渡辺一男さん訳の「老王の家」を読む。
ウイーン在住のアルノ・ガイガーさんの実体験から生まれた本。
息子による、アルツハイマーの父の人生への敬意と再発見を描いている。
「父が私の世界にやってくることは出来ないから、私の方が父の所へ出向く」
という筆者と父親の会話のすばらしさ。
認知症で失われるものはあっても、基本的な人間性はかわらない。
介護の苦労だけの話ではないので現在同じような状況の人にも
希望を与える本だと思った。
今、「はだしのゲン」が子どもにとってショッキングな表現なので
子どもの目に触れないようにすると言うようなことが言われ始め、
なんだそれは!と思う。
子どもの頃読んで、原子爆弾の恐ろしさ、戦争のおろかしさを感じた本なので、
作者が亡くなり、遺言のような本をどうして今更と不信感をもった。
中沢啓二さんはご自分の体験を抑えて表現しているのに・・と。