですし、他にもジャニス・ジョプリンもカバーしたジョージ・ガーシュインの「Summertime」等、R&Bやブルースとは異なるジャンルを取り入れております。しかも当時のロックバンドでは珍しくストリングス(弦楽器隊)が加わっている点も見逃せません。これはジョージ・マーティンの手腕によるところが大きく、彼の仕事の深さを感じ取れる良い仕事と言えるでしょう。他にも黒人音楽のジャンプ・ブルース的なアプロ―チと、白人のミュージカルポップス的なアプローチが絶妙に混ざり合っており、アルバム全体として変化に富んだサウンドとなっております。

とは言え、やはり「ストリングス」についてもう少し掘り下げて行くべきでしょう。ビートルズが初めてストリングスを取り入れた曲が1965年の名曲「Yesterday」となることを考えると、前述プロデューサーのジョージ・マーティンが、実は1963年時点で、既にロックとストリングスの融合を色々と試していた・・・という事実、これこそが後のビートルズ・サウンドを見る上でも実に興味深い仕事であり、重要盤と言えるでしょう!ちなみにこの2曲におけるレス・マグワイアピアノプレイは本当に素晴らしく、いかに彼がアメリカのジャズブルース・ピアノを聴きこんでいたかが手に取るように分かります!そんなピアノ・プレイもピアノ弾きには注目して聴いて欲しいです。

さて、このアルバムの翌年、1964年に発売されたアメリカでのデビューアルバム「Dont let the sun catch you crying」となります。UK盤と重複する曲が多いものの、UK盤では1曲しか存在しなかったオリジナル曲が5曲にまで増え、彼らの才能の開花を感じさせる盤に仕上がっています。特にタイトル曲であり、当時の大人気番組「エド・サリヴァン・ショー」でも披露されたオリジナル曲「Dont let the sun catch you crying」や、ジョージ・マーティンの勧めでビートルズがレコーディングし、リリースする予定だったものの、ビートルズが『Please Please Me』を仕上げて来た結果「ペースメーカーズ」に渡され、その結果イギリスで1位を獲得した「How do you do it」など「名曲ぞろい」の盤なのです

その他にもB面後半の「Slow Down」では、ピアノとギターが凄まじい音圧で迫って来て仰天!さらにその後「Show me that you care」ではブギウギピアノのフレーズに全く新しいリズムを載せた斬新なオリジナル曲収録しており、最後まで飽きさせず、油断のできない名盤に仕上がっています。デビューアルバムとしての完成度や満足感を言えは、個人的にはコチラのUS盤に軍配を上げたいと思います

カントリーからR&B、ミュージカルなど様々な音楽を取り入れ、しかもレス・マグワイアの素晴らしいピアノ・プレイによって、当時の他のバンドとの差別化が出来たバンド「ジェリー&ザ・ペースメーカーズ」。彼らもまた60年代初期の「ブリティッシュビート」における「語り継がなければいけないバンド」だと言えるでしょう。

それでは次回もお楽しみに!

《Starman★アルチ筆》

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『Starman』が選ぶ『今夜のRock』は、この1枚!(Vol,4) The Searchers『Sugar & Spice』(UK) &『Meet The Searchers』(US ver)

2024-11-10 12:32:02 | 『スターマン★アルチ 』音楽コラム集

前回に引き続き、60年代ブリティッシュビートのいぶし銀的バンド「サーチャーズ」をご紹介します!まずは1963年にパイレコードからリリースされたイギリスでの2ndアルバム「Sugar & Spice」(UKオリジナルMONO盤)です。

前回紹介した1stアルバム同様、60年代特有のレトロな雰囲気のバンドロゴに、収録曲が散りばめられ、中央には同じポーズで佇む4人組というカバーデザインが実にPopですね。サウンド面でも1stアルバム同様「ポップで親しみやすい曲たち」が並びます。このアルバムの一カ月後には、ビートルズの2ndアルバム「With the beatles」がリリースされるのですが、こちらのジャケットは有名な「ハーフシャドウ」と呼ばれる顔の片方にのみ光を当てたクールで渋い印象の白黒写真となっており、レコード会社の違いはあるものの両バンドの売り出し方というか戦略も随分と分かれてきていたように感じます。

さて、では針を落としてみましょう。1曲目は1963年にイギリスで3位まで上昇した3rdシングルでありタイトル曲「Sugar & Spice」です。ベース&ヴォーカルの「トニー・ジャクソン」のハイトーンの甘いヴォーカルに、サーチャーズの抑えられた演奏が響きます。1stアルバムから4カ月後という、今では考えられないハイペースで録音、リリースされたものですが、当時の他のロックバンドの流れと同様全体的によりラウドになって来たように感じます。その後も彼らお得意のR&Bカバーが続きますが、聴いていくうちにある変化に気付きます。「あれ?1stアルバムとボーカルが全然違うぞ!」そうなんです!1stアルバムでは12曲10曲でトニー・ジャクソンがリードヴォーカルを取っていたに対し、この2ndアルバムでは、リードギターの「マイク・ペンダー」が8曲でリードボーカルなのですよ(ダブルボーカルを含む)彼のハスキーで低めのボーカルこそが、この2ndアルバムでの最大の変化であり、彼らの新たな魅力となっているのです。トニーのボーカルは、その声質通り、R&Bの激しい演奏に対し甘くポップになり過ぎる部分があるのですが、ここにマイク・ペンダーという全く声質の異なるボーカルが混ざり合う事で、非常に美しいハーモニーとなっています。その部分に注目すると、よりこのアルバムを楽しめるでしょう!そして、今も当時も珍しい「歌えるドラマー」こと「クリス・カーティス」がリードを取る「Ain't That Just Like Me」こそ、個人的に言えばこのアルバムのベストトラックでありましょう!最初からゴスペルのように3人のボーカルが掛け合い、そこにラウドな演奏が絡み合います。特にトニーによる高音部のコーラスが素晴らしい!彼のハイトーンボーカルの魅力がコーラスでこそ発揮される事がよくわかります。途中で少しテンションを落としてから再び盛り上がる演奏等、いかに彼らが数々のギグをこなし、鍛えられて来たか・・・を物語っています。

さて、このアルバムの4カ月後、ついにアメリカでのデビューアルバム「Meet The Searchers / Needles And Pins」Kappレコードからリリースされます。(写真はUSオリジナルMONO盤)

まずはジャケットに注目でしょう!スーツ姿で微笑む4人組の姿は、明らかにビートルズを意識させますが、イギリス盤と比べて、スタイリッシュでクールな印象を受けます。裏ジャケットには各メンバーの年齢や身長、体重、目や髪の色なんかも紹介されており、彼らがアメリカにおいて「どのような売られ方をされていたか」が分かり興味深いでしょう。

それでは針を落としてみましょう。まず注目は、当時の最新シングルであり、タイトル曲の「Needles & pins」です。シェールとのデュオでお馴染み「ソニー・ボノ」が書き、フォークシンガーの「ジャッキー・デシャノン」が録音したフォーク・ソングですが、サーチャーズはこれを見事にロック・サウンドにアレンジしているのです!ドラムのリズムやギターのフレーズ。そして抑えられた演奏等「ビートグループの一つの典型」とも言えるアレンジでしょう。フォーク・ロックの先駆けとも言える演奏で、アメリカでシングル発売され13位まで上昇したヒット曲でもあり、当時最大の人気番組である「エド・サリヴァン・ショウ」でも演奏されています。80年代以降のアメリカンRockをリードした「トム・ペティ&ハートブレイカーズ」も、後にこの曲を取り上げていますが、明らかにサーチャーズのアレンジを参考にしており、サーチャーズのサウンドが後のロックに少なからず影響を与えている事が分かります。アルバム自体も全米で22位まで上昇しており、決して長くは続きませんでしたが、アメリカでもイギリスでもサーチャーズの人気のピークだったのがこの時期と言えるでしょう。

ちなみにこちらのアメリカ盤1st。ジャケットはもちろん収録曲もイギリスとは全く異なっており、イギリス盤の1st、2ndからアメリカで受けそうな曲をチョイスし、さらに1曲目に「まだアルバム未収録だったシングルを追加した内容」となっている独自盤です。その為、全体的にアップテンポでロックな曲が多く、さらにUS盤特有の音圧の高さやラウドさが加わり、非常に魅力的な盤に仕上がっております。バンド自体のオリジナリティという点では「いかがなものか?」と言うマニアも居るようですが、一つのパッケージとして考えればこのアメリカ盤1stにサーチャーズの魅力が詰まっており、軍配が上がるでしょう!

当時のレコーディングはほぼ一発録りでライブ録音に近く、彼らの演奏力の高さや、エレキギターのクリーンな音の美しさがよくわかります。今聴いても、純粋に「かっこいい!」と思わせるサウンドに心躍ります。現在では時代に流され、マニア以外ではまったく語られなくなったバンド「サーチャーズ」。私は推さずにはいられないのです!ぜひとも「オリジナル・アナログ盤」で聴いて頂き、あなたの音楽ライフを豊かに過ごして頂ければ嬉しく思います!次回もお楽しみに!

《Starman★アルチ筆》

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『Starman』が選ぶ『今夜のRock』は、この1枚!(Vol,3) The Searchers『Meet the Searchers』(UK Ver) &『Hear Hear』(US)

2024-10-27 12:55:12 | 『スターマン★アルチ 』音楽コラム集

今回も、時代の波に流され、忘れ去られてしまった「ブリティッシュ・ビート」のバンドをご紹介致しましょう!その名は「サーチャーズ」! 今では、というより随分前から全く語られることがなかったバンドなのですが、僕は彼らの事が昔から大好きです!とは言え、今まで生きて来て「サーチャーズイイですよね!」といった様な会話をした事は一度もなく今回は良い機会ですので、この場をお借りして、彼らの基本情報オススメの盤をご紹介していこうとうと思います。

ザ・サーチャーズリヴァプール出身の4人組です。出身地と言い「ベース、ギター2本、ドラム」という4人編成と言い「メンバー全員が歌える」点、そして、デビュー前にハンブルグのスタークラブにて修行巡業ライブを行っている点などなど、何かと「ビートルズ」との共通点が多い彼ら1963年にUKパイレコードから1stシングル「Sweets for my sweet」にてデビューしております。パイレコードと言えば「キンクス」となるでしょうが、彼らキンクスは1964年デビューですので、当時のブリティッシュビートグループの中でも、実はこのサーチャーズ、かなり早いデビューと言えるでしょう。それでは1963年の記念すべき1stアルバム「Meet The Searchers」(UKオリジナルMONO盤)に針を落としてみましょう。

前述のドリフターズのカバーであり1stシングルの「Sweets for my sweet」から始まります。多くの曲でリードヴォーカルをとる「トニー・ジャクソン」は、その高く甘い歌声が特徴なのですが、もう一つ注目なのは、彼の奏でるEpiphoneのRivoliベース(セミアコベース)のサウンドなのです。これはUKオリジナル盤で聴いたからこそ気づく音なのですが、ソリッドボディのベースとは異なる少しこもった音色が、少ない音数でも抜群の存在感を放っており、サーチャーズ・サウンドひとつの特徴となっております。そこにリードギターの「マイク・ペンダー」、リズムギターの「ジョン・マクナリー」という2本のギタリスト、最後は「歌えるドラマー」こと「クリス・カーティス」のシンプルでありながらここぞのフィルインで存在感を放つドラム、そこに乗っかってくる全員が歌える強みを生かしたコーラス!さらに付け加えて言うならば、やはりUKオリジナル盤だからこその「ダイレクトな音圧」が素晴らしい!

ビートルズと同じくハンブルグ修業をしていただけのことはあり、1stアルバムからコーラスも演奏も圧倒的に完成されている事が分かります。選曲も「Money」「Stand by me」「Twist and shout」など定番のR&Bから、サザンオールスターズもカバーした「恋の特効薬(Love Potion No. 9)」など、当時のアメリカのヒット曲を忠実にカバーしており、なおかつ日本でも有名なピート・シーガ―のフォークソング「花はどこへ行った」もプレイされているところも注目のポイントでしょう!ザ・バーズより早い段階で、フォークソングをバンドで演奏する「フォークロック」的なアプローチを1963年時点で行っている点はロックの歴史上でも非常に興味深いですね。

このアルバムは当時イギリスでは2位まで上がる大ヒットを記録し、その後も数枚のアルバムをリリースしておりますが、残念ながら徐々にチャートの順位は下がり人気もフェードアウトしてしまいます。改めて彼らのアルバムを聴いてみると、たとえばエリック・バードン(アニマルズ)のような黒いボーカリストがいるわけでも、前回ご紹介したフレディ&ドリーマーズのような強烈なコミカルさもありません。ピーター・ヌーン(ハーマンズハ―ミッツ)のようなアイドル的なキュートなルックスもなく、アラン・プライス(アニマルズ)イアン・マクレガン(スモールフェイセズ)の様な意表を付いた変化を付けられるような鍵盤弾きもバンドにはおりません。黒人R&Bを中心に演奏していながら、どこか英国的で抑えられた演奏に終始するのが魅力なのですが・・・。しかし彼ら最大の弱点は楽曲がカバーのみで構成されており、オリジナル曲を書けなかったという事実でしょう。それこそがグループを短命に終わらせてしまった理由の一つだと思います(一応ドラムのクリスが1965年のアルバムで数曲オリジナルを書いていますが、そこまでのヒットはしませんでした)。そう書きながらも、今回はもう一枚「Hear Hear」(USオリジナルMONO盤)も併せてご紹介したいのです!

こちらは前述して来たとおりデビュー前の1963年に行われたハンブルグ「スタークラブ」での修行公演をレコーディングしたライブ盤なのですが、後のガレージロックに通じる、ロックのダイナミックさや熱気が込められており「エフェクターも使っていないのに4人だけでここまでのグルーヴが出せるのか!」と彼らの演奏力の高さを痛感します。音楽ですらテクノロジーに依存し過ぎている・・・そう思われる読者様には新鮮に響く盤と言えるでしょう。こちらのライブ盤「UKオリジナル盤(フィリップス)」は19曲入りの2枚組みで、既にレア盤となっており、見かけなくなって参りました。今回のUS盤はそこからセレクトし1枚にまとめた盤(残りの音源はラットルズとのカップリングで後発されています)となりますが、内容的にもプライス的にもコレで十分!と言えるでしょう。お聴きになる読者は本盤を見つけて、ぜひ聴いて欲しいところです。

ちなみに余談ですが、後のロックシーンにはほとんど爪痕を残すことが出来なかったサーチャーズなのですが、実はドラムの「クリス・カーティス」は、サーチャーズ脱退後の1967年「ラウンドアバウト」というバンドを結成しております。このバンド、後にジョン・ロードとリッチー・ブラックモアが加入し、「ディープ・パープル」としてデビューする事になるのですが、クリス自身はデビューを待たずして失踪し、音楽業界から引退したそうです・・・サーチャーズや彼が居なければパープルも誕生していなかった!コレちょっとしたポイントですよね(笑)

そんなわけで素晴らしい演奏力とグルーヴを持ちながらも、同年代に活躍したバンドと比べ、いまいち個性もカリスマ性もなく、オリジナル曲を書けない弱点のため65年を最後に消えてしまったサーチャーズ。ここまで書くと全く良い印象を持たれないかもしれませんが、ビートサウンドの典型とも言うべき、バランスの取れた演奏とコーラスワークこそは一種の「職人芸」とも呼べる魅力があり、バンドマンや僕のように「刺さる」人も多く存在しているのも事実!かなり玄人的なバンドですが、ぜひこの機会に聴いてみて頂ければと思います。今夜はコレら2枚を聴いてグッスリ眠らせて頂きましょう!ではまた次回をお楽しみに!

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『Starman』が選ぶ『今夜のRock』は、この1枚!(Vol,2)『Freddie & The Dreamers』1st LP(CANADA Ver)

2024-10-13 11:46:12 | 『スターマン★アルチ 』音楽コラム集

本日ご紹介するLPは、前回に続き『フレディ&ザ・ドリーマーズ』です。今回は1965年にリリースされたカナダ盤の『1st』です!

リード・ヴォーカルの『フレディ・ギャリティ』をセンターにバックを取り囲む4人の寝巻姿の男達。『ドリーマーズ』とは文字通り『夢見人』なので、その名の通りの何とも強烈なジャケットです。

さて、このジャケットでピンと来た方、そう!1963年に本国イギリスにて『コロンビア(EMI系列で米コロンビアとは別レーベル)』からリリースされたデビューアルバムと同じものです。じゃあ、それをそのまま『カナダ・キャピトル』(アメリカでのEMI系列と言えば大手レコード会社である『キャピトル』である)から出したのかと思いきや、大幅に収録曲が変更されて出されており、驚かされます。

まあ、これに関しては、あのビートルズストーンズですら、アメリカで独自に曲を変更して発売されていたので、当時のイギリス勢ミュージシャンが、いかにアメリカで切り売りされていたのか・・・を表すエピソードでしょう。しかもこの時期のアメリカではLPは『基本的に12曲入り』とされていたので、12曲で1枚を作り、アルバム数が増える傾向にあり、このカナダ盤もそこを踏襲しているのです。

しかし『フレディ&ザ・ドリーマーズ』はさらに不遇な扱いでして、1965年に『カナダ・キャピトル』からこのアルバムが出た同年、今度はアメリカで『マーキュリー』という『キャピトル』とは全く違う非EMI系列のレコード会社からリリースされており(前回紹介した盤です↓)

https://blog.goo.ne.jp/12mash/c/aee0236baf9a20ec664e0757ca4e4a07

曲もこのカナダ盤と3曲ほど重複しています。逆に本作収録の大ヒット曲「I'm telling you now」はアメリカでは『タワーレコード』というキャピトルの子会社的レーベルから同じ65年に出されており、見事に全米1位に輝いております。ちなみにカナダでもこの曲は1位を獲得しているんです!(本国イギリスは2位)

曲の権利とか云々は一体どうなってるんだという感じですが(この辺りは本紙「編集長」と会議したいところですが・・・)、今となっては当時の明確な情報が無いので筆者にはよくわかりません。ただ、彼らはの音楽は『一時(いっとき)の流行り』であり、「短い間にさっさと売り切ってしまおう!」というレコード会社の意図は透けて見えます。

では、そんな彼らの音楽はどうだったのでしょうか?それは盤に針を落とせば良くわかります。当たり前ですが1965年当時のオリジナル盤で聴いてこそ!しかも本家UK EMI直のマスターを使用しているので『カナダ・キャピトル』からの本作は圧倒的に音が良い!

この『フレディ&ザ・ドリーマーズ』ビートルズの少し後でデビューした「ほぼ同時期のバンド」であるにも拘らず、リーダーの『フレディ』は1936年生まれと『ジョン・レノン』より、4つも年上という事実!そう考えるとこの時点で「実は中々のベテラン」と言って良いでしょう。

当時のブリティッシュ・ビート勢と同様にブラックミュージックの影響を多分に受けており、そこまでビートを強調してもおらず、ドラム、ベース、2本のギターと時折加わるアコーディオンは、ボーカルやコーラスを引き立てる為の非常にシンプルな物です。どちらかと言えば「50年代のアメリカン・ポップスやドゥワップ的なアレンジ」が目立ちます。

彼らはこの後、ビートルズストーンズも出演した、アメリカにおいて成功のカギとなるTV番組「エド・サリヴァン・ショー」にも出演し、アメリカで一定の人気を得るのですが、それは彼らの「アメリカン・ポップスをバンドでやってみました」的なサウンドと、22歳で急死した伝説のロックン・ローラー「バディ・ホリー」を意識したフレディのルックス、そして動き回るダンスがアメリカで受け入れられた要因だと筆者は結論付けております!

このアルバムに収録されている「Do the freddie」と並ぶ彼らの代表曲「I'm telling you now」は彼らの魅力を凝縮した素晴らしい曲で、たった2分間ですが、クリーントーンのごまかしのないギターサウンドはシンプルで美しく「当時のエレキギターってこんな美しい音なんだ・・・」と純粋に溜息が出るほどです。ここぞのタイミングで味のあるフィルを入れるドラムも、なんともツボを押さえていイカシております。ドラムに合わせてギターのストロークの強さを変える『ライブ1発録音』も実に良く、バンド全体で演奏の抑揚を付けている点が、アナログ・オリジナル盤だとより一層ダイレクトに伝わるのは当然でしょう。これがデジタルになった途端「すべてが平坦に聞こえ、ただの耳障りの良いポップスにしか聴こえない・・・」そうなると?そうです。残念ながら聴かれずに、消えていく音楽となってしまうのです。特に60年代のロックミュージックというものは、アナログ・レコードで聴かないと「その本来の音が埋もれてしまう」ものなのです。

「I'm telling you now」のほかにもB面1曲目「I love you baby」ではチェット・アトキンスばりのカントリー奏法が聴かれ、ビートルズのカバーでもおなじみ「Money」「Some other guy」も、これまた全く違う解釈で演奏しており興味深い仕上がりで、彼ら独自のポップ感覚が感じられます。聴けば聴くほど、彼らの音楽的な素養の深さや、バンドとしての演奏の巧みさを印象付けられますが、そんな実力があっても、後々「Do the freddie」に代表されるコミックバンド的な要素を取り入れなけば行けなかったのが、彼らのセールス的な苦境を映し出した部分でしょう。

ただ、このアルバムに関して言えば、純粋に音楽で勝負をしており、演奏にもその緊張感が伝わります。そういったバックグラウンドを知ると、「I'm telling you now」にも明るさの中にもどこか「切なく甘酸っぱい・・・」そんな当時にタイムスリップしたような感覚に包み込まれます。

ブリティッシュ・ビートの入り口に、まずは「フレディ&ザ・ドリーマーズ」をアナログ盤でぜひ聴いてみて欲しいです!次回もお楽しみに。

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『Starman』が選ぶ『今夜のRock』は、この1枚!(Vol,1)『Freddie & The Dreamers』1st LP(US Ver)

2024-09-22 12:33:01 | 『スターマン★アルチ 』音楽コラム集

今日から急に始まった新連載「僕が夜な夜な聞きたい」そんな『ロック・アルバム』を1枚選び、皆様にご紹介する「アルバムレビュー」のコーナーです!昨日も僕が登場する編集長との『テニス対決』記事がご好評と聞く中、早速第1回目のスタートです!「テニス対決」記事はコチラをどうぞ!→)https://blog.goo.ne.jp/12mash/c/a83d7306fe4bed1fc76e217ae5358988

いわゆる1960年代イギリスにおける「ブリティッシュ・ビート」と呼ばれる音楽が好きな僕。「えっ何それ?」と思われる読者様のために簡単にご説明致しましょう。

1960年代当時のイギリス、ロック・ミュージックにおいては人気もマーケットもアメリカには遠く及ばず!とにかくアメリカからすれば「イギリスみたいなダサい国のロックなんて聞けるかよ!」と言う感じだったのでしょうが(たぶん)、そんなイギリスから突如、ビートルズという圧倒的なカリスマ性を持った4人組が登場したのです。その余りに魅力と革新的なサウンドは、あっという間にアメリカを始め世界中の音楽の歴史を変えてしまったのですが、そんなビートルズ「後に続け!」と言わんばかりに、当時のイギリスでは様々なロックバンドがデビューし、海を渡ってアメリカへ進出していったのです。これには、「第二のビートルズを発掘しよう」というビジネス的な側面もあったわけですが、後にメディアではこの一連の流れを「第一次ブリティッシュ・インヴェイジョン」と呼ぶようになります。

「ここはテストに出るのでよく覚えておくように!」と先生が言ったか言わないか・・・それはさて置き、「えっ第一次ってことは第二次もあったの?」と思った読者諸君は実にお目が高い!しかしその話はまた次の機会にいたしましょう。今回は60年代に注目して書き進めたいと思います。

さて、この「ブリティッシュ・ビート」というのは、前述どおり60年代イギリスにデビューしたロックバンドやその音楽の事を指すのですが、当時はその他にも、ビートルズの故郷から「リバプールサウンド」と呼ばれたり、その都市を流れる川の名前から「マージ―ビート」と呼ばれたりもしておりました。ただ、ここにロンドンのグループまで入っていたり・・・と「かなりいい加減」であり、やはり「ブリティッシュ・ビート」と呼ぶのが適切でしょう。

代表的なバンドを挙げると、ハーマンズ・ハ―ミッツ、デイヴクラークファイヴ、ホリーズ、サーチャーズ、マンフレッドマン辺りが有名どころでしょう。ローリング・ストーンズ、キンクス、ザ・フ―、アニマルズ、ヤードバーズも同じ時代にデビューしており、当時は彼らも含め「ブリティッシュ・ビートグループ」と呼ばれたものですが、ご存知のとおり彼らは1970年代以降も活躍をしており、もはや「ブリティッシュ・ビート」のジャンルを超えていると判断されている為、この呼び名は当てはまらない・・・というのが世界の共通認識となっております。

とにかく当時ビートルズの影響力は圧倒的で、何をしてもビートルズの二番煎じと言われる中、いかに「違うことをしてオリジナリティを出すか」と言う事に対し当時のミュージシャン達はしのぎを削っていたわけです。とは言え今聞き直してみても、多くは「二番煎じ」感が否めません。ただ、そんなロック激動の時代の中で、夢を抱き、ささやかなヒットを飛ばしては時代の波に流され、散っていった数々のロックバンド達。もう亡くなっている人もいれば、引退してどこで何をしているかもわからない面々・・・彼らを思うと聞かずにはいられない僕なのです。

そんな思いから一度レコードに針を落としてみるのはいかがでしょうか?たったそれだけで一瞬にして、60年以上の時を超え、当時のあの夢と希望に溢れた力強いビートが蘇るのです。

前置きはコレくらいにし今回の盤をご紹介しましょう。編集長MASH氏から譲り受けた「フレディ&ザ・ドリーマーズ」のアメリカデビュー作(1st)のレコードです。(US Org 初回マト MONO盤)

こちらは1965年にマーキュリーから出たアルバムで、本盤、現在ではまったく語られませんが「ドゥ・ザ・フレディ」という、リードボーカルのフレディのダンスをフィーチャーした曲のヒットが有名なバンドで、子供に大うけした様(さま)からコミックバンドとして軽く片付けられてしまった昨今です。ただ僕は昔から彼らを高く評価しており、その「ドゥ・ザ・フレディ」を聴くだけで、彼らの演奏力の高さや歌の上手さに気付くはずなのです!実力があるからこそ、良い意味でふざけることも出来るんですよね。しかも彼らはこの曲をアメリカで大ヒットさせております!(この時点のアメリカではシングル盤発売のみにより、本作には未収録)

皆さん、この『1stアルバム』ジャケットからして明らかにアメリカの「ドゥワップグループ」を意識した構図とお気づきになったでしょうか?そして中身のサウンドでも、アメリカのカントリーや黒人音楽の影響が色濃い!(「ジョニーBグッド」や「カンサス・シティ」も収録)ただ、それらは黒人っぽく表現するのではなく、バンド演奏は敢えてシンプルにロールしています。曲によってはヴォーカルとコーラスを生かすことに徹底しており、変なギミックがないクリーンな音だからこそ、その温か味がシッカリと残るのです。バンド音楽を演っている人なら分かると思いますが、シンプルな演奏ほど、ごまかしが利かないし、ミスが目立つんですよね。だからこそ、ある種の音楽的緊張感があり、レコードだとより一層そこを感じることが出来、Goodでしょう!

う~ん。聞けば聞くほど「やっぱり良い!」そんな「ブリティッシュビート」盤。今回は軽~く紹介がてら本盤を書かせて頂くつもりでおりましたが、つい長文となってしまう始末・・・。当ジャンルの音楽も「底なし沼のようにどっぷり深い」ので、ぜひ今後もご紹介させて頂ければと思いますので、次回以降も是非お楽しみに!それでは今回はこの辺で!御機嫌よう!そして良い盤ライフを!

《Starman★アルチ筆》

ご意見・ご感想・記事投稿・編集長の執筆、演奏、講演依頼『スターマンへの演奏依頼』などは『ハードパンチ編集部』までどうぞ!
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編集長『MASH』が経営するギター専門店『Jerry's Guitar』公式サイトはコチラ

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『スターマン★アルチ 』訳『The Word/ROCKの言霊』 知らずに死ねるか!詞から紐解く名曲の数々 (5曲目) ブライアン・ウィルソン『Your imagination』

2024-08-31 09:45:05 | 『スターマン★アルチ 』音楽コラム集

お久しぶりです。『スターマン』改め『Starman★アルチ』です!
今回は夏の終わりにぴったりな、少しセンチメンタルな一曲をご紹介します。
ブライアン・ウィルソンが1998年に発表した一曲「Your imagination」です。
今回は純粋に、この一曲を聴いて、歌詞を味わってほしいので、
あえてミュージシャンに関する詳細な情報は書きません。
youtubeの公式チャンネルでも聴けるので、まずはぜひ聴いてみてください。

・・・・・いかがでしたでしょうか。
目を閉じると真夏の海辺の街並みやビーチが思い浮かぶような瑞々しいキーボードのイントロから始まり、そこから言葉が美しいメロディにのって流れ出ていきます。それでは歌詞と対訳をどうぞ!
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YOUR IMAGINATION
(Brian Wilson,Joe Thomas,Steve Dahl)

Another car running fast
Another song on the beach
I take a trip through the past
When summer's way out of reach

Another walk in the park
When I need something to do
And when I feel all alone
Sometimes I think about you

速く走る車がまた一台
ビーチで歌う歌がもう一曲
夏に手が届かなくなる時
僕は過去を巡る旅に出かける

何かやらなくちゃと思ったら
僕はまた公園を散歩してみる
孤独を感じた時は
時々君のことを考えてみる
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この曲のプロデューサーであるジョー・トーマス「音節ごとに作られており、歌詞と言うよりは子音の積み重ね」とインタビューで答えているのですが、「曲全体で一貫した意味を持つ歌詞」ではなく、一つ一つの情景描写が羅列されているように感じられます。ですので、まるで蒸し暑い夏の夜に見る夢のような幻想的な、突飛な表現が使われているのですが、僕は、それを読み進めると、どこかで自分が歩んできた「夏」の思い出と重なり合うような、そんな「心地よさ」があるように感じます。ここで歌われる主人公「僕」は、過ぎ去っていく夏を前に焦燥感に駆られ、公園を散歩したり、「君」のことを考えているのです。
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★You take my hand
 Smile and say you don't understand
 To look in your eyes
 And see what you feel
 And then realize that nothing's for real
 'Cause you know it's just
 Your imagination running wild

★君は僕の手を取って
 微笑みを浮かべ「理解できない」って言うんだ
 僕は君の瞳を覗き込み
 君が何を感じているか確かめようとする
 そしてその時、気付くんだ
 何も現実ではないことに

 だってそれは君の想像の出来事だって
 君の想像力はどんどん膨らんでいく
 君の想像力はどんどん膨らんでいく
----------------------------
次のヴァースでの「僕」は、前節で「ただ思い焦がれているだけ」の「君」の手を握るというストレートな行動を取っていますが、ここに少し違和感があります。「君」の事を考えてるだけで何もできず公園をウロウロするだけの主人公ですから、もしそこで「行動を起こす」としたら、それをメインテーマにしたストレートなラブソングになろうものです。でも歌詞を読み進めると、「君」はただ笑って「分からないわ」というだけ。主人公は考えます。「あれ、おかしいな?これ本当に現実なのかな?」と思い、「君」の瞳を覗き込んだ瞬間に気付くんですね。「ああ、これは夢なんだ!」と。実際には、現実では何も起こっておらず、ただ「君」を思い焦がれるあまり、夢の中で手を握っただけ。何とも情けなく、切ない内容ですが、同じ経験をした人って少なからずいると思うんですよね。そういう自分の格好悪いところを捉えて、音楽にしたところに、この曲の凄さがあると僕は感じます。なんか田山花袋の「布団」に通じる部分を勝手に感じる僕です。
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Another bucket of sand
Another wave and the pier
I miss the way that I used
To call the shots around here
You know it would've been nice
If I had something to do
I took a trip through the past
And got to spend it with you

砂の入ったバケツがもう一つ
桟橋に当たる波がもう一つ
この辺りを僕がどうやって仕切っていたか
思い出すと懐かしいよ
やることをちゃんとやっていれば
もっと素敵なことになっていただろうね
僕は過去を巡る旅に出かけて
君と一緒に過ごすことにしたんだ
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次のヴァースでは、より鮮明な「夏の海」の背景が描かれています。その中で、今年の夏、怖気づいて何も行動を出来なかった主人公の後悔が歌われています。
「You know it would've been nice If I had something to do(やることをやっていたら、もっと素敵になっていただろうね」とは、誰にでも当てはまる共通のメッセージではないでしょうか?ここで「it would've been nice」といフレーズに引っかかったア・ナ・タは、かなりのロックファンでしょう!そう!何を隠そう、これは作者であるブライアン・ウィルソンが、かつて率いたアメリカの伝説的ロックバンド「ビーチ・ボーイズ」が1966年に発表した、ロック史に燦然と輝く大名盤「ペット・サウンズ」の一曲目を飾る名曲「Wouldn't It Be Nice(素敵じゃないか)」のオマージュなんです!くぅ~。
はっ、ビーチ・ボーイズへの愛が強すぎて、つい冷静さを欠いてしまいました。申し訳ございません。
こんなに取り乱すようじゃ、まさに「駄目な僕」ですね。

さて、それはさておき、このヴァースの最後「僕は過去を巡る旅に出かけて、君と一緒に過ごすことにする」は、今までの文脈から考えると、明らかに「現実」の出来事ではなく、主人公が夢、あるいは妄想の中で膨らませている物だという事が分かります。要するに、この曲で歌われているストーリーを僕なりに解釈すると、「好きな女の子に対して怖気づいて行動できないまま夏が終わってしまった「僕」は、現実から逃げるように想像の世界で「君」と旅に出る」というものです。
いかがでしょうか?「ロック」からは程遠いような情けなく内省的なストーリーですが、だからこそ、共感する部分もあり、共感するからこそ、それを聴いた時に一歩踏み出すためのエネルギーになるのだ僕は思います。ロックには必ずしもワイルドではなく、あえて自分の格好悪い部分をさらけだすような楽曲が多くあります。だからこそ、作者の人間性が身近に感じられて、よりその音楽が「染みる」のだと思います。これからも、このコーナーでそんな音楽を沢山紹介していければと思います!お読み頂き、ありがとうございます!

《Starman★アルチ筆》

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『スターマン★アルチ 』訳『The Word/ROCKの言霊』 知らずに死ねるか!詞から紐解く名曲の数々 (4曲目) バリー・マニロウ『Copacabana』

2024-07-28 09:56:01 | 『スターマン★アルチ 』音楽コラム集

連日ニュースで「酷暑だ!」「危険だ!」「外で運動するな!」「冷房を付けろ!」と報道されると、なんだか必要以上に暑さを感じ冷房に慣れてしまって、本来大丈夫だったはずの気温でも冷房に頼り、その結果、暑さに極端に弱い身体になってしまう・・・みたいな事にはならないのだろうか?と危機感を覚えます。もちろん熱中症は危険です!特に子どもは、大人より体力や免疫も無い状態ですし、身長も低いので地面からの太陽光の照り返しをダイレクトに受けてしまう!気を付けなければいけないのはもちろんなのですが、そもそも夏は暑いものだから、全てを冷房に頼り切るのではなく、ある程度、暑さに耐えられるような身体作りも必要ではないか・・・そんな事を考えながら、先ほど、35℃の炎天下の中、30分のランニングを終え、戻ってきたところです。いや~スポーツドリンクとプロテインが格別においしい!

さて、今日はそんな暑い夏にぴったりな歌をご紹介します。バリー・マニロウが1978年に発表した『Copacabana』です。CMでも取り上げられており、聞き覚えのある人も多いはず!このバリー・マニロウは1943年生まれ現在御年81歳!デビューほど遅いのですが、実はあのポール・マッカートニーと一歳違いなんですね。彼は、ジャンル的には、フランク・シナトラの系統を継ぐアメリカの正統派のシンガーなのですが、もともとは音楽プロデューサーやベット・ミドラーの編曲やピアニストを手掛けていた裏方で、そんな経歴からアメリカを代表するエンターテイナーへと上り詰めた・・・なかなか希有な存在なのです。そして何より素晴らしいのは2024年の現在も!精力的に活動を続けており、当時とほとんど変わらぬ髪型、体型を維持していることです。ポール・マッカートニーやミック・ジャガー、ボブ・ディランもそうですが、この人も「圧倒的な本物」だと思います。

さて、前置きが長くなりましたが、とりあえす聴いてみてください!ぜひレコードやCDで聴いてほしいですが、Youtubeのバリー・マニロウ公式チャンネルでも聴く事が出来ます。間違えて西城秀樹のカバーバージョンを聴かないように!
・・・・・・いかがでしたでしょうか。コパカバーナとはブラジルのリオデジャネイロにあるビーチの名前なのですが、正にそんな真夏のトロピカルビーチを彷彿させるラテンサウンド!僕は中学生の時、初めて聴きましたが、「そのコパカバーナビーチにまつわる、男女のラヴソングなんだろうな~」と軽い気持ちで聴いていました。その本来の歌詞に気付くことなく、十年程の月日が流れた頃、編集長「Mash氏」とこの曲の話となり、「実は歌詞が凄いよな!」と氏に言われ「えっ?」と言葉を失う僕。その頃の僕と言えば、バリー・マニロウのCDやレコードをコンプリートし、ボックスセットにも手を出す程のバリー好きを公言していたのですが、コパカバーナは彼の作品の中でも『ヒット狙いの軽いヒット曲』というイメージで、他愛のないラヴソングだと思っていました。その時はつい「歌詞がいいですよね~」と何となくごまかし、慌てて家に帰り歌詞を確認!すると、曲調とまったく異なる歌詞と世界観にゾッとし「そういうことだったのか~」と衝撃を受けました。この記事を書きながら当時の事を思い出しますが、やっぱり人間、知らない事ははっきり「知らない」と言える強さも大切ですよね(笑)。特に誰もが簡単に情報を手に入れることが出来る今『知ったつもり』になっているのって怖いモンですよ。
さて、前置きが長くなりましたが、この曲の歌詞を紹介していきます!

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Her name was Lola
She was a showgirl
With yellow feathers in her hair
And a dress cut down to lay
She would merengue
And do the cha-cha
And while she tried to be a star

彼女の名前はローラ、ショーガールだった
髪に黄金の羽根飾りを付け、
短くカットしたドレスを身に付けている
彼女はメレンゲやチャチャを踊る
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なるほど、まず最初はこの曲のヒロインの描写から来た!
ダンスが得意なラテン系美人か。と小説を読む時のように頭の中で、
会った事のない『ローラ』のイメージを作り上げる僕
ふと『レイ・デイヴィス』が思い浮かぶのも計算された歌詞だろう。

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And while she tried to be a star
Tony always tended bar
Across the crowded floor
They worked from eight 'til four
They were young and they had each other
Who could ask for more?

彼女がスターになろうと頑張る傍ら、
トニーはいつも、混み合うバーで接客をしていた
彼らは8時から4時まで働いた
彼らはお互い若く、心が通い合っていた
これ以上聞く事があるかい?
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ここでお相手の男「トニー」が登場!『彼らは~働いた』の歌詞で彼らが同じバーで働いているという事が分かります。最後の「Who could ask for more(これ以上聞く事があるかい?)」の表現が何ともアメリカ人的なセンスを感じて良い。この記事を書くにあたり、幾つかのサイトに載っている訳詞を読んだのですが、「それ以上何を望む」とか「これ以上、何も聞かなくても分かるだろ?」のような訳もありました。ここからサビ!「どうせ『コパカバーナ』という二人が働いているバーで愛を育む歌詞なんだろ。下らねえな~」と思いながら訳詞を読む進めた僕。
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At the Copa (Copa), Copacabana (Copacabana)
The hottest spot north of Havana
At the Copa (Copa), Copacabana
Music and passion were always the fashion at the Copa
They fell in love (Copa, Copacabana)

それはコパカバーナでの物語
北ハバナで一番ホットな場所さ
それはコパカバーナでの物語
音楽と情熱がいつも最先端
それがコパカバーナ
彼らは恋に落ちる・・・・・・
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ああ、やっぱりそうでした。『コパカバーナ』は地名ではなく、二人が働くバーの店名である事を明かしつつ、曲の世界感を紹介する手法ですね。今までの展開で言えば、内容的に特に驚きはないのですが、ここで僕が注目したいのが、英語ならではのリズム感というか語感ですね。『コパカバーナ』と『ノースハバナ』、『パッション』と『ファッション』このさり気なく韻を踏む言葉選びのセンスが、この曲が今でも語り継がれる一つの要因なんだなと改めて思います。さて、ある意味予想通り「ローラ」「トニー」の物語かと思ったところへ、次のヴァースに入ります。
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His is name was Rico
He wore a diamond
He was escorted to his chair
He saw Lola dancing there
And when she finished, he called her over
But Rico went a bit too far
Tony sailed across the bar
And then the punches flew
And chairs were smashed in two

彼の名前はリコ
ダイアモンドを身に付けている
席に案内されると、踊っているローラに釘付けになった
ダンスが終わり、リコはローラを呼び寄せた
でもリコは調子に乗り過ぎたんだ
トニーはバーカウンターを飛び出し
いくつかのパンチが飛び交い
イスは真っ二つ
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なるほど、バーで一人の女性を巡った喧嘩か。ありがちなラブソングかと思いきや、予想外に血の気の多い歌詞じゃないか!と感心していたところで、次の衝撃展開。
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There was blood and a single gunshot
But just who shot who?

At the Copa (Copa), Copacabana (Copacabana)
The hottest spot north of Havana
At the Copa (Copa), Copacabana
Music and passion were always the fashion at the Copa
She lost her love

辺りには血が飛び散り、一発の銃声が鳴り響く
でも誰が、誰を撃ったんだろうか?
それはコパカバーナでの物語
北ハバナで一番ホットな場所さ
それはコパカバーナでの物語
音楽と情熱がいつも最先端
それがコパカバーナ
ローラは最愛の人を失った・・・
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えっ!?最愛の人って、「トニー」撃ち殺されたの?なんということだ!ただの殴り合いならまだしも!この急展開。これがさらっと爽やかなラテンビートで歌われるのだから、いかに洋楽の歌詞が大事なのか!が良くわかります。歌詞の内容から作曲したら、マイナー調の引きずるような曲になりそうなもんです。最愛の恋人を失った「ローラ」のエピソードとしてこの曲を終わらせる事が出来たでしょう。ですが、次の歌詞が加わることで、更に「重さ」と「悲劇さ」が加えられます。
-------------------------------------------
Her name is Lola
She was a showgirl
But that was 30 years ago
When they used to have a show
Now it's a disco, but not for Lola
Still in the dress she used to wear
Faded feathers in her hair

She sits there so refined
And drinks herself half-blind
She lost her youth, and she lost her Tony
Now she's lost her mind

At the Copa (Copa), Copacabana (Copacabana)
The hottest spot north of Havana (here)
At the Copa (Copa), Copacabana
Music and passion were always the fashion at the Copa
Don't fall in love (Copa)


彼女の名前はローラ、ショーガールだった
でも、それは30年も前のこと
あの頃はまだショウが行われていたけれど、
今はディスコにその座を奪われ、彼女に出る幕はない
それでも彼女はドレスを身にまとい
髪には色あせた羽根飾り

彼女は上品に座り、酒を飲んで朦朧としている
彼女は若さを失い、そして恋人を失った
そして、ついには心も失ってしまった

それはコパカバーナでの物語
音楽と情熱がいつも最先端
それがコパカバーナ
コパカバーナでは恋に落ちてはいけない
---------------------------------------------
「おお~!Mash氏が言っていた歌詞の凄みとは、そういうことか!」つまりは、最愛の「トニー」を失った後、あの頃と同じドレス、髪飾りで着飾り、きらびやかな過去にしがみつき、酒におぼれ、最終的に精神を病んでしまった「ローラ」の姿が描かれています。そこで最後、「コパカバーナでは恋に落ちてはいけない」というナレーション風のエンディングで締める。アレンジやメロディを聴いただけだと、非常に美しいラテン調のポップソングですが、歌詞を見るとどうでしょう?一気にこの曲の印象が変わります。シリアスな歌詞をポップなビートやメロディに乗せるという手法は、世界中どこでも使われていますが、この曲はその最たる例というか、もっとも分かりやすい「裏切り」を表現しています。だからこそ、洋楽は「歌詞を読んでほしい」と心から感じるのです。

さて、ロックミュージックというのは(バリー・マニロウをロックというかはともかく)多かれ少なかれ「作者からリスナーへのメッセージが込められている」と僕は思っています。この曲を、単なるローラの悲恋の物語として片付ける人もいると思いますが、僕はこの曲に「ローラのようになってはいけない」つまり「過去の栄光にしがみついてはいけない」というメッセージを見出すのです。あなたの周りにもいませんか?事あるごとに「あの頃はよかった」「あの頃の自分は輝いていた」と昔話をする人。思い出は大事かもしれませんが、それで人生が停滞していてはお話になりません。「過去にしがみつくな!」。そんなメッセージを見出すとコレは単なるラテン調ポップソングでも、ローラの悲劇の物語でもなく、ハードパンチなメッセージソングに生まれ変わるのです。そのメッセージをキャッチするかは自分次第。ですが、ロック・ミュージックにはそんな素晴らしいメッセージがたくさんあります。これからも、そんなロックの歌詞の世界を皆さんに紹介していければと思います。では、今日はこの辺で。ありがとうございました!

《スターマン★アルチ筆》

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【特別企画】『ダリル・ホール & ジョン・オーツ』解散への寄稿 (第1回)スターマン★アルチ編

2024-06-16 10:41:30 | 『スターマン★アルチ 』音楽コラム集

あれは4月の半ばだった。電話で編集長『Mash』氏との編集会議にて今後の記事をどうしようか・・・と打ち合わせをしている際、
「ホール&オーツ解散したな!」
と藪から棒に言われまして、その事を知らなかった僕からすれば、本来ならば『突然の衝撃的なニュース』のはず・・・。しかし僕はさほど驚かなかったのでした。
「ああ、やっぱりな」という何処か冷めた、それでいて切ない気持ちに包まれたのです。

というのも、昨年11月にダリル・ホールが来日公演を行った際、同じタイミングで「ジョン・オーツに対し、アメリカの裁判所から接近禁止命令を出した」と報じられたからでしょう。細かいコトはご両人でないと分かりませんが、二人の関係性は決して良くないということが明るみに出たわけです。

ホール&オーツ。今となっては、音楽の歴史の中で埋もれてしまった存在かもしれませんが、僕は本当に彼らの事が大好きです。彼らの解散が良い機会か分かりませんが、今回は彼らの事についてお話したいと思います。

まずはご両人をご紹介

『ダリル・ホール』1946年生まれの77歳
『ジョン・オーツ』1948年生まれの76歳

二人は1972年にレコードデビューして以来、数々のヒットを飛ばしており「ブルーアイドソウル」というジャンルにカテゴライズされています。コレって「白人版ソウル・ミュージック」のことなのですが、彼らの代表曲、例えば「Private eyes」「Kiss on my list」を聴けばお分かりのように「これがソウル?」と思うほど、非常にシンプルで良質なポップミュージックなのです。
もちろん黒人音楽を愛して止まない二人なので、随所に黒人音楽へのリスペクトが感じられますが、あまりジャンルにこだわらず、シンプルに「良質な音楽」として聴いて頂きたいものです。

キーボード&ヴォーカルのダリル・ホールは、ホール&オーツのヒット曲のほとんどを歌っており、ライブでもミュージックビデオでも、明らかに彼だけが目立つような演出になっております。それは、彼らの意志とは関係ないのかもしれませんし、デビュー直後のアコースティックなソウルから、ダリル中心のキーボードミュージックに転向した事でヒットを生むようになったので彼が目立つのも当然のことなのかもしれませんが、もう一人のギター&ヴォーカルのジョン・オーツの影が明らかに薄い!初期のアルバムでこそ、ジョンのリードボーカルの曲が多かったものの、売り上げが上がるしたがって、徐々に減っていき、大ヒットした70年代後半からはアルバムに1,2曲ぐらいしかジョンが歌う曲がないという状況なのです。

しかし!本来の彼らの魅力は、ダリル・ホールとジョン・オーツの絶妙なバランスであり、キーが高くソウルフルでメロディックのダリルと、しゃがれ声で淡々と歌い上げるジョン(もちろんギターの腕も超一級です!)サム&デイヴさながらの対照的な二人だからこそ、これだけの成功を収めたのだと思います。僕は「ホール&オーツ」のコンサートも観に行けたし、彼ら二人それぞれのソロ・コンサートにも足を運びましたが、正直『ビルボード東京』で観たジョン・オーツのソロ・コンサートが圧倒的に良かった事実をココでお伝えしておきましょう!

肝心のデュオでのコンサートは2011年2月28日に『東京国際フォーラム』で観たわけですが、明らかに「お仕事モード」という感じで、当時のヒット曲を、そのままのアレンジで演奏する・・・なんとも予定調和で味気ないコンサートでした。そして、ジョン・オーツは「She's gone」と「Las Vegas Turnaround」のみしか歌っておらず、人によっては「彼もダリル・ホールのバックバンドの一人なのか?」と思われても仕方のないような扱いでした。

・・・・・ここで改めて思い出しましたが、そのコンサートを見に行ったのは「3・11東日本大震災」の一カ月ぐらい前。あの頃は、まさかあんな事が起きるなんて思いもしませんでしたし、あれから僕を含め多くの人の人生観が変わったことでしょう。3・11やコロナを経た今となっては、そのコンサートは本当に遠い昔話のように感じます。わたくしごとで恐縮ですが、あの時『一緒にコンサートを観た女の子』は元気でいるだろうか?僕自身その時のコンサートに対しては、さほど感動もなくほとんど印象にないのですが、その子が「Kiss on my list」が流れた瞬間に大喜びで立ち上がったことだけは覚えています。この広い世界のどこかで元気でいれば良いな~とあらためて思いますね(失礼!)

さて、話が少しずれましたが、ホール&オーツのコンサートは残念な印象で終わり、昨年観たトッド・ラングレンとダリル・ホールのジョイント・ライブも同様でした。やはり予定調和で、あまりに軽く歌っているので「ダリル調子悪いのかな?」と疑う程でしたし、MCも含め「これやっていればお前ら喜ぶんだろ?」というような傲慢な感じがありました。それを許容する「ヒット曲を聴ければ満足」とする様な客層にも問題はあると思いますが、その後ステージに立った「トッド・ラングレン師匠」が笑ってしまうほど全力投球でライブを行っていたので、随分とダリルが残念な感じとなってしまいました。もちろん、圧倒的に盛り上がっていたのはダリル・ホールの方でしたが・・・。

「一番良かった」と言えるのがジョン・オーツのソロコンサート!コレを観たのは、確かアルバム『1000 Miles of Life』が出た2008年だったと思います。『ビルボード東京』というキャパが300人ほどの狭い会場ということもあり、終始リラックスしたアットホームなコンサートでした。ジョン・オーツの歌声は本当に独特で、ハスキーな低い歌声から、絞り出すような高音まで、常に黒人音楽のフィーリングがあり、一度聴けばすぐに分かる歌声です。

今振り返ってみると、ダリル・ホールは常に、大ヒットを連発していた頃の「ホール&オーツ」を期待されており、当然会場も大きくなり、バンドの演奏もラウドになっていく。いくら本人がジョンのような「もっとルーツ寄りの音楽をしたい」と思っても、音楽ビジネスの流れに乗っている以上、それが出来ない状況なのです。昨年のコンサートでも「Private eyes」や「Dream time」などリハーサルかと思うぐらい軽く歌っており「ああ、この曲に愛着がないのかな~」と思っていたのですが、一方、グランドピアノだけで弾き語られた「Everytime you go away」は、「もう全部ピアノだけで演奏してほしい」と思うほど素晴らしかったものです。一つのバンドを牽引しないといけない立場の苦悩が垣間見れます。ソロアルバムでも『Dreamtime』では、あえて時代の音を取り入れたり『Soul alone』では、90年代R&Bのアレンジに寄せるあまり、ダリル・ホールの個性が失われています。そのソロアルバムも決して悪くはないですが「何処かダリル本来の魅力」が十分に発揮されていない印象なのです。

一方のジョン・オーツはライブでもアルバムでも「常に自然体」という感じで「自分の好きな音楽を好きなようにやる」という理想的なスタンスなのです。これは、ジョン・ボン・ジョヴィやミック・ジャガーにも言えることで、聴き直してみると、どこか「当時の音」が「古臭く」聞こえ、逆によりルーツ寄りだったリッチー・サンボラやキース・リチャーズのソロの方が、良く聴こえたりします。

色々と書きましたが、そもそも二人揃った「ホール&オーツ」の音楽は素晴らしく、1972年から2024年までの長い期間の中で、名曲が数多く生まれています。勿論長い年月です。大きく音楽性は移り変わっていますので「どこから聴けば良いか分からない!」という方のために、参考までに僕の好きなアルバムを、各年代ごとにご紹介致します。

まずは70年代!既に「ブルースやソウルが好きだ」という粋な方には、1973年の2作目『Abandoned Luncheonette』でしょう!何よりも素晴らしいのが、ダリルとジョンのリードボーカルが半々ぐらいの割合で、アコースティックギター主体の「いつまでも色あせない」音楽なのです。この時はまだ「ちゃんとデュオやってんな~」という感じです。ほどよく土の香りがし、ブルース、フォーク、ボサノヴァ、ソウルなどのエッセンスが絶妙に混ざりあったサウンドは、決して派手さは無く売れる音楽ではないかもしれませんが、非常に素晴らしい内容なのです。

1980年代は徐々にダリル・ホール主導のポップロック路線に移っていき、『H2O』『Big Bam Boom』などの全米で200万枚を越えるセールスを連発し連続シングル1位の記録も作ります。もちろんどれも良いのですが、個人的には1980年の「Voices」を推したい!後作に比べると、まだシンセの音が少なく、エレキギターのロックなフィーリングがありますし、ジョンオーツのリードボーカルで始まる一曲目「How Does It Feel to Be Back」では、みんな大好きビートリーなコーラスも聴けます!勿論ライチャス・ブラザーズのカバー「ふられた気持ち」や、後にポール・ヤングがカバーし大ヒットする「Everytime You Go Away」、代表曲「Kiss on my list」も収録されています。知られてないものの以外と名曲揃い!がこの『Voices』なのです。

1990年代に入ると、シンセ&打ち込み主体のポップ路線から原点回帰していきます。残念ながらそれと同時に売り上げが下がっていきますが、音楽的な素晴らしさで言えば1990年の『Change of Season』。コレは最高です。再びアコースティック主体のルーツ寄りのサウンドとなり、何よりもジョン・オーツのヴォーカルが増えました。聴き直してみると、やっぱりホール&オーツの良いアルバムって、二人のバランスが丁度良い具合なんですよね。

じゃあ2000年代はどうか?当時のファンも、ここまでは追いかけていないかもしれませんが、僕が敢えて推したいアルバムが、2003年の『Do It for Love』です。案の定、こちらもジョン・オーツのボーカルが多いです。このアルバム全体に流れる、どこか陰鬱とした雨の日のような雰囲気が本当に魅力的で、ヴォーカルにかなり気合が入っています。予想外にニューラディカルズのカバー「Someday We'll Know」にはトッド・ラングレンも参加し、三人で大熱唱する感動的な一曲です。そして、ラストを飾るジョン・オーツの「Love in a Dangerous Time」!一年前に発表されたソロアルバム『Phunk Shui』に収録されていた曲であり、「既に発表済みの自分のソロ曲」をあえて収録するほど、こだわった曲なのでしょう。「ホール&オーツ」の歌詞に注目する事はあまりないかもしれませんが、この曲に関しては歌詞も本当に素晴らしいので、最後にその一部を紹介し、今回の記事を終えたいと思います。

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【Love in a Dangerous Time】

(written by John Oates, Arthur Baker, Tommy Faragher) 

この国の中心に
銃を持っていない殺し屋が一人
みんな怖がって
安心して誰かを愛したり信じたりできない

だからこそ、僕は祈らずにはいられない
君のために

子ども達の心の中では真実はシンプルだ
自分の世界に閉じこもりそうになったら
目を開けば良い
暗闇と沈黙から逃れて
いったいどうやって生きていけばようのだろう?

愛に危機が迫っている
(Love in a Dangerous Time)

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これこそが、彼の人間性というか人生観を象徴するようなピースフルな曲で「あっ、この人、本当ピースフルで自然体な人なんだな」と思わせる一曲なのです。

さて、いかがでしたでしょうか?解散してしまったのは残念ですが「ホール&オーツ」という素晴らしい二人組の音楽を今こそ聴いて頂ければ嬉しい限りです。

長文のご愛読、誠にありがとうございました!

《スターマン★アルチ筆》

ご意見・ご感想・記事投稿・編集長の執筆、演奏、講演依頼『スターマンの演奏依頼』などは『ハードパンチ編集部』までどうぞ!
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『スターマン★アルチ 』訳『The Word/ROCKの言霊』 知らずに死ねるか!詞から紐解く名曲の数々 (3曲目) John Mellencamp『Play guitar』

2024-05-19 13:26:00 | 『スターマン★アルチ 』音楽コラム集

皆さん、いかがお過ごしでしょうか?
月一回登場の『スターマン★アルチ』でございます。
今回もどうぞよろしくお願い致します。

新生活が始まり、生活の変化に不安やらストレスを感じている人もいるかと思います。
僕はと言いますと、5月より新居に引っ越しました。
住む場所が変わると、日々継続しているランニング(フクシマンさん程では無いですが)のコースも変わるわけで、信号や交通量が少なく、いかに短時間で効率の良いトレーニングが出来るコースはどこだ~!?と模索する日々です。

最近、うちから、近くを流れる川にかけての坂道を下り、そのまま墓地の間を縫った登り坂を登るという強烈なアップダウンコースを発見し、何回かチャレンジしているのですが、やはり登り坂はキビシイ~!登っている間、よく頭の中で、あのアレサ・フランクリンも歌う大好きなゴスペルソング「Climbing Higher Mountains(高き山を登らん)」が流れるのですが、「どうせやるなら高い山(ハードな道)を選ぼう」
という挑戦する気持ちは、いくつになっても大切だなぁ・・・と思う今日この頃です。

挑戦・・・
そういえば、最近、制服の背中にギターを抱えた中高生を見かけません。「全く見かけない」というわけでは無いのですが、自分が中学、高校生の頃に比べれば圧倒的に減った気がします。当時は日本でも海外でも、時代を牽引する「ロックバンド」がいて、彼らの新譜が出るたびに次の日の学校で盛り上がったものです。「ロックバンド」は憧れであり、その中でも「ギター」は、言葉では表現できない独自の甘美な魅力を持っていました。それは、自分の悩みやフラストレーションを抱えた少年少女のはけ口であり、最大の自己表現だったのです。「ギターじゃないといけない」という根拠のない理由が、僕らの間には共通認識として存在していた。まだ僕らが少年だった「あの頃」には、そういった人達がたくさんいたのです。そして、みんな当たり前のようにロックバンドに憧れ、当たり前のようにギターを手に取った

今となっては、昔話なのでしょうか。少なくとも、今のキッズ達にとって、ロックミュージックもギターも、最初の選択肢には挙がらないようです。

前置きは長くなりましたが、まだロックミュージックに無限のエネルギーがあり、「ギターを弾く」という事が当然の憧れであり、神秘的な魅力を秘めていた時代の一曲をご紹介します。

ジョン・メレンキャンプの1983年のアルバム「Uh-Huh」(天使か悪魔か)収録の、「Play guitar」です。
彼については別途、語る機会を設けたいぐらいです。とにかく僕は彼が好きで、非常に社会に対しても政治に対しても、勿論リスナーに対してもそうですが、メッセージを発信し続けている人物なのです。話し出すと切りがないので、曲の歌詞にのみ注目して書きたいと思います。

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You may drive around your town
In a brand new shiny car

新しい光る新車でドライヴすると良い

Your face in the wind and your haircut's 
Your friends think you're bizarre

風を切る最先端のヘアーカット
友だちは君を異様だと思うだろう

You may find a cushy job
And I hope that you go far

楽な仕事を見つけると良いよ
上手くいくことを願っている

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この曲のターゲットは主に当時のアメリカのハイスクールから20代前半でしょうか。
残念ながら日本の高校生は車の免許は取れないのですが、要するにファッショナブルで誰もが憧れるようなきらびやかなステータスや、楽な生活を求める若者の心理が歌われています。今の日本の若者同様ですね。

この曲における「You may(すると良い)」というフレーズは、
「俺はそう思わないけど、すれば良いんじゃない?」という皮肉めいた挑発的な表現として用いられております。

じゃあ、ジョン・メレンキャンプは何を伝えたいか、それがこれです!

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But if you really want to taste some cool success
You better learn to play guitar

だけど、君が本当にクールなら、成功を味わいたいなら
ギターを習うべきだ

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はい!もうこれがこの曲のメッセージのすべてです。
「つべこべ言わずギターを弾け」
ギターを弾いてアメリカンロック界のトップに上り詰めた男の、何ともシンプルで説得力のあるメッセージです。

それにしても、ただの「成功」ではなく「クールな成功(cool success)」と表現するところが、何ともロック的でニクイですよね!

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Play guitar, play guitar
Play guitar, oh yeah

プレイ・ギター プレイ・ギター

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サビは曲のタイトルを連呼。
いかに彼がシンプルにリスナーにこのメッセージを伝えたいかがよくわかります。

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Well, you got your eyes on the cheerleader queen
And you're walkin' her home from school

チアリーダークイーンに夢中な君
そして、君は彼女を家まで送っている

You know that she's only 17
But you know she's gonna make you a fool

彼女はたったの17歳だけど
君を笑いものにするだろう

And you know you can't touch that stuff
Without money or a brand-new car

それは、金や最新の車無しでは触れられない代物なのさ

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ここの背景描写は、それこそ「ビバリーヒルズ高校白書」のような何ともアメリカンなシーンですが、
お金もない、スポーツカーも持っていない、ルックスもいまいち(そこまでは言っていませんが)
そんな男に、「クラスのトップクラス女子のハートを奪うことは出来ないぜ!」みたいな事ですよね。

「そんな奴が一発逆転ホームランを打つ方法がこれだぜ!」と言わんばかりに、彼は高らかに歌います。

そう!

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Let me give you some good advice, young man
You better learn to play guitar

若者よ、アドバイスしよう
君はギターを習うべきだ

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そして、続いて、なぜギターで無ければいけないのか?が歌われます。

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All women around the world want a phony rock star
Who plays guitar

世界中の女は、ギターを弾くインチキなロックスターを求めてるんだ

Well, you pump your iron and shine your shoes
And wear your hair just right
You go down out on cruisin' street
'Cause you wanna score tonight

身体を引き締め靴を磨き、髪型をキメて街に繰り出すのさ
だって、今夜は結果を出したいだろう

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ここで、僕が持っている、この曲が収録されたアルバム「Uh-Huh」の日本盤LPには次のような英詞が載っています。

「We all grab our stocking this time」
(僕らみんなは、今こそ自分達のストッキングを掴む)

なんだそりゃ???
という唐突で脈絡のない文章が現れ、思わず「grab~stocking」という何らかのスラングなのかと調べていたのですが、残念ながら見つからず。ただ、彼の歌詞を紹介する海外のサイトには、同じ箇所の歌詞が、

「We all want to strut our stuff」
(俺たちは皆、自分のものを見せびらかしたいのさ)

と書かれており、恐らくこちらが正しいと思われます。
断定は出来ないですが・・・

まあ日本人同士ですら聞き間違いがあるのですから、改めて英語を聞きとる難しさや、翻訳するむずかしさを感じました。

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You really wanna show your scars
Forget all about that macho shit

君は本当に自分の傷跡を見せたいんだな
そんな下らない男らしさなんて忘れろよ

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男のくだらないこだわりや強がりは、女性には全然響かない事なんて腐るほどあると思いますが、そんな世の男どもに釘を刺すフレーズを歌ったあとは、最後にやっぱりこの一言

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And learn how to play guitar
そしてギターを習うんだ

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いかがでしょうか?
この曲では全編に渡り、「なぜギターじゃなければいけないのか」が歌われています。

どんな時代でも、悩みやフラストレーションを抱え、人との関わりや自己表現に悩む事はあると思います。
そんな時、あなたは何をしますか?

「SNS」で誰かと繋がった気持ちになって気持ちを誤魔化すのも良いし、「Youtube」や「テレビ」で垂れ流された動画に、何も考えず身を埋めるのも時には良いでしょう。
しかし、そこに一体、何の努力があるのでしょうか?

冒頭でも書いたように「Climbing Higher Mountains(高き山を登らん)」
努力した先には、今まで感じたことのない喜びや達成感があると思います。

もちろん、どこにフォーカスするかは人それぞれ自由なのですが、もし、自分の感情のはけ口が無かったり、何か毎日に物足りなさを感じているようでしたら「ギターを弾く」というのは、とても良い解決策だと思います。ちょうど幼少期にメレンキャンプで燃えた編集長『Mash氏』がお伝えの通り「ジェリーズ・ギター」を復活させますしね。

自分も、今の時代に「ロックミュージック」「ギターの素晴らしさ」を伝える事に少しでも貢献できれば・・・と思っておりますよ。

ちなみに、ジョン・メレンキャンプは、そうやってギターを弾いたことで、アメリカンロックのトップに登り詰め、その後なんやかんやで、あのハリウッド女優「メグ・ライアン」とお付き合いしていた模様。この曲の歌詞の通りの成功を掴んだわけです。

まあ成功の基準なんて人それぞれですが、とにかくこれだけは言いたい!

「ギターを弾く」って最高に楽しいですよ。
この曲を聴いて、一人でもギターを手にする人が増えれば嬉しいです。

以上、お読み頂きありがとうございました。Keep on Rockin'!

《スターマン★アルチ筆》

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『ロッド・スチュアート日本公演2024』渾身Liveレビュー!by スターマン★アルチ

2024-04-21 10:23:24 | 『スターマン★アルチ 』音楽コラム集

ここ最近、自分の好きなロックミュージシャンが来日したら、欠かさず行くようにしています。

昨年は、4月にボブ・ディラン、11月にダリル・ホールとトッド・ラングレンのジョイントライヴ。
今年2月はボズ・スキャッグス、4月はジェームズ・テイラー

とりあえず自分が一枚でもレコードを持っているような名の知れたミュージシャンは、
「見れるうちに見ておこう」というスタンスで、コンサート会場まで足を運びます。

モチロンこれには理由があります。ここ数年世界中で猛威を振るった「コロナ」です。
世界中が魔法にかかったような数年間の間に、もしかしたらコロナ禍で無ければ日本へ来日していたかもしれない、
そんな数多くのロックレジェンド達がこの世を去ってしまった。

「こんなことなら、前回日本に来た際に見に行っておけばよかった」
そんな後悔だけが残ったのですが、その経験が僕をライブ会場へ足を運ぶきっかけになったのです。

もちろん、そのミュージシャン達の事が「好きだから行く」のは確かですが、
僕が愛して止まないロックレジェンド達は、基本的に70代を超え、中にはポール・マッカートニーやボブ・ディランのように80歳を超えてもなお活躍し続けている人もいる。

当然、昔とはルックスも異なれば、全盛期のような力強いヴォーカルを聴く事は出来ませんが、
「老い」に抗い、今もなお昔と同じイメージを保ち、ファンを喜ばせる為に世界を駆け巡る彼らの姿はシンプルに格好良い。
こう書くとおこがましいですが、ある意味、自分は「ファン」ではなく、「ロックの伝道者」であり、
自分が多くのパワーをもらったロックミュージックに恩返しをする為に、次の世代にロックミュージックを伝える使命感から、ライブに足を運ぶ・・・そんな気がするのです。

ただ、昔から愛して止まないレジェンド達が老いていくのを間近で見る事に虚しさを感じる事もあります。
だから、僕は1月のビリージョエルの東京ドーム公演を見に行かなかった。
ボブ・ディランは別格としても、ここ最近見た多くのロックレジェンド達より、圧倒的に大好きなビリージョエルだったのにも関わずです。

長年ロックから遠ざかり(彼が最後にロックアルバムを発表したのは30年前!)。
半ば引退状態だった彼の老いた姿を、どうしても見たいとは思えなかったのです。後でその公演の音源を聴きましたが、ビリーの声は全盛期より弱々しく、曲によりキーを下げている。髪の毛は無くなり、身体もどこか重そうでした。
ただ、そう言いながらも公演自体は素晴らしく、ある程度の感動もしたのですが、実際に20000円近いお金を払い、東京ドームへと足を運んだ時に、同じ感動が得られたかどうか・・・は分かりません。

さて、ココからが本題です。
逆に、来日のニュースと同時に「這ってでも行く!」と決めたロックレジェンドが、「ロッド・スチュアート」なんです。

今年の3月20日、有明アリーナでの公演に行ってきました!
昔から大好きなミュージシャンであり、「ウルフカット」に「ベロアジャケット」「柄シャツ」「スカーフ」を組み合わせた王道ロックファッションは、高校生の頃に真似をしたものです。僕は彼のようなブロンドでなくべったり黒髪で、髪質も細いくせっ毛だったので「ツービートの頃のビートたけし師匠みたい」と言われてしまいましたが、実際「ビート師匠」も「ロッドの髪形を真似た」と後述していますので、当たらずとも遠からずと言った所でしょう。

そんなわけで、他のロックレジェンドのライブのような「後世に伝える使命感」ではなく、明らかに「ファン的なわくわく感」でライブに行った僕。
前置きは長くなりましたが、今回は、そういった「ファン的」な要素は排除し、正直な感想でレビューを書きたいと思います!

ロッドスチュアートはかれこれ13年振りの来日であり、今回は東京1公演のみ!しかも79歳という年齢なのですから、多くの人が「これが最後の来日になるかも」と思ったのでしょう。有明アリーナは超満員でした。
開演前にちょっとだけグッズ売り場を覗いたところ、いきなりロッドとロナルド・アイズレー(アイズレーブラザーズ)との共演曲「This old heart of mine」が大音量で流れ、テンションMAXの僕。
ただそんな中でも、Tシャツ6000円、パーカー10000円という高額な価格に幻滅し、さっさと立ち去ろうかと思ったところ、タワーレコードのブースで2月に発売された新譜「Swing Fever」のCDとレコードが販売されていた事に気付きました。会場の年齢層は当時のファンが多いのか50~70代が大半でしたが、ほとんどの人がCDを手に取り、その横でひっそり並んでいるレコードには見向きもされませんでした。

「自分より年上のくせに何でレコードを買わないんだよ!」
という怒りを込めて、あえて周りに聞こえるような声で
「すみません!レコードまだ在庫ありますか?」
と聞き、周りが不思議そうな顔で僕を見る中、このジョールズ・ホランドとの共演盤をGET!

さて、いよいよライブ本番です。
僕の席は、会場からほぼ真横の2F席でした。正面では無いものの、逆にステージから近く、「当たり」の席でした。開演時刻とほぼ同じ17:00に照明が落ち、デペッシュモードの「Just can't get enough」のSEが会場内に響き渡る。その時はなぜこの曲だったのか分からなかったのですが、後で調べてみるとこの曲、彼が熱烈なサポーターである、スコットランドのサッカーチーム「セルティックFC」の応援歌だったようです。
さすが若い頃プロサッカー選手だっただけありますね。この後も、彼のルーツであるスコットランドへの愛やサッカーへの愛が随所に込められています。

SEの後は、バグパイプ(これも彼のルーツであるスコットランドの民族楽器)の生演奏から強烈なドラム&ベースのビートが刻まれる。バックバンドの前には二人の金髪ブロンド女性のフィドル奏者二人と、同じく金髪ブロンドのコーラス隊3人が登場!彼の大ヒットアルバムの邦題が「スーパースターはブロンドがお好き」なのでも分かるように、ロッドは昔から、数多くの金髪ブロンド女性との浮名を流してきた!彼の本当の気持ちがどうかは分かりませんが、あえて演者の女性をすべて「金髪ブロンド」で統一した所に、彼の「ロックスターとしてのイメージ」を忠実に守ろうとする、「ロッド・スチュアート」のプロ根性を感じました。そして、ついに本人登場!

79歳にしてなおキープし続けるブロンドヘアーに、ロックなゼブラ柄ジャケット、ぴっちりした黒のパンツに身を包み、「あの頃と同じ」雰囲気のロッドスチュアートが登場!

最初を飾るのは、1.「Infatuation」
1984年作「カモフラージュ」の最初を飾る曲。正直「なんで最初がこの曲なんだろう?」という知名度の曲ですが、すぐ、この曲のリードギターを今は亡き盟友ジェフ・ベックが弾いていた事を思い出し、ロッドの追悼の想い、ジェフ・ベックという人間を後世に伝えようという彼なりの意図に気付き、早くも感動の極地の僕。

彼は2000年に甲状腺癌の手術をし、高音が出なくなり、それと同時期から「ロックシンガー」から、「アメリカの古い曲を歌うおじさん」に変貌していったのですが、この一曲目のロックナンバーで、彼の中の「ロック」が健在である事を証明しました。時折見せる全力のシャウトからは「なんだ!まだロッド歌えるじゃん!」と心から嬉しくなりました。

金髪ブロンドのフィドル隊を中心に、ここでぐっと「ケルト民謡」感たっぷりアコースティックアレンジで、フェイセズ時代の名曲2.「Ohh lala」を歌います。ちなみにオリジナル盤では、ロッドでなく、後にストーンズで活躍するロニーウッドが歌っています。2曲目でこの曲を持ってくるあたり、ロッドのフェイセズメンバーへのリスペクトや自分のルーツであるスコットランドへの愛を感じます。
このフィドル隊の女性二人は、今回のライブでかなり重要な役割を占めており、途中、どこか違うケルト民謡のバンドのコンサートに迷い込んだような本格的な演奏を聴かせてくれます。

続く、3.「This Old Heart of Mine (Is Weak for You)」
グッズ売り場で流れていた曲が早くも登場!オリジナルよりキーを落とし、どこか不安定なボーカルの印象。さすがに79歳では厳しいか?と思いましたがこの後はどうだ?

4.「It's a Heartache」(Bonnie Tyler cover)
2006年発表のアルバムでカバーしたボニー・タイラーの一曲。ロッドお得意のカントリーロックアレンジ。歌いっぷりも今の彼のキーに合っており、素晴らしい歌いっぷりですが、さすがにこの辺りは知っているお客も少ないのか、やや控えめな盛り上がりでライブは進行していきます。今のところ超代表曲を外し、低空飛行を続ける会場。。。。。

ここでついに彼の代表曲が登場!5.「Forever Young」
「永久に若く」彼の代名詞とも言えるこの曲。あえてボブ・ディランの名曲と同じタイトルで歌詞もメロディも異なる物をぶつけてくる所から、ロッドのこの曲への愛と自信を感じます。ようやく来た「代表曲」に会場は大盛り上がり!ただここで、途中まで歌い上げたと同時にロッドがバックステージへ下がります。さすがに1公演まるまる歌い続けることは無理で、途中でバックコーラスが歌う休憩タイムがある事は覚悟していましたが、あまりにも早い。

会場全体が困惑する中、ステージに映し出されたのは、ロッドのルーツであるスコットランドの風景や、民族衣装を纏ったマーチングバンドの姿。そしてその直後、金髪ブロンド女性によるフィドル&大太鼓の演奏。この瞬間、ロッド・スチュアートのライブである事を忘れさせるような、美しいケルト民謡のステージへと変貌しました。気付いたら僕の頬を涙がつたう・・・。「永久に若くありますように」と歌うロッド。でも、人生の後半、「心はスコットランドへ帰っていく」という彼の想いが込められた演出でした。バックバンドとフィドルの演奏が最高潮に達したと同時にロッドが再登場!もちろん衣装を変え「ロックショウ」としてお客さんを楽しませる演出がふんだんに盛り込まれています。

6.Have You Ever Seen the Rain?(Creedence Clearwater Revival cover)
「ジョン・フォガティが書いた曲だよ!」のMCと共にロックの大名曲が登場。曲の知名度が高いこともあり、会場は大盛り上がり。

続く7.「Baby Jane」、8「The First Cut Is the Deepest」(Cat Stevens cover)は、時折不安定なボーカルになっていたが、それを補うようにフィドル隊が強烈なソロを披露。この辺りで、ロッド・スチュアートの今回のライブのコンセプトが明確になってきます。今のロッドではショウの中で歌える曲数に限界があるのは事実。その上で、いかにショウとしてのクォリティを上げていくか。ロッドだけにスポットライトを当てるのではなく、バックバンド、バックシンガーを含め「トータルのショウ」として考えているんですね。どちらかと言えば、ジェイムズ・ブラウンやレイ・チャールズ等のソウルシンガーのライブに近い。その証拠に、ロッドは会場の盛り上がりに合わせ、「今のところもう一回」というような指示をバンドに出しているのが見えた。「やっぱりロッドってミュージシャンなんだな」と、今まで見た事のないプロ意識に感動したのも事実です。

さて、安定の9.Maggie Mayを余裕で歌い上げ、80年代のアルバム「パンドラの箱」より選曲のマニアックな10.「Passion」で不意を突かれる。この曲に関しては観客の多くも知らないんじゃないか、と思うようなリアクションでしたが、予想外すぎる選曲にテンションMAXの僕。

ここでこの日の一つのハイライトが訪れる。昨年亡くなったフリートウッド・マックのメンバー「クリスティン・マクヴィー」の写真がスクリーンに映し出される。
「彼女が60年代に録音した曲を歌うよ」のMCと共に、フェイセズ時代から彼自身お気に入りのレパートリーとしている
11.「I'd Rather Go Blind」を熱唱。

ここで、このライブでのもう一つのコンセプトに気付く。ロッドは自分のライブを通じ、自分が影響を受けた音楽や、惜しくもこの世を去った仲間たちの曲を伝えようといている事だったのだ。それが生き残った人間の役割だと言わんばかりに、淡々と、時に激しく歌い上げるロッド。時折見せるアドリブの歌いまわしわ明らかにサム・クックを意識しているし、最後、バンドと共にシャウトを繰り返す歌いっぷりは、完全に彼の愛する偉大なソウルマン達になりきっている。

圧倒的な感動い包まれながら、12.「Young Turks」が歌われる。ロッド自身が思い入れがあるのか、今ではどちらかというと「当時の音」として軽く見られている80年代の曲を、あえて積極的い取り上げていました。この曲も、アルバムでは80年代特有のデジタルサウンドなのですが、ライブでは迫力あるロックサウンドに仕上げ直していました。

トム・ウェイツのカバー13.「Downtown Train」のあと、ロッドは一度バックステージに下がり、ブロンドコーラス隊3人による、ポインターシスターズの14.「I'm So Excited」が歌われる。ここでのこのコーラス隊の歌いっぷりが非常に黒く、3人によるコーラスもソウルフルで、純粋に「良い音楽」を聞いている印象。それは会場全体にも伝わっており、ロッドがいないにも関わらず、会場は大盛り上がりでした。この辺り、ロッドが自分に甘えず、しっかりバンドメンバーを厳選いているこだわりが見て取れます。

続く15.I Don't Want to Talk About Itでは、途中観客いマイクを向け合唱を促す。「えっこの曲で?」と思いきや、さすがは往年のファン。ロッドの誘いに答え、会場中が大熱唱をしていました。本当に好きな人が揃っている、と感じる、非常に愛のある瞬間でした。

次の16.「You're in My Heart」はロッドのサッカー愛が溢れる曲で、「君はまるでセルティック。君は今まで観てきたなかで最高のチーム」という無理やりサッカーねじ込んだようなの愛情表現が有名な一曲です。バックスクリーンにはセルティックのオールドユニフォームを来たロッドや、現在、セルティックで活躍する古橋選手の試合映像が映し出される演出でした。

17.Have I Told You Latelyは言わずと知れたヴァン・モリソンのカバー。アンプラグドを彷彿とさせるしっかりとした歌いこみ。長いライブになれば、時折不安定あったり、声が出ない時があるものの、この曲のように「決めるところはしっかり決めてくる」というロッドのプロ意識を感じます。

そして、次はラベルの大ヒット曲のカバーの、18.「Lady Marmalade」でブロンドコーラス隊にバトンタッチし、再びコスチュームチェンジのため、バックステージへ下がる。通常ならロッドを見に来たファンは物足りなく感じるかもしれませんが、ロッドがヴォーカルのクォリティを維持するために必要な時間なのかもしれません。しかし、このブレイクタイムを、そう感じさせない程、素晴らしい歌いっぷり&ハモリを披露。

その勢いのまま、ステージに戻ったロッドは、故ティナ・ターナーとのデュエットでおなじみ19.「It Takes Two」を熱唱!スクリーンには、ティナの写真が映し出され「彼女の事を覚えておいてくれ!」というメッセージが伝わります。今回のライブに共通しているのですが、静かめなバラード曲では声が不安定になるのに対し、ロックナンバーでは非常に強烈なシャウトを決める!

続いて、ロバート・パーマーもカバーした20.「Some Guys Have All the Luck」で再び、R&Bの名曲を会場に紹介したのち、彼最大のヒット曲の一つ、21.Da Ya Think I'm Sexy?が歌われる。イントロのメロディを観客に歌わせる誘い掛けにバッチリ付いてくる観客。そしてそれに呼応するかのように、今回のライブ一番のシャウトを決めるロッド。

今回のライブは全体を通してロックナンバーの方がロッドの歌いっぷりもバンドの演奏もクオリティが高い。もしかすると、ブレイクタイムはいらないんじゃないかと期待をさせるような躍動ぶりでした。

その後、ステージからすべての演者が退き、アンコールを求める観客の手拍子が響き渡る。アンコールはこれしかないでしょう!とばかりに観客の期待通りの22.「Sailing」が演奏されます。現在のロッドが歌うと、当時のような華々しさではなく、シンプルなフォークミュージックとして、この曲の持つ普遍的な美しさが、より引き立つように感じられます。

「もうこれで大満足だ!」と思ったら、再びステージに登場し、次の曲の準備を始めるメンバー達。正直「Sailingの次にアンコールで演奏されるような曲が思いつかない。」個人的には、1stアルバム収録の「ハンドバッグと外出着」あたりを聞きたかったですが、とにかく次の曲が思いつかない。と思った瞬間、チャック・ベリーのギターイントロが演奏される。これはもしや・・・。
そう、フェイセズ時代からのレパートリー「Sweet Little Rock & Roller」が飛び出したのだ。2時間近いライブのラストとは思えない軽やかなステップを刻みながら、大熱唱をするロッド。腐るほど見た尻のUP映像でお馴染みの曲だ!「最後の最後はロックで締める」これはロッドが今なお現役である事を、観客に見せつけているようであり、それは、「ロックスターのロッド・スチュアート」という期待されるイメージを背負い続けるという決意表明のようにも感じました。

さて、予想外の「Sweet Little Rock & Roller」で終わった感動のライブの後、会場である有明アリーナから、編集長『MASH氏』から強引に買わされた赤い『愛車ポルシェ986ボクスター』を停めている駐車場までの1.3kmを全力疾走する僕。間違えて異様に高価な駐車場に停めてしまっていたので、1分でも早く出庫せねば!というのが本音でしたが、3月の夜の寒空の下、無機質なビル群の合間を走り抜けるのは純粋に気持ち良かった・・・、僕の頭の中は、79歳にして軽やかなステップで熱唱をするロッド・スチュアートで埋め尽くされていました。もちろん、今回のライブは、純粋な音楽的な感動もありましたが、それ以上に「今もなお元気にハードワークをするベテランがここにもいる」という、疑いようのない真実を見ることが出来た、という喜びに溢れていました。

「ロックな生き方」とは何か。
毎晩酒を飲み女をはべらし、ドラッグでトリップをし、自堕落な生活をすることなのでしょうか。いいえ、勿論違います。少なくとも昔はともかく、今のロッド・スチュアートは「ロックな生き方」とは何かを、僕らに示してくれたのだと思います。今の彼にあるのは、自分の愛する音楽を後世に伝えることや、期待されているイメージを全うしようという使命感であり、その姿を見たらこそ、自分も「相手が喜ぶために」行動できる人間になろうと思うのです。

「ロックな生き方とは何か?」

人それぞれ色々な答えがあると思いますが、僕は「自分ではなく、相手の事を一番に考え、ハードワークする事」だと思います。
僕は彼らの足元に及びませんが、僕は僕の与えられたスペースで、ハードワークしていこう。
そう、心から思わせてくれたライブでした。

《スターマン★アルチ筆》

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『スターマン★アルチ 』訳『The Word/ROCKの言霊』 知らずに死ねるか!詞から紐解く名曲の数々 (2曲目)Bob Marley & the wailers『Redemption song』

2024-03-23 10:13:02 | 『スターマン★アルチ 』音楽コラム集

あっという間に3月!出会いと別れが訪れる春の季節ですね。
就職や進学のため、住み慣れた場所を離れ、
新たな環境へと足を踏み出す人もいれば
大切な人との別れを迎える人もいるでしょう。

僕はと言いますと、来月引っ越しをすることになりまして、
日々部屋の片付けやら荷造りに勤しんでおりますが、
ついつい貴重な盤(レコードです)を見つけ、
ジャケットを眺めたり、針を落として感動に頭を抱える日々です。

新たなステージに挑戦する人にとって
大いなる期待と不安が入り混じっていると思います。
そんな方々にぜひ聴いて頂きたいのが、本日ご紹介する曲です。

ボブ・マーリー「Redemption song」

まずは何の予備知識も無しに聴いてみてください
Youtubeのボブ・マーリー公式チャンネルでも聴く事が出来ます。

レゲエという音楽の先駆者である彼。
この人は存在自体が神格化されており、
その生き様や音楽すべてがメッセージと言えるのですが、
彼の功績を伝えるにはどうしてもラスタファリズムや
当時の時代背景を絡めてしまいがちです。

「ラスタファリズムって何?」
「レゲエって何?」
と思う方もいるかもしれませんが、
この記事では、そういった情報はなるべく排除して、
純粋に「歌の詩」にのみスポットライトを当て、
ご紹介したいと思います。
その上で、もし興味を持ってくれたら、
ぜひご地震でボブ・マーリーについて調べて頂ければ幸いです。

-------------------------------
Old pirates, yes, they rob I
昔、略奪者どもは俺を捕え
Sold I to the merchant ships
奴隷商人の船に売った
Minutes after they took I
そのすぐ後、奴らは
From the bottomless pit
地獄の底から俺を買い取った
--------------------------------
最初の歌詞では、奴隷商人に捕らえられ
売り払われてきた黒人の歴史が歌われています。

ここでの「I」はボブ・マーリー自身でもあり、
自分と同じく迫害されてきた「黒人全員」を表しています。
奴隷貿易が行われていた時代、
捕らえられた黒人たちは奴隷船内の、ほとんど
身動きの取れないスペースで、すし詰めにされた為、
1~2カ月の長い船旅の中で死んでしまう事もあったそうです。
ここの歌詞だけでも、そういった
残酷な当時の時代背景が思い浮かびます。

--------------------------------
But my hand was made strong
しかし、俺の手は強く作られている
By the hand of the Almighty
全知全能の神によってね
We forward in this generation Triumphantly
この時代を、胸を張って生きていく
--------------------------------
ここでは、そんな地獄の環境の中でも
「強く生きていくぞ!」
というメッセージが込められています。
恵まれた僕らとは比べ物にならないくらい差別や迫害を受けていたにも関わらず、
こんな力強いメッセージを歌えるなんて・・・・
当時のボブ・マーリーがいかに強い支持を集めていたかが
良くわかります。

僕は特定の宗教を信じているわけではありませんが、
「俺の手は神によって強く作られている」というフレーズは
純粋に格好良いし、勇気付けられます。「自分は一人じゃない」と思わせてくれます。
「Triumphantly」は、「誇らしげに」とか「得意気に」といった意味がありますが、
ここでは前後の歌詞の流れから「胸を張って」と訳しました。

さて、ここでサビに入ります。
--------------------------------
Won't you help to sing
一緒に歌ってくれないか?
These songs of freedom?
この自由の歌を
'Cause all I ever have
Redemption songs
Redemption songs
なぜなら、俺が今まで歌ってきたのはすべて
救済の歌だから
救済の歌だから
--------------------------------
ここで「These songs」「Redemption songs」と
単数形ではなく複数形になっている事に気付きます。
この「Redemption song」が収録されているのは、
ボブ・マーリー生前最後に発表された「UPRISING」です。
既に病魔におかされ、死期が迫っている事を知っていた彼は、
今までの自分の音楽すべてを総括する意味で、
この曲を作ったのではないでしょうか?

僕の解釈ですが、
「今まで自分が作った歌はすべて自由の歌、救済の歌なんだ。
 だから、俺が死んだ後でも俺の意志を継いで頑張ってくれ!」
という、彼からの最後のメッセージのように思います。

さて、次の歌詞では、彼の一貫した思想、熱いメッセージが込められています。
--------------------------------
Emancipate yourselves from mental slavery
精神的な奴隷の状態から 自分自身を解放するんだ
--------------------------------
精神的な奴隷の状態(mental slavery)とは、
聞いただけではあまりピンと来ないかもしれませんが、
社会に生きる中で、特定のルールや制度に縛られたり、
「こう思われたらどうしよう?」「どうせ自分には出来ない」
といったネガティブな感情によって、
「精神を拘束されている状態」と解釈するのはどうでしょう?

社会やネガティブなマインドこそが奴隷主であり、
それによって奴隷となっている状態から、自分を自由にするんだ、
と歌っています。

そして、そこに更に追い打ちをかける強烈なメッセージがやって来る!
---------------------------------
None but ourselves can free our minds
自分自身にしか、マインドを自由にすることはできない
----------------------------------
「free our minds」というフレーズは、同じような言葉が日本でも頻繁に使われますよね。
「マインドフリー」とか「人の顔を気にしない」とか
「魂を解き放つ」とか自分が一番納得できる言葉に置き換えてほしいです。

Emancipate yourselves from mental slavery
None but ourselves can free our minds
(精神的な奴隷の状態から 自分自身を解放するんだ)
(自分自身にしか、マインドを自由にすることはできない)

この2節こそ、彼が常に歌っていたメッセージなのだと思います。
それにしても「精神的奴隷」とは・・・
なんてパンチのある言葉なんでしょう!
この言葉により、なぜ彼が最初のフレーズとして、
自分の経験と異なる、過去の黒人奴隷の話を用いたが分かりますね。

僕がこの曲を初めて聴いたのは中学生の時。
初めて聴き、訳詞を読んだ時の感動と震えをまだ覚えています。
----------------------------------
Have no fear for atomic energy
原子力など恐れるな
'Cause none of them can stop the time
奴らに時間まで止めることはできない
----------------------------------
原子力という強大なエネルギーに対し、
不気味さや恐れを感じる人は多いと思います。
特に広島出身の僕としては原子爆弾(atomic bomb)のイメージもあり、
この一節はとても印象に残っています。
未知の強大なエネルギーに屈服してはいけない、といった所でしょうか。

----------------------------------
How long shall they kill our prophets
While we stand aside and look? Ooh
いつまで奴らが預言者を殺し続けるのを傍観しているんだ?
Some say it's just a part of it
それはほんの一部分だという奴もいるが
We've got to fullfil the book
俺たちはこの聖書を完成させなければならない
----------------------------------
この部分を訳すのは難しい部分です。
彼自身の真の意図がどこにあるのか・・・という話にもなるのですが、
僕なりに解釈してみました。

「見ているだけで行動しようとしない人」
「いつも他人のせいにしている人」
「何かに依存しないと生きられない人」
はいつの時代にも存在していると思いますが、そういった人たちに
「そんな生き方じゃダメだぜ!」と突き付けているように感じます。

一節目で「our prophets(僕たちの預言者)」という言葉が使われているので、
四節目の「book」を「聖書」と訳しました。「予言の書」でも良いかもしれませんね。
聖書には様々な教えが書かれていますが、
最終的に行動するのは自分自身なんだから
誰かに依存せず自分で考えろ!的な強烈なメッセージが読み取れます。

ただ「book」には色んな意味があるので、
それを、自分の人生が書かれた「台本」や「小説」「日記」
と考えても面白いですね。
いずれにしても「自分自身で自分の人生を完成させる」
という事ですね。

いかがでしたでしょうか?
この「Redemption song」は、彼の作品の中でも珍しく、
バンドサウンドではなく、アコースティックギター1本で歌われます
だからこそ、彼の作品の中でも異彩を放ち、メッセージがダイレクトに伝わります。
そこには何のギミックもテクノロジーもなく、
純粋な「音楽」があります。

ちなみに、あのスティーヴィー・ワンダー
この曲をカバーしております。こちらは打って変わって
力強いギターソロから始まり、スティーヴィ―の歌い上げも素晴らしいので、
こちらもぜひ聴いてみてください。

長い人生の中で、職場や学校、人間関係などで、
気付かないうちに委縮してしまう事もあると思います。
そんな「精神的な奴隷状態」から抜け出そう、と、
ボブ・マーリーは自分の人生の最後に歌ったのです。

失敗する事も、悩む事も、落ち込む事もあると思います。
そんな時、この「Redemption song」を聴いて、
少しでも気持ちが前に進む事を心から願っております。

《スターマン★アルチ筆》

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『スターマン★アルチ 』Presents『The Word ~ROCKの言霊~』 知らずに死ねるか!詞から紐解く名曲セレクション(1曲目)David Bowie『Changes』

2024-02-17 11:26:02 | 『スターマン★アルチ 』音楽コラム集

国内では震災に飛行機事故。海の向こうではアメリカがイエメンを空爆したりと
波乱の幕開けとなった2024年も既に一カ月以上経過!

ニュースを見ていると、今自分が何不自由なく生きている事が奇跡のように思える。
だからこそ、毎日感謝の気持ちを持って、有意義に大切に生きようと思うのですが、
日々の忙しさに流されて、気付けば時間だけが過ぎている・・・というのも事実なのです。

「ああ、もっと何か色んな事が出来るはずだ。何かを変えなきゃ」と、焦ることもありますが、そんな時、僕は一度立ち止まって、レコードに針を落とします。

このコーナーで最初に紹介する記念すべき1曲目は

デヴィッド・ボウイ『Changes』(1972年)

常に自己の表現として、時代に問題定義をし、文字通り「変化(Changes)」し続けた男、
デヴィッド・ボウイを象徴する名曲中の名曲です。

聴いた事がない人は、まず一度聴いてみてください。CDやレコードで聴ければベストですが、
Youtubeのデヴィッド・ボウイ公式チャンネルでも聴く事が出来ます。

終始躍動するリック・ウェイクマン(元Yes)のピアノプレイや、この曲が初めて収録されたオリジナルアルバム『ハンキードリー』!その中でも「私が愛聴する西ドイツ盤の音質の素晴らしさ!」等、サウンド面でも語りたい事が星の数程ありますが、ソコはグッと抑えましょう。

なぜなら当コーナーは、
「歌詞の面にスポットを当てる」
というコンセプトですので、
それは又の機会にいたします。

さて、それでは早速本題!
皆様が聞かれたと判断し進めます。緊張感のあるイントロから、
一瞬解き放たれたようにドラムのビートが止まり、デヴィッド・ボウイの歌が始まります。

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I Still don't know what I was waiting for
And my time was running wild
A million dead-end streets, and

今も分からない 何を待っているのか
時間は荒々しく走っていたが
行き止まりの道ばかり
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この曲を作った当時のデヴィッド・ボウイは24歳
デビュー後、幾つかのシングルヒットはあったものの、決定的な「大ヒット」のない少し停滞した時期でした。
そんな彼自身の、無駄に時間だけが過ぎていくことへの「焦り」が歌詞に込められています。「時間が荒々しく走る(Running wild)」「100万もの死んだような街(A million dead-end streets)」
という英語ならではの表現が、どこか切迫したストレートな感覚で聴き手に迫ってきます。
また、ここでの「dead-end streets」は英国人ならKinksの古い曲『Dead end street』を思い起こさせることでしょう。

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Every time I thought I'd got it made
It seemed the taste was not so sweet
So I turned myself to face me

いつも成功すると思っていたが
それほど甘くないようだ
だから自分を見つめ直したが

But I've never caught a glimpse
Of how the others must see the faker
I'm much too fast to take that test

僕は今も感じたことはない
人がペテン師を眺めるときの視線を
そのテストを受けるには、僕は敏速すぎる
------------------------------------
無駄に過ぎ去る時間の中で自分を見つめ直す主人公(ボウイ)
そこに対する焦燥感と周囲の人たちとの間隔のズレが歌われています。
ここで歌われている事は当時のデヴィッド・ボウイの心情そのものですが、
現代を生きる僕たちにも十分当てはまる内容だと思います。

ここでボウイは自分自身を鼓舞するように、
この曲で最も重要なメッセージを歌い上げます。それが次のサビです。

-------------------------------------
Ch-ch-ch-ch-changes (turn and face the strange)
Ch-ch-changes, don't wanna be a richer man
変化だ (向きなおれ 奇妙なものに目を向けろ)
無数の変化 (金持ちの男になりたがるな)

Ch-ch-ch-ch-changes (turn and face the strange)
Ch-ch-changes, just gonna have to be a different man
変化だ(向きなおれ 奇妙な物に目を向けろ)
無数の変化 (彼は別の男になるべきだ)
-------------------------------------
この歌詞がこの曲の決定打と言えるでしょう!

「奇妙なものに目を向けろ」
とは、そこだけを切り取っても今いちピンと来ないかもしれませんが、
私はこの「奇妙なもの」を「他の人と違うもの」と解釈します。
続く「金持ちの男になりたがるな」も同様に、他人の真似をしたり、価値観の中で生きるのではなく、
「自分自身のオリジナルの個性をでどんどんやっていこうぜ!」と言った意味合いに感じます。

ボウイ自身はミュージシャンですから、他人の真似をしたり、自分の音楽を殺してまで売れようとする事への問題定義のようですが、ミュージシャンでなくても、社会を生きる僕たちにも十分に当てはまる一節でしょう。

相手の顔色を窺ったり、人と違うことをするのを恐れて、委縮するなんて馬鹿らしいですからね。

そして、ここで、この曲の重要なフレーズが、突き放すように歌われます。
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Time may change me
But I can't trace time
Oh-yeah
時は僕を変えていく
でも僕は時間に足跡を残せない
-------------------------------------
この一節が加わる事で、今までの歌詞に一気に重みが加わります。
「自分を変えよう」という前向きなメッセージの中に、どこか銃口を突き付けられたような焦燥感があり、人生は決して楽観的なポップソングじゃないんだと気付かされます。
「人生と真剣に向き合う」というロックミュージックの存在意義を感じます。

-------------------------------------
I watch the ripples change their size
But never leave the stream 
of warm impermanence, and
さざ波の変化を観察する
形を変えても流れから離れる事はない

So the days float through my eyes
But still the days seem the same
穏やかな永遠の流れから日々は目の前を流れてく
けれどそれはまだ同じように見える

And these children that you spit on
As they try to change their worlds
君が鼻であしらう子ども達が
世界を変えようとする時

Are immune to your consultations
They're quite aware of what they're going through
彼らは君の慰めには耳を貸さない
通り過ぎていくことを彼らは完全に意識しているのだ
-------------------------------------
次の歌詞では、さらに「変化」に対する様々な例が組み込まれていきます。
「さざ波」や、「世界を変えようとする子ども達」のような多様さが、この曲に更なる深みを加えていきます。特に「子どもが君の慰めに耳を貸さない」という表現に、「年をとって下の世代と感覚がずれていく」という、誰しも感じる焦りや違和感が表現されており興味深い部分でしょう。

-------------------------------------
Ch-ch-ch-ch-changes (turn and face the strange)
Ch-ch-changes, don't tell them to grow up and out of it
変化だ(向きなおれ 奇妙な物に目を向けろ)
無数の変化 (成長して子どもから脱皮せよとは言うな)

Ch-ch-ch-ch-changes (turn and face the strange)
Ch-ch-changes, where's your shame?
You’ve left us up to our necks in it
変化だ(向きなおれ 奇妙な物に目を向けろ)
無数の変化 (恥ずかしくはないのかい?)
君は問題に首までつかったまま残されてるんだ

Time may change me
But you can't trace time
時は僕を変えていく
でも僕は時間に足跡を残せない
-------------------------------------
二回目のサビでは、さらに追い打ちをかけるメッセージが歌われます。
「成長して子どもから脱皮せよとは言うな」
ここでいう「子ども」はポジティブな表現だと思います。夢を捨てて「現実的で魅力のない大人」になってはいけない
という感じでしょうか。
「君は問題に首までつかったまま残されてるんだ」これこそもはや救いのない表現ですが、
無駄に抽象的で、ごまかしの多いポップソングが溢れる中、やはりこういったハードパンチなメッセージは大事なのだと思います。

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Strange fascination, fascinating me
Ah, changes are taking the pace I'm going through
奇妙な魅力は僕を虜にする
変化は通り抜けてきたスピードでやってくる
----------------------------------
流れるようなCメロから、最後の畳みかけるようなサビが始まります。

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Ch-ch-ch-ch-changes (turn and face the strange)
Ch-ch-changes, oh, look out you rock 'n rollers
変化だ(向きなおれ 奇妙な物に目を向けろ)
無数の変化 (君のロックンローラーたちをよく見ろよ)

Ch-ch-ch-ch-changes (turn and face the strange)
Ch-ch-changes, pretty soon now you're gonna get older
変化だ(向きなおれ 奇妙な物に目を向けろ)
無数の変化 (もうすぐ君も年を取る)

Time may change me
But I can't trace time
I said that time may change me
But I can't trace time
時は僕を変えていく
でも僕は時間に足跡を残せない
時は僕を変えていく
でも僕は時間に足跡を残せない

対訳★北沢杏里
------------------------------------------
最後まで「変化」という言葉が力強く歌われます。

ボウイ自身、この後『ジギースターダスト』という新たなキャラクターを生み出し、
名実共にロックスターに上り詰めるわけですが、この曲で歌われる「変化」する事の大切さを身を持って証明した形となるわけです。

『そこまで思い切った変化』を望むことは、我々にとっては中々難しいと思いますが、
たとえば、『毎朝3分だけ筋トレをする』とか、『職場の一駅前で降りて歩く』とか、
相手が言うのを待つのではなく『自分から元気に挨拶をする』とかちょっとだけ何かを変える事でも十分に意義があることでしょう。

でも何か新しい事を始めたり、今までの「当たり前」を変えるのて怖いですよね。
そんな時こそ『ロックミュージックを聴いてみる』というのはいかがでしょうか?

そこには、先人たちの『僕らに役立つ熱いメッセージ』が込められています。

多くの人にとって、
『ロックミュージックには人生を変える程のエネルギーはないのかもしれません。』
でも、
『悩んでいるあなたの肩を、ちょっとだけ一押しする事は出来る』
と私は確信しています!

「2024年は何かを変えよう!」
そんなあなたにこそ私は
『熱いメッセージが込められたデヴィッド・ボウイの「Changes」を推します!』
ぜひ通勤通学の前の時間に聴いて、自分を鼓舞して欲しい!
応援していますよ!

以上、スターマン☆アルチでした!

《スターマン★アルチ筆》

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『スターマン★アルチ 』Presents『The Word ~ROCKの言霊~』 聴かずに死ねるか!詞から紐解く名曲セレクション(序章)

2024-01-27 11:23:04 | 『スターマン★アルチ 』音楽コラム集

皆さん、明けましておめでとうございます。
そして、お久しぶりです!
『スターマン☆アルチ』です。

この度『編集長からの指令』を受け、
再び筆を取らせて頂く事となりました。
今度こそ末永く、よろしくお願い致します。

あれは、僕と「編集長MASH氏」が御用達の、
通称「高い店」(少し高価なチェーン店です)
にて
『大量のサラダバー』と『焼きたてパン』
を肴に、いつもの様に
『熱いロック談義』
を交わしていた大晦日のことです。
(※この場合のロックとは、基本的に洋楽の事です)

「ロックミュージックの歌詞」

「いかに自分達に影響を与えてきたことか!」
という話に及びました。

当然、僕も編集長も異なった人生を歩んでおりますが、
『その人生』の中で、
ロックのサウンドはもちろん、
『その歌詞によって人生を変えられたり、パワーを頂いている』
という点で共通していました。

そこで、ふと思ったのです。

「あれ?でもロックのサウンドに関する話はしても、その歌詞について深く話すことってあまり無いような・・・」

考えてみれば
『海外の文学は日本語に訳されて出版されている』
し、
『映画も字幕や吹替により、当たり前のように上映されている』
のが現状。

しかし
『海外の音楽』
はどうでしょう?

もちろんコアな本紙読者の皆様なら
『メチャクチャ好きな人』

『へヴィなマニア諸君』
も多くいることでしょう!

一方、一般社会で生活していますと
「歌詞の意味が分からないから聴かない」
という人にも、
残念ながら、たびたび遭遇してしまうのも事実。

そして『好んで聴いてはいる』ものの
メロディや声を楽しむだけで、
『へぇ~、この曲ってそんな内容だったんだぁ?』
と言われることもしばしば・・・。

そんなことを編集長と話していたら
「歌詞の内容まで注目する人は少ないのではないでしょうか?」
とツイ漏らしている自分が居たのです。

もちろん
「音を楽しむ」と書いて音楽なのですから、
一人一人、好きな聴き方をするべきでしょう。

ただ、せっかく数々のミュージシャンたちが
『魂を込めて作った音楽』
です。
「その歌詞を理解せずに聴くなんてもったいない!」
と僕は常々思って、ソレを口にしました。

すると編集長は
「そうなんだよ!プロミュージシャンでも多いんだけれど、音にしか注目せず、意味のある歌詞をスルーしている輩が実に多い!ケシカラン!ソレで行こう!」
と言い放ち
「ちょっと、膀胱に違和感が・・・」
とトイレへと立って行かれました。
彼は相変わらず元気です(苦笑)

ということで、このコーナーでは、
『洋楽ロックの素晴らしい歌詞』
にスポットを当て、皆さんが
『音楽を通して、毎日の生活を楽しむ』
そんなお手伝いをさせて頂ければと思います。

一つお断りしておきますが、
『英語を日本語に訳す、というコトは大変な作業です』
日本語同士でも言葉のやり取りにおいて、
すれ違いが生じることさえありますから、
翻訳の違い、解釈の違いがあって当然です。

「こう解釈しろ!」
なんて洗脳じみたことを書くつもりはありません。
相手の言葉を鵜呑みにする事自体、
もう『ロック』ではありませんからね。

『ロック』
とは、
『自分で生き方を決める事』
だと思っております。

あくまでも、
「こういう聴き方、解釈の仕方があります!」
という程度に捉えていただきたいです。

ちなみに僕自身も中学英語程度の理解力しかありませんので、
基本的には洋楽は、CDやレコードの日本語訳の歌詞を見ながら聴き、
そこでちょっと、気になったり、理解できないところに関して、原文を読んで
そのニュアンスを理解するようにしています。

『英語が理解できなかろうが、歌詞の意味すべてが分からなかろうが全然良い!』
のです。それでも十分感動できるのが
『洋楽ロックミュージックの世界』
だと思いますよ。

さて、そんなわけで、今後、
『洋楽ロックミュージックの素晴らしき世界』
を歌詞の面から紹介していきたいと思いますので、
何卒、ご愛読のほど宜しくお願いいたします!

《スターマン★アルチ筆》

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