《ハウリンメガネ》
長くなってまいりました。
「イーノで紐解くロックの歴史」。
{ 編集長「Mash」}
当然そうなってくるな!
《ハウリンメガネ》
イーノの影響源ということで前回までは
「ベルベッツと彼らのソロ以降の作品」
をピックアップしましたが、次はどの辺ですかね?
{編集長}
そりゃぁボウイだろ!ボウイ!
《ハウリンメガネ》
はいはい、やっぱりそこですよね。
だってイーノのキャリアとボウイは切り離せないもの。
{編集長}
初期のボウイはガレージとの流れもあるしな。
実は彼って遅咲きだけれど
「60年代ブリティッシュRock」に
実はちゃ~んと身を置いていた!
そんな人間なんだよね。
《ハウリンメガネ》
ボウイの話になると、私としましては
フリップ先生が絡むので
「ベルリン三部作」の話になりがちなんですが、
そもそもイーノのキャリアの始まりでもある
「ロキシー・ミュージック」のデビューが
ジギー期のボウイと同時代なんですよね。
サポート・アクトとしてツアーも一緒に周っていたり、
そのおかげもあって「ロキシーもグラムロック」
として扱われたわけですが。
{編集長}
その通り!
しかも初期ロキシーはイーノのバンドだったわけでさぁ。
《ハウリンメガネ》
リアルタイムに間近にいたわけですから
当然影響も受けていると思いますけど、
そもそもボウイってキャリアを見渡すと
まあ遍歴が激しいですよね。
「ジギー」もあれば「レッツダンス」みたいな事もやり、
「ベルリン三部作」「ティンマシーン」
最後の「ブラックスター」に至るまで、まあ幅広いこと。
{編集長}
この対談の前に実は一通りボウイを聴き直してみたんだ。
《ハウリンメガネ》
ほほう・・・
ある意味ニール・ヤングみたいな人ですよね。
その時々でやりたい音をやるという。
ルックスは真逆だけど(笑)。
{編集長}
うむ。確かに君が言うように
「一見、色々代わる代わるの人」
それこそ「チェンジス人間」と思いきや、
よく聴いていくと「筋は同じ」でね。
常にどの作品にも「ボウイ印」が押された
それこそ「渋いアートな仕上がり」をしていて
どれもこれも素晴らしいんだよ。
もちろんニール・ヤングも
そういう「一貫性」って所、やっぱり有るじゃぁ無い?
《ハウリンメガネ》
なるほど。1枚1枚サウンドが変わっているようですが
実は内面の部分、核の部分は確かに同じですね!
で、そんなボウイなんですが、
前述の通りイーノとは長い付き合いですから
お互いに直接のコミュニケーションで影響しあっていたのは
もちろん大前提として、
イーノに特に影響した作品ってなんでしょう?
{編集長}
君はなんだと思う?
《ハウリンメガネ》
うーん……
やっぱり「スペース・オディティ」かなぁ。
特にA面。
{編集長}
一般的に言えばボウイの1st作と言ってもいいくらいだね。
アレで認知されたわけだし、宇宙的イメージも壮大だ!
《ハウリンメガネ》
あれ、実は変な音ですよね?
ボウイの歌がいいからスルッと聴けちゃうけど、
よくよく聴くとベースがパルス的に脈打ってたり、
ギターのリズムが変だったり、
ドラムのスネアのフィルだけ強くミックスしてたり……
なんかイーノっぽいんですよ(笑)。
{編集長}
イーノっぽいと言うよりも、
ボウイの「宇宙的イメージ」がそうさせたんじゃない?
時代も月面着陸だし、彼はそれまでの「黒い音」や
「モッズ・サウンド」を捨てて、全てを注ぎ込んだ結果、
思いもよらぬフォーキーでスペーシーな名作になった・・・・
そんな感じだと思うよ。
《ハウリンメガネ》
グラムロックってT.Rexもそうだけど、
時代的にはもろにサイケの直後じゃないですか。
ボウイの中でも「スペース〜」と「世界を売った男」辺りは
特にサイケの気配がプンプン匂いますよね。
このサイケ直後の時代サウンドがイーノの根っこにあると思うなぁ。
{編集長}
サイケって結局アメリカで長く続いていたんだよね。
イギリスでは68年くらいから徐々に「ヘヴィ・ロック」が出るでしょ?
先日しりとりで君の書いたレッド・ツェッペリンにしろ、
それこそ君の大師匠率いるキング・クリムゾンにしろ・・・
全部あの時代で言えば「ヘヴィ・ロック」なんだよね。
まあ当時の様に「アート・ロック」と呼んでもいいけれど。(笑)
《ハウリンメガネ》
アメリカではもう少しサイケが続くと?
{編集長}
簡単に言えばそーいうコト。
結局アメリカってルーツ音楽の焼き直しなんだよ!
そこに「深いリバーブ」や「謎のエコー」!
「ソウルフルな歌に奇抜なギター!」
「ブルースやカントリーを軸にジャムる!」
これがアメリカン・サイケ(笑)!
そんな風にサイケ的に料理していく時代が
72~73年くらいまで続いていくんだよね。
もちろんデッドは永遠と続くわけだけれど(笑)
《ハウリンメガネ》
なるほど(笑)!
ボウイって前回出したケイル以上にアート畑の人ですしね!
もともとパントマイムかなんかやってたんでしたっけ?
{編集長}
音楽やってた人がチベット仏教とパントマイムに移行し
また音楽業界に戻って来て「スペース~」を出した!
なんか名作が出来た過程が分かる気がするでしょ?
《ハウリンメガネ》
そういうところから
「ジギー」とか「アラジンセイン」みたいに
音もビジュアルも全部使って一つの作品を表現する!
って壮大なコンセプトに行った訳でしょ?
ボウイがイーノに与えた影響って音的なもの以上に
その思想のほうが大きいと思うなぁ。
「音楽を表現する」だけじゃなくて、
「音楽を通して別の何かも表現する、
もしくは音楽と無関係の要素を音楽につなげる」っていう。
そう考えるとあの人の今の多岐にわたる活動の意図がちょっとわかる。
{編集長}
ボウイだけじゃなくてさ、その先陣には
ビートルズの「マジカル・ミステリーツアー」や
当時お蔵入りになるストーンズの「R&Rサーカス」
もっと言うと「ワン・プラス・ワン」
挙句の果ての「コック・サッカー・ブルース」
なんかもビジュアルへの大きなチャレンジであったわけ!
《ハウリンメガネ》
色々と混ざり合って・・・ホント面白い関係ですよね。
やっぱりボウイがミュージシャンというよりも
「トータル・アーティスト」だったからこそ
自称ノン・ミュージシャンのイーノと波長があったのかしらん?
{編集長}
ボウイもイーノもヴェルベッツに喰らいながら、
同じ英国のビートルズやストーンズにも当然喰らっていてね。
その中でボウイはミックのスタイルを取り入れるのよね。
ファッション性も含め「セクシャル・ボーダーレス」にしてさ!
で、イーノはソコにヒントを得て・・・・って具合。
《ハウリンメガネ》
うーむ。
脈々と続いていく「ブリティッシュRock」ってとこですかね!
{編集長}
確かにそうで、しかも彼らは
「自分たちは第2波」と分かっていたと思うんだよ。
実際、ビートルズはもう世界中で人気なワケでさぁ。
ストーンズだってアメリカで頑張り出して、フーも続いて・・・
そんな中、イギリスで出て来たツェッペリンやクリムゾンが
ワイワイとやりだし、「おお!今がチャンスだぞ!」って勢い(笑)。
《ハウリンメガネ》
狙い目だったわけですかね?
{編集長}
まあ、コレ言っちゃあ、実もフタもないけれど
「ビートルズの活動停止」に伴って皮肉にも
一気に「ブリティッシュRock」が70年代に花開くのさ。
ある意味「開放的」になったんだよね。
天井がなくなり、空が見え、自由度が増した・・・
ってコトでしょう。
この流れが「ブリティッシュ・パンク」までをも生み出しちゃう。
ハチャメチャだがね(笑)。
《ハウリンメガネ》
いやー、深い!ボウイの話でさえ
まだ「ベルリン」にも行きつけてないですよ・・・。
こりゃ次回もボウイですね。年またぎだなこりゃ。
{編集長}
思うんだが・・・・
イーノ云々じゃなく、この対談内容は
「完全にマニアなロック史」だな(笑)!
まあ、それもイイでしょう。
サイケもプログレもガンガンと
深~く、ヤッテやろうじゃない!
次回も乞うご期待だ!
<続>