民主党の崩壊が止まらない。新党「国民の生活が第一」の小沢一郎代表が離党し、いまや不穏分子の筆頭格となった鳩山由紀夫元首相は18日、9月の党代表選で野田佳彦首相に対抗馬を擁立する考えを表明、結果次第では離党も辞さない覚悟を示した。
そんな中、中津川博郷衆院議員(比例代表東京ブロック)が離党届を提出。これを加えると消費税増税をめぐる混乱の中での離党者は衆院41人、参院16人の計57人となる。民主党はもはや制御不能となった。(坂井広志)
「私がたった一人で動き始め、民主党を作った。私がいなければ民主党はなかった。今の変節した民主党にも愛情はある。原点を取り戻すことが可能かどうか追求したい…」
18日、インターネット番組「インディペンデント・ウェブ・ジャーナル」に出演した鳩山氏は、民主党へのオーナー意識を強烈ににじませた上でこう語った。
「次の代表選でどういう人材を擁立し、民主党の原点を取り戻すことができるか、可能性を試したい」
「ポスト野田」最有力候補だった前原誠司政調会長が代表選への不出馬を表明し、首相の再選はもはや既定路線。これが「自分を党員資格停止処分にした首相だけは許せない」という復讐(ふくしゅう)心に火を付けたようだ。
「党に残るか、外で行動して野党的な立場から政権に正しい方向を求めるのか。その辺の決断をしなければならないときがこれから来る。(一つのめどとして)代表選がある」
これまで離党をかたくなに否定してきた鳩山氏がここまで言い切るのは初めて。内閣不信任決議案が提出された際の対応についても「どういう行動をとるか心構えをしておかなければならない」と含みを持たせた。
いきなりボルテージを上げたのは、17日に女性参院議員3人が離党届を提出したからだった。3人は“小沢色”は薄いが、消費税増税だけでなく、環太平洋戦略的経済連携協定(TPP)交渉参加や原発再稼働など政権の方向性そのものに抗議の意志を示した。
これを見た鳩山氏は「自分ならば党内に潜在する反野田勢力を結集することができる」と手応えを感じ取ったに違いない。鳩山氏は番組中も「参院の女性は大変たくましい」と絶賛してみせた。
そんな中、中津川氏が唐突に離党届を提出した。理由は、東京都による尖閣諸島(沖縄県石垣市)購入計画を批判した丹羽宇一郎駐中国大使を政府が更迭しなかったことだった。
「丹羽氏を呼びつけたのはよいが、何の処分もなく即刻クビにできなかった。政府の国益を守るというのは口先だけだ!」
こう断じる中津川氏は、すでに離党して無所属の木内孝胤、中島政希、横粂勝仁、佐藤夕子の各衆院議員と計5人で新会派「改革無所属の会」結成を19日に発表する構え。
小沢氏らがリベラル色を強める中、民主党内の保守系不満分子の受け皿を狙っているわけだが、鳩山氏は中津川氏らとの連携も視野に入れる。消費税増税、TPP、尖閣、原発再稼働-。理由は何でもよいから「反野田」の一点で大同団結しようという鳩山氏の発想は、民主党の原点である「反自民勢力の結集」と似てなくもない。
ただ、毛沢東ばりの「造反有理」を掲げる鳩山氏の「底の浅さ」は見透かされており、同調の動きは広がりそうにない。鳩山氏の側近議員さえこう漏らした。
「『政局の話はしないでほしい』とあれほど言ったのに。代表選は首相再選だ。現状認識すらできなくなってしまったのか…」