「Jerry's Mash」のアナログ人で悪いか! ~夕刊 ハード・パンチBLUES~

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『スターマン★アルチ 』訳『The Word/ROCKの言霊』 知らずに死ねるか!詞から紐解く名曲の数々 (4曲目) バリー・マニロウ『Copacabana』

2024-07-28 09:56:01 | 『スターマン★アルチ 』Presents『The Word ~ROCKの言霊~』

連日ニュースで「酷暑だ!」「危険だ!」「外で運動するな!」「冷房を付けろ!」と報道されると、なんだか必要以上に暑さを感じ冷房に慣れてしまって、本来大丈夫だったはずの気温でも冷房に頼り、その結果、暑さに極端に弱い身体になってしまう・・・みたいな事にはならないのだろうか?と危機感を覚えます。もちろん熱中症は危険です!特に子どもは、大人より体力や免疫も無い状態ですし、身長も低いので地面からの太陽光の照り返しをダイレクトに受けてしまう!気を付けなければいけないのはもちろんなのですが、そもそも夏は暑いものだから、全てを冷房に頼り切るのではなく、ある程度、暑さに耐えられるような身体作りも必要ではないか・・・そんな事を考えながら、先ほど、35℃の炎天下の中、30分のランニングを終え、戻ってきたところです。いや~スポーツドリンクとプロテインが格別においしい!

さて、今日はそんな暑い夏にぴったりな歌をご紹介します。バリー・マニロウが1978年に発表した『Copacabana』です。CMでも取り上げられており、聞き覚えのある人も多いはず!このバリー・マニロウは1943年生まれ現在御年81歳!デビューほど遅いのですが、実はあのポール・マッカートニーと一歳違いなんですね。彼は、ジャンル的には、フランク・シナトラの系統を継ぐアメリカの正統派のシンガーなのですが、もともとは音楽プロデューサーやベット・ミドラーの編曲やピアニストを手掛けていた裏方で、そんな経歴からアメリカを代表するエンターテイナーへと上り詰めた・・・なかなか希有な存在なのです。そして何より素晴らしいのは2024年の現在も!精力的に活動を続けており、当時とほとんど変わらぬ髪型、体型を維持していることです。ポール・マッカートニーやミック・ジャガー、ボブ・ディランもそうですが、この人も「圧倒的な本物」だと思います。

さて、前置きが長くなりましたが、とりあえす聴いてみてください!ぜひレコードやCDで聴いてほしいですが、Youtubeのバリー・マニロウ公式チャンネルでも聴く事が出来ます。間違えて西城秀樹のカバーバージョンを聴かないように!
・・・・・・いかがでしたでしょうか。コパカバーナとはブラジルのリオデジャネイロにあるビーチの名前なのですが、正にそんな真夏のトロピカルビーチを彷彿させるラテンサウンド!僕は中学生の時、初めて聴きましたが、「そのコパカバーナビーチにまつわる、男女のラヴソングなんだろうな~」と軽い気持ちで聴いていました。その本来の歌詞に気付くことなく、十年程の月日が流れた頃、編集長「Mash氏」とこの曲の話となり、「実は歌詞が凄いよな!」と氏に言われ「えっ?」と言葉を失う僕。その頃の僕と言えば、バリー・マニロウのCDやレコードをコンプリートし、ボックスセットにも手を出す程のバリー好きを公言していたのですが、コパカバーナは彼の作品の中でも『ヒット狙いの軽いヒット曲』というイメージで、他愛のないラヴソングだと思っていました。その時はつい「歌詞がいいですよね~」と何となくごまかし、慌てて家に帰り歌詞を確認!すると、曲調とまったく異なる歌詞と世界観にゾッとし「そういうことだったのか~」と衝撃を受けました。この記事を書きながら当時の事を思い出しますが、やっぱり人間、知らない事ははっきり「知らない」と言える強さも大切ですよね(笑)。特に誰もが簡単に情報を手に入れることが出来る今『知ったつもり』になっているのって怖いモンですよ。
さて、前置きが長くなりましたが、この曲の歌詞を紹介していきます!

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Her name was Lola
She was a showgirl
With yellow feathers in her hair
And a dress cut down to lay
She would merengue
And do the cha-cha
And while she tried to be a star

彼女の名前はローラ、ショーガールだった
髪に黄金の羽根飾りを付け、
短くカットしたドレスを身に付けている
彼女はメレンゲやチャチャを踊る
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なるほど、まず最初はこの曲のヒロインの描写から来た!
ダンスが得意なラテン系美人か。と小説を読む時のように頭の中で、
会った事のない『ローラ』のイメージを作り上げる僕
ふと『レイ・デイヴィス』が思い浮かぶのも計算された歌詞だろう。

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And while she tried to be a star
Tony always tended bar
Across the crowded floor
They worked from eight 'til four
They were young and they had each other
Who could ask for more?

彼女がスターになろうと頑張る傍ら、
トニーはいつも、混み合うバーで接客をしていた
彼らは8時から4時まで働いた
彼らはお互い若く、心が通い合っていた
これ以上聞く事があるかい?
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ここでお相手の男「トニー」が登場!『彼らは~働いた』の歌詞で彼らが同じバーで働いているという事が分かります。最後の「Who could ask for more(これ以上聞く事があるかい?)」の表現が何ともアメリカ人的なセンスを感じて良い。この記事を書くにあたり、幾つかのサイトに載っている訳詞を読んだのですが、「それ以上何を望む」とか「これ以上、何も聞かなくても分かるだろ?」のような訳もありました。ここからサビ!「どうせ『コパカバーナ』という二人が働いているバーで愛を育む歌詞なんだろ。下らねえな~」と思いながら訳詞を読む進めた僕。
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At the Copa (Copa), Copacabana (Copacabana)
The hottest spot north of Havana
At the Copa (Copa), Copacabana
Music and passion were always the fashion at the Copa
They fell in love (Copa, Copacabana)

それはコパカバーナでの物語
北ハバナで一番ホットな場所さ
それはコパカバーナでの物語
音楽と情熱がいつも最先端
それがコパカバーナ
彼らは恋に落ちる・・・・・・
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ああ、やっぱりそうでした。『コパカバーナ』は地名ではなく、二人が働くバーの店名である事を明かしつつ、曲の世界感を紹介する手法ですね。今までの展開で言えば、内容的に特に驚きはないのですが、ここで僕が注目したいのが、英語ならではのリズム感というか語感ですね。『コパカバーナ』と『ノースハバナ』、『パッション』と『ファッション』このさり気なく韻を踏む言葉選びのセンスが、この曲が今でも語り継がれる一つの要因なんだなと改めて思います。さて、ある意味予想通り「ローラ」「トニー」の物語かと思ったところへ、次のヴァースに入ります。
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His is name was Rico
He wore a diamond
He was escorted to his chair
He saw Lola dancing there
And when she finished, he called her over
But Rico went a bit too far
Tony sailed across the bar
And then the punches flew
And chairs were smashed in two

彼の名前はリコ
ダイアモンドを身に付けている
席に案内されると、踊っているローラに釘付けになった
ダンスが終わり、リコはローラを呼び寄せた
でもリコは調子に乗り過ぎたんだ
トニーはバーカウンターを飛び出し
いくつかのパンチが飛び交い
イスは真っ二つ
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なるほど、バーで一人の女性を巡った喧嘩か。ありがちなラブソングかと思いきや、予想外に血の気の多い歌詞じゃないか!と感心していたところで、次の衝撃展開。
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There was blood and a single gunshot
But just who shot who?

At the Copa (Copa), Copacabana (Copacabana)
The hottest spot north of Havana
At the Copa (Copa), Copacabana
Music and passion were always the fashion at the Copa
She lost her love

辺りには血が飛び散り、一発の銃声が鳴り響く
でも誰が、誰を撃ったんだろうか?
それはコパカバーナでの物語
北ハバナで一番ホットな場所さ
それはコパカバーナでの物語
音楽と情熱がいつも最先端
それがコパカバーナ
ローラは最愛の人を失った・・・
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えっ!?最愛の人って、「トニー」撃ち殺されたの?なんということだ!ただの殴り合いならまだしも!この急展開。これがさらっと爽やかなラテンビートで歌われるのだから、いかに洋楽の歌詞が大事なのか!が良くわかります。歌詞の内容から作曲したら、マイナー調の引きずるような曲になりそうなもんです。最愛の恋人を失った「ローラ」のエピソードとしてこの曲を終わらせる事が出来たでしょう。ですが、次の歌詞が加わることで、更に「重さ」と「悲劇さ」が加えられます。
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Her name is Lola
She was a showgirl
But that was 30 years ago
When they used to have a show
Now it's a disco, but not for Lola
Still in the dress she used to wear
Faded feathers in her hair

She sits there so refined
And drinks herself half-blind
She lost her youth, and she lost her Tony
Now she's lost her mind

At the Copa (Copa), Copacabana (Copacabana)
The hottest spot north of Havana (here)
At the Copa (Copa), Copacabana
Music and passion were always the fashion at the Copa
Don't fall in love (Copa)


彼女の名前はローラ、ショーガールだった
でも、それは30年も前のこと
あの頃はまだショウが行われていたけれど、
今はディスコにその座を奪われ、彼女に出る幕はない
それでも彼女はドレスを身にまとい
髪には色あせた羽根飾り

彼女は上品に座り、酒を飲んで朦朧としている
彼女は若さを失い、そして恋人を失った
そして、ついには心も失ってしまった

それはコパカバーナでの物語
音楽と情熱がいつも最先端
それがコパカバーナ
コパカバーナでは恋に落ちてはいけない
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「おお~!Mash氏が言っていた歌詞の凄みとは、そういうことか!」つまりは、最愛の「トニー」を失った後、あの頃と同じドレス、髪飾りで着飾り、きらびやかな過去にしがみつき、酒におぼれ、最終的に精神を病んでしまった「ローラ」の姿が描かれています。そこで最後、「コパカバーナでは恋に落ちてはいけない」というナレーション風のエンディングで締める。アレンジやメロディを聴いただけだと、非常に美しいラテン調のポップソングですが、歌詞を見るとどうでしょう?一気にこの曲の印象が変わります。シリアスな歌詞をポップなビートやメロディに乗せるという手法は、世界中どこでも使われていますが、この曲はその最たる例というか、もっとも分かりやすい「裏切り」を表現しています。だからこそ、洋楽は「歌詞を読んでほしい」と心から感じるのです。

さて、ロックミュージックというのは(バリー・マニロウをロックというかはともかく)多かれ少なかれ「作者からリスナーへのメッセージが込められている」と僕は思っています。この曲を、単なるローラの悲恋の物語として片付ける人もいると思いますが、僕はこの曲に「ローラのようになってはいけない」つまり「過去の栄光にしがみついてはいけない」というメッセージを見出すのです。あなたの周りにもいませんか?事あるごとに「あの頃はよかった」「あの頃の自分は輝いていた」と昔話をする人。思い出は大事かもしれませんが、それで人生が停滞していてはお話になりません。「過去にしがみつくな!」。そんなメッセージを見出すとコレは単なるラテン調ポップソングでも、ローラの悲劇の物語でもなく、ハードパンチなメッセージソングに生まれ変わるのです。そのメッセージをキャッチするかは自分次第。ですが、ロック・ミュージックにはそんな素晴らしいメッセージがたくさんあります。これからも、そんなロックの歌詞の世界を皆さんに紹介していければと思います。では、今日はこの辺で。ありがとうございました!

《スターマン★アルチ筆》

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