「神は僕たちの苦しみを測る概念(コンセプト)だ」
と、ジョン・レノンはビートルズ解散後、
最初のアルバムである「ジョンの魂」に収録された
「神(GOD)」という曲で歌っている。
小学生の頃、初めて聴いた時から
今でも、僕に鮮烈な衝撃を与え続けるメッセージなのですが、
僕はふとこう思うのです。
「幸せを測るものはなんだろう?」と。
皆さんはどう思いますか?
何をもって自分が幸せだと認識するのか…
その基準みたいなものはあるのか。
これには人の数だけ様々な意見があると思いますが、
僕の結論としては
「自分が幸せかどうかは自分で決める」ということ。
これに尽きると思います。
よく「隣の芝生は青い」なんて言いますが、
これは他人と自分を比べて判断しているわけで、
もちろん、比較した上で、
「もっと(自分は)こんな人間になろう、
こんな人生にしよう」と努力するのでしたら良いのですが、
「あいつと比べて俺の人生なんて…」
とネガティブになるようでは意味がありません。
そして、そういう人達に限って、
謎の新興宗教だったり、うさんくさいセミナーだったり、
ろくな社会貢献もしていない
「なんちゃってフリーランス」達(もちろんそうでない方もたくさんいらっしゃいますが)に
「あなた、それで幸せなの??」と言い寄られて
足をすくわれ、
自分のテリトリーに誘い込まれたりするのです。
とにかく僕は昔からそういう人たちが大嫌いで、
「うるせえ!俺が幸せかどうかは俺が決めるんだよ!」
と言って顔面に一発お見舞いしたくなる。(笑)
やっぱり、自分自身のしっかりとした
「幸せの物差し」が無いと駄目なんだと思うんです。
もちろんそれは、経験を重ねるごとに変化していくものだとも思う。
なぜこんなことを言うかと言うと、
今回紹介する、アメリカのシンガーソングライター
「ボブ・シーガー」、彼の人生と言うか
生き様を見ていると、強くそう感じるのです。
御年74歳。ベテランの域を超え、
「大」ベテランと言って良い彼ですが、
1965年にデビューしてから永く陽の目を浴びず、
地元ミシガンでクラブやらバーで演奏をし続けていたそうです。
その長い下積みの末、
1976年にシルバーバレットバンドと組んでリリースした
「Night Moves」が全米チャート8位まで上昇。
1980年リリースの「Against the Wind」
(風に立ち向かう馬のジャケットのヤツです。良いですねえ~)
では、悲願の1位、しかも六週間に渡りその座を独占し続ける、
超の付く大ヒットを記録し、押しも押されるスーパースターの仲間入りをしたのです。
この時は既に35歳。
たとえば、同じアメリカを代表するロックンローラーである
ブルース・スプリングスティーンや
ジョン・メレンキャンプと比べても、随分と遅咲きなイメージがある。
当然、周りからは
「いつまでそんなことをやってるんだ!」
「そろそろ、まともな職に就いたらどうだ?」
なんて言われたりしたでしょう。
実際、ボブ・シーガー自身、
「自分より年下のバンドの前座を演って、
そして彼らがどんどんビッグになっていくのは辛かった」
と語っていました。
ここで今回の盤の話をしましょう。
ボブ・シーガーの成功のきっかけとなった
1976年のアルバム「Night moves」のタイトル曲である
「Night moves」と「Ship of Fools」のカップリング。
正直、これ以前の彼の作品と比べて、
とくに音楽性に変化があったような感じはなく、
「なんでこれがいきなり売れたんだろう?」
と思うような、非常にシンプルで渋く土臭いアメリカンロックと言えます。
やはり「継続は力なり」ということでしょうか。
ようやく陽の目を浴びた彼のボーカルには、
ぶれない力強さを感じます。
当時の評価がどうかはわかりませんが、
日本での人気がいまいちパッとしないのは、
この渋さというか、音楽的な地味さと、
「カントリーミュージック的」な部分にあると思うのですが、
「しっかり抑えられたルーツ寄りの演奏」は、
今こそあえて聴いて欲しい!と思うのです。
ちなみに鍵盤はオルガンとピアノの2人編成。
この辺りブルース・スプリングスティーン&Eストリートバンドに共通していて良いですね。
B面「Ship of Fools」も、同様のミディアムテンポのナンバーで、さらにカントリー色が強く、
と言うか同時期のカントリーミュージックてこんな感じだろうな、と思うぐらい全編にわたり美しいスティールギターが響き渡る1曲。
目を閉じるとアメリカの草原が浮かぶような、
全ての楽器がシンプルながら溶け合った統一感があります。
大ヒットしてからの彼は、だんだんギターもボーカルもハードでラウドになって行き、もうスピーカーごしに彼の汗が飛び散ってきそうな迫力があるのですが、僕自身としては、アコースティックギターを基調としたこの時期の方が断然好みです。
さてさて、話を最初に戻しましょう。
「幸せの物差し」についてですが、
アメリカの有名なジャーナリストであり、コラムニストである「ボブ・グリーン」氏が、1980年、それこそスーパースターの仲間入りを果たした人気絶頂のボブ・シーガーにインタビューした際、こんな質問をしたのです。
「15年かけてようやくビッグになった今、あなたにとって、永い間執拗に追い求めてきたこの夢は、
想像通りの心地よい(Sweet)なものでしたか?」
すると彼はこう答えました。
「そりゃそうさ、最高だよ」
ここまでの話だと、よくあるスーパースターのサクセスストーリーです。
ただ、この話には続きがあります。
その後、インタビューを終え、
ライブが終わり人がいなくなったアリーナを出口に向かって歩いていたら、ふとボブ・シーが―が立ち止まりこう言ったそうです。
「いや、さっきのは本心じゃない。
実際は考えていた程良いもんじゃなかった。
こんなもんだとは思っていなかった。そんな気がするよ」
いかがでしょうか?
この彼の言葉で何を感じるかは人それぞれあると思います。
もちろん彼自身、成功を手にすることが無ければ
いつまでも夢を追い続けていたかもしれませんので、成功しなければ分からないことでしょう。
ただ、結局どんな成功をした人でも
夢を叶えた人でも、それが幸せかどうかなんて
本人にしか分からないのです。
だからこそ、
人生は「他人と比べてどうか」でなく、
「自分との戦い」なのだと思うのです。
どんな時でもぶれない自分の価値観というか
アイデンティティを持つこと。
まさに、ボブ・シーガーが歌う
「Against the wind(風に立ち向かう)」です。
それは僕がロック・ミュージックから教わったことであり、今もなお、音楽を聴き、演奏し続ける理由でもあるのです。
これを読んでいるあなたが、
もし「何か」を見つけられていないのでしたら、
ロック・ミュージックが、そのきっかけになれば良いなー!なんて思います。
まずはボブ・シーガーから初めてみるのも良いでしょう!
ちなみに、今回紹介したボブ・グリーンによるコラムは、「アメリカン・ビート2」という本に掲載されています。
こちらもぜひ併せてご覧くださいませ!
また僕が出演し熱く語った書評番組をぜひご覧になって下さい!
チェックです!
(企画・編集・校正・加筆リライト「Mash」)
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「マッシュルームハイ」の現メンバー
ドラム、キーボード、広報担当。
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「ハウリンメガネ」
「ジョーカーウーマン」
と共に、音楽専門ライター陣
「ロック・マニアックス」
を2019年新規結成
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