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ハウリンメガネの『スーパーギタリスト列伝』(三人目)「ジョン・レノン」(ジョンから学ぶギターのイロハ!)

2022-01-08 14:32:07 | 『ハウリンメガネ』コラム集

読者諸賢、お待たせ。ハウリンメガネである。
筆者が「クリムゾンの来日公演レポート↓」を優先したため

https://blog.goo.ne.jp/12mash/e/da7d09050a49e6e18f981ed2b0fbeb7d

一月遅れとなったが、今回は「スーパーギタリスト列伝・第3回」である。

第一回はSRV

https://blog.goo.ne.jp/12mash/e/47543d07ea0fe4e414fdf8b3058db747

前回はチャック・ベリー

https://blog.goo.ne.jp/12mash/e/6d0c1d7a111e8f9c1a1a02063cc177fd

そしてチャック・ベリーに影響されたスーパーギタリストといえば……
ジョン・レノン!

(ジョンはベリーからの影響を公言して憚らなかったギタリストであります)

……いま
「ジョンは"スーパー"ってほどのギタリストじゃないだろう」
という顔をしたあなた、そう、アンタのことだよお客さァァァん!
「ギタリスト、ジョン・レノン」をナメちゃいけない。
リードプレイやギターソロで輝くプレイヤーばかりが
「スーパーギタリスト」ではない。

「僕はテクニック的に上手いギタリストではないけど、バンドをドライヴさせることにかけては一流なのさ」

とはジョン本人の言だが、
この言葉こそがジョンがスーパーなギタリストであることを示している。
そう、ジョンはバンドをドライヴさせるギターを弾かせれば天下一品なのである。

ギターの最重要な仕事はリズムギターだ。
ドラムのリズムを強化し、時には変化をつけ、
ベースと協調してコードで楽曲を彩っていく

(特にピアノがいない場合はギターがコードを一手に担うため、リズムギターがなければ楽曲自体が成立しない)

ジョンはこのリズムギターが抜群に上手い。
「I saw her standing there」や「A Hard day's night」の
キレッキレなチャック・ベリー直系のバッキング、
「Taxman」のベースとのコンビネーションと間を活かしたプレイ、
「Any time at all」でのソリッドなアコギなど、
言葉通りにバンドをドライヴさせる
「ジョンのリズムギターなくしてビートルズなし」
といえるリズムギターがわんさか聴こえてくる。

このリズムプレイにおいて重要なのがジョンのピッキングフォーム

ジョンは右肘がボディエンドに触れる高い位置で抱え込むようにギターを持ち、
肘は固定した状態で、手首の最小限のスナッピングで弾いているのだが、
これがとても重要なのだ。

ギターというのは力いっぱいピッキングするといい音が出ない!

(アタックが強すぎるとピッキングノイズの強い、ガチャガチャした音になってしまう)

むしろ力は可能な限り抜き、軽やかに弾くのがいい音を出すコツなのだが、
ジョンのフォームであれば、肘と手首の位置を固定することで
手を振り下ろすことがなく、手首のスナップで弾くので力も最小限になる。
とても理に適ったフォームなのだ!

(また、このフォームでコツを理解すれば低い位置でギターを構えても無駄な力を入れずに弾けるようになる)

バンドをドライヴさせるスーパーリズムギタリスト、
それがジョン・レノンだ!……と、話を〆てしまいそうになるが、
これだけではキース(・リチャーズ)やピート・タウンゼントと
なにが違うのかという話になってしまう。
もう一つのジョンのスーパーな点、そしてキースやピートとの最大の違い、
それがジョンのコードボイシングだ。

例えばローポジションでC コードを弾く時、
一般的なフォームはこうだ。
(写真)

だが、ジョンはこう押さえる。
(写真)

C コードの構成音はC(ルート)、E(3度)、G(5度)で、
一般的なフォームであれば5弦から1弦へ順に
CEGCE、ルート、3度、5度、1度、3度となる(6弦はミュート)。
だがジョンの押さえ方だと、ECEGCGとなり、3度がボトムに、5度がトップにくる。
つまり、C/Eのオンコードかつ、最高音がGとなるわけだ。


同じC コードでも音の並びが変わるだけで響きは大きく変わる。
そして、ジョンはこの音の並びが独特で、
これがジョンのバッキングのカラフルさに繋っているのだ。 
この独特なボイシング、ジョンはどうやって身につけたのか。

無論、彼の才能と努力もあるし、ポール、ジョージという
スーパーギタリストと切磋琢磨したことは大きな要素だろう。
だがもう一点、重要なポイントがあると筆者は推測する。
それは彼がギターを始める前、実母のジュリアから教わったと言われる
バンジョーの影響である。

5弦バンジョーは一般的には5弦から1弦へGDGBDとチューニングする

(ギターのオープンGチューニングと同じ並び。他にも4弦のテナーバンジョーではCGDAの5度チューニングが一般的らしい。そういえばフリップ先生提唱のニュースタンダードチューニングはCGDAEGでこれも5度チューニング(1弦だけ短3度だが)。閑話休題)。

ジョンとポールがつるみだした頃、
ジョンがギターをバンジョー同様のチューニングで調律し、
バンジョーのコードで弾いていたのは有名な話だが、
ジョンの独特なコードフォームはこのバンジョーのチューニングから来ているので
はないか?

やった人ならわかると思うが、オープンチューニングというのは
レギュラーチューニングとは異なる独特の響きがある。
先に述べたように同じコードでも音の配列が異なるからだ。
耳の良いジョンが

「このコードはギターのフォームより、バンジョーのフォームで弾いた響きの方がクールだ」

と考えてもおかしくない。

チャック・ベリー直系の右手とバンジョー経由の左手が
ジョンのギタリストとしての特異さだ。
そしてその二つがジョンという才能の中で結びつき、
ポール、ジョージ、リンゴという才能たちと合わさった結果が
ビートルズをドライヴさせ、楽曲をカラフルに彩った!
そんなジョンのリズムギターである!

ほ・ら!
やっぱりジョンは"スーパー"なギタリストでしょう!

前回のチャック・ベリーもそうだったけど、
ソリストばかりがスーパーギタリストじゃないんですよぉお客さァァァん!

この「スーパーギタリスト列伝」では
今後も様々な角度での"スーパー"なギタリストについて書いていくので
そのあたり、御承知の上でよろしく申し上げる!

ではまた次回!ハウリンメガネでした!

《 ハウリンメガネ筆 》