三浦俊彦@goo@anthropicworld

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オトイアワセ:
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2007/11/19

2000-03-10 00:39:59 | 映示作品データ
■オテサーネク Otesanek(チェコ、2000年) の続き。

 後半は、オティークを守る役割がホラーク夫妻からアルジュビェトカに移る。
 ラストが「民話どおりで拍子抜け」という感想がいくつかあったが、確かに、ハリウッド的な劇的展開やドンデン返しはない。しかし、ラストは最後まで映していないので、本当に民話どおりになったという保証はない。管理人のおばあさんはクワでオティークをすんなり殺せたのか、絵本を読んでその通りになると思い込んだのはお婆さんやアルジュビェトカの勘違いで、実はオティークはますます凶暴になって管理人も殺してしまったのではないか、といった仄かな予感は宙吊りにされたままである。
 細部が異様に生きていたことにも注目。あとでオティークの命取りとなるキャベツ畑のシーンでいつも低音で予兆的BGMが流れていたり、アルジュビェトカがオティークのエサをクジで決めるときに真っ先に自分の両親を入れていたり、クジで当たった人がちょうど地下室に降りてきたり、「お父さんに怒られるわよ」といつも夫の権威を盾に娘を叱っていた母親が、非常事態には一転頑なになって、逆に夫が「お母さんに怒られるぞ」と妻を立てて娘をたしなめる役にまわったり、等々。

 (前回の出席者で今回お休みの人が複数いましたが、それらの人は前回、一致して「気持ちが悪い」と書いていました。そう感じる人はやはり本当に続きを観たくなかったようですね。)

 早熟なアルジュビェトカはやたらにものを考え、大人の心の内を見透かし、気を回す質だが、同じシュワンクマイエル監督の『アリス』(1988年)の少女と比べてみると面白いだろう。アルジュビェトカより4~5歳年下と見られるアリスは、アルジュビェトカとは対照的にほとんど何も考えず反射的に行動しているかのようである。シュワンクマイエルの少女モノには「地下室の怪」(1983年)という15分の短編もあり、同モチーフで見比べるのも一興だろう。