【連載】腹ふくるるわざ㉔
オミクロンは終息へ
桑原玉樹(まちづくり家)
連日の記録更新
今日1月21日、わが千葉県をはじめ1都12県でまん延防止等重点措置が適用された。沖縄県など3県では、すでに9日から適用され、さらに新たに8道府県が政府に適用を要請するとされている。適用されれば日本の半分である24都道府県が「マンボー」になる。
TVでは、連日のように「感染者数は○日連続で過去最高を記録」と煽りまくっている。私も心配になり、改めてNHKの「新型コロナ特設サイト」のデータに当たった。その中で、米軍基地からオミクロンが侵入したという沖縄県、日本の中心東京都、そしてわが千葉県のデータを基にグラフにしてみた。
▲7日間平均新規感染者数と前日比(実績と予測)
「前日比」はすでに減少
グラフは、「過去7日間平均の新規感染者数」と「前日比」だ。昨年5月には、京大の藤井聡先生が「感染の動向は、感染者数ではなく増加傾向で判断すべき」と熱弁されたことをこの欄でも紹介した。その時と同じ指標だ。
ん? ん? 「前日比」はすでに減少しているではないか。沖縄県はその傾向にあるだろうと予想していた。ところが東京都も千葉県も、1月5日、6日あたりにピークが来た後、「前日比」は減少している。
つまり、感染者数自体はしばらく増加するものの、増加率は次第に鈍化して、近いうちに感染者数はピークを迎え、そして終息に向かうことを示している。TVでは「新規感染者数が過去最高」と叫ぶが「増加率は鈍化」とは伝えない。
「東京 感染者数2万人突破」の見出しは出るだろうが
現在の「前日比」の動向がこのまま続くと仮定して、今後の新規感染者数の予測をしたのがグラフの破線だ。
2月半ばには東京都ではピークを迎え、人口10万人当たりで140人を超える。東京都の人口は約1400万人だから、新規感染者数はなんと約2万人に達する。TVや新聞の見出しが見えるようだ。
すでに終息に向かっている
しかし冷静に考えてもらいたい。もうすでに終息に向かう傾向が見えているのだ。過去の緊急事態宣言と同じく、宣言した時点では、すでに終息に向かっている。慧眼の諸先生が指摘されているように、終息に向かうのは決して緊急事態宣言、まん延防止重点措置、市民の協力が功を奏したわけではない。
ウィルス感染症の常として、ウィルスが市中に拡がり集団免疫ができたから収束に向かっているに過ぎないのだろう。下図で分かるようにワクチンの効果でもない。ワクチン接種率が高くなっても、ましてイスラエルのように3回目が終わっても、ウィルスはお構いなしにやってきて感染者数は激増する。
▲ワクチン接種率と感染者数(札幌医大フロンティア研ゲノム医科学のサイトより)
オミクロン株発祥の地である南アフリカでは、すでに新規感染者数も減少し、終息に向かっている。少し遅れたイギリスなど同様に減少している国もある。さらに遅れた日本も同じ道筋をたどるのは明らかだろう。
これまでのアルファ株、ベータ株、デルタ株と同じように、「出現→ピーク→収束」は数カ月の周期で終わるのだろう。TVに出てくる感染症の専門家と称される人やマスメディアが、なぜこのことを指摘しないのが不思議だ。
▲人口100万人当たり新規感染者数の推移(札幌医大フロンティア研ゲノム医科学のサイトより)
冷静な判断を
「オミクロン株は重症化しにくい」とはよく言われている。ちなみに当初のグラフで表した昨年12月8日から今年1月20日までの期間の新型コロナによる死者数は90人だ。
亡くなられた方々にはご冥福を祈るし、ご家族にはお悔やみを申し上げたい。しかし、日本では毎年130万人を超す人が亡くなっている事実を知ってもらいたい。これに比べると、オミクロン株による死亡者数がいかに少ないかがわかるだろう。
政府、マスメディアは、支持率、視聴率などで大衆に迎合することなく、いい加減冷静に判断してもらいたいものだ。
【桑原玉樹(くわはら たまき)さんのプロフィール】
昭和21(1946)年、熊本県生まれ。父親の転勤に伴って小学校7校、中学校3校を転々。東京大学工学部都市工学科卒業。日本住宅公団(現(独)UR都市機構)入社、都市開発やニュータウン開発に携わり、途中2年間JICA専門家としてマレーシアのクランバレー計画事務局に派遣される。関西学研都市事業本部長を最後に公団を退職後、㈱千葉ニュータウンセンターに。常務取締役・専務取締役・熱事業本部長などを歴任し、平成24(2012)年に退職。現在、印西市まちづくりファンド運営委員、社会福祉法人皐仁会評議員。