冬の急激な寒暖差が命取りに
千葉白井病院の杉山浩二医師が警鐘を鳴らす
▲講師の杉山浩二医師(写真/村越芳子)
白井健康元気村は12月21日、ウェルぷらっと(白井市健康福祉センター)で健康教室を開催しました。講師は、今回3度目となる千葉白井病院循環器内科の杉山浩二医師。一昨年は「心臓の話」、昨年には「心臓と生活」、そして今回のテーマは「心臓と健康維持」です。
風呂場の「不慮の事故」で亡くなる人は交通事故死の約2倍
「年をとったら、寒暖差に気を付けてほしい」というのが杉山先生の持論です。先日、女優の中山美穂さんが自宅の浴槽で亡くなりました。なんでも「不慮の事故」とか。
日本では、風呂場で亡くなるケースは少なくありません。厚生労働省の人口動態統計(令和3年)によると、「高齢者の浴槽内での不慮の溺死及び溺水の死亡者数」は4750人で、交通事故死亡者数の2150人の約2倍だそうです。
なぜこんなに多いのか。その原因の一つがヒートショック。つまり、急な温度差による血圧の急激な変化で貧血状態におちいり一過性の意識障害を起こすというわけです。
暖房のきいた暖かい部屋から寒い脱衣所や浴室に移動すると、血管が縮まって血圧が一気に上昇しますが、その直後にザブンと熱い浴槽につかると、今度は血管が急に広がって血圧が下がることに。
そんな血圧の急激な変化で意識障害を起こし、浴槽内で溺れて死亡するというケースが珍しくありません。脱衣所も電気ストーブなんかで暖かくするよう気を付けてください。
▲参加者には風呂好きの人が多い?(写真/村越芳子)
▲暖かい室内から寒い脱衣所、そして熱めの浴槽に潜む危険
急激な寒暖差に要注意
急激な寒暖差で血圧が上昇した場合、心筋梗塞、大動脈解離、うっ血性心不全といった、命にかかわる循環器疾患が起こると杉山先生が警告します。
では、寒暖差で気を付けたい症状には、どんなものがあるのでしょうか。杉山先生が次のように指摘しました。
①胸や背中の突然の激痛
②胸の締め付けや圧迫感が30分続く
③急な息切れ
④意識を失う
最悪なのが、④の段階です。手遅れにならないためにも、①の段階で黄色信号が灯ったと思ってください。
フレイル予防のために日々の運動を続けよう!
さて今回の講演で杉山先生がすすめるのが、普段の運動です。運動をしていないと、フレイル(加齢により心身が老い衰えた状態)の原因にもなります。杉山先生は、フレイルの症状として、次の5点を上げています。
①体重減少/6カ月で2~3㎏体重が減少する
②疲れやすい/わけもなく疲れたような感じ
③筋力低下/(握力の場合)男性28㎏以下、女性18kg以下
④歩行速度低下/毎秒1m以下
⑤身体活動低下/1週間に一度も運動をしていない
そして毎週次のような運動をするとフレイル防止に効果的とか。
その内訳は―
①毎日 歩行25分
②毎日 早歩き 20分
③週3回 ジョギングやテニスのような激しい運動を30分
④週1回 ゴルフ(コース)のような長時間楽しみながら行う運動を3時間
もちろん、テニスやゴルフに縁のない人もいるので、これはあくまでも一つの例です。ご自分のやり方で日々の運動を工夫することが大切でしょう。
また、血管にプラークができないためにも、普段の食事にも気を付けなければなりません。杉山先生は料理に使う油にも言及しました。できるだけ「飽和脂肪酸」の多い動物性油を避け、オリーブ油、なたね油、ごま油といった「不飽和脂肪酸」の入った植物性油をすすめています。
講演が終わってから質疑応答の時間になり、参加者から積極的な質問が。お酒が大好きな白井健康元気村の玉井村長からもアルコールに関する質問が。杉山先生から「なるべく深酒はしないでください」とご託宣が下り、肩を落とす玉井村長でした。
【杉山浩二(すぎやま こうじ)医師のプロフィール】
(写真/村越芳子)
平成16(2004)年3月に広島大学医学部医学科卒業後、初期研修医として広島大学病院に勤務したのを皮切りに、横浜市立みなと赤十字病院、東京医科歯科大学医学部附属病院、柏市立柏病院、災害医療センターに勤務。令和4(2022)年に千葉白井病院へ。日本内科学会認定内科医、日本循環器学会専門医、日本不整脈心電学会不整脈専門医、医学博士。