カネボウ化粧品が販売する美白化粧品について、一部の利用者から「肌がまだらに白くなる(白斑)症状がでた」という被害報告があいついでいる。カネボウは、美白有効成分「ロドデノール」配合製品の自主回収を進めるとともに、「症状が確認されれば、治療費や医療機関への交通費、慰謝料を負担する」としている。
ただ、「補償基準の詳細は今後検討する」と説明しており、被害者がどれだけの補償を受けられるのかは、まだ不透明だ。今回は顔に症状が出ている人も多いようだが、被害にあった女性にとっては、精神的なダメージも相当に大きいはずだ。
では、今回のように精神的損害も大きいと考えられる場合、決定されるのだろうか。また、「顔がまだらになってしまったので、会社に行くのが辛い」として欠勤した場合、休業補償も認められるのだろうか。好川久治弁護士に聞いた。
●メーカーには「製造物責任」がある
――メーカーにはどんな責任がある?
「本件は、化粧品の品質の安全性に関わる問題ですから、メーカーは、製造物責任を問われる可能性があります。
化粧品の成分と白斑との因果関係は、完全には解明されていないようですが、仮に責任が肯定されると、メーカーは、治療と後遺障害に関係する損害について、賠償責任を問われることになります」
――賠償される「損害」にはどんな内容が含まれる?
「損害の中身は、治療費、通院のための交通費、療養治療のための休業補償(有給取得分も補償されます)のほか、入通院に伴う慰謝料、後遺障害等級に応じた慰謝料、将来の逸失利益なども含まれるでしょう」
――慰謝料は、例えばいくらぐらいになる?
「入通院慰謝料は、入通院の期間に応じた一応の目安があります。通院の頻度によっても変わりますが、例えば1ヶ月通院した場合は16万円~29万円程度となります。
傷などが残った場合の『後遺障害慰謝料』についても、等級に応じた一応の目安があります。例えば、顔だと10円銅貨の大きさ以上、首だと鶏卵の大きさ以上の、人目に付く瘢痕(傷跡)が永久に残った場合には12級で、金額は250万円~300万円程度になります」
●モデルや接客業でなくても、仕事への悪影響は考慮される
――仕事などに影響が出たら?
「後遺障害が残った場合、特に接客業やモデルなど、仕事に直接影響が出る場合には将来にわたって収入が減った分の『逸失利益』を請求できることになります。
その他の職業でも、対人関係や対外的な活動に消極的となるなど、仕事への影響が否定できない場合には、後遺障害慰謝料に50%程度の上乗せが認められることもあります」
――ショックで仕事を休んだ場合は補償される?
「休業補償は、症状がひどくて精神的なショックも大きい初期段階は、認められる可能性があります。ただ、それ以降は、単に人目が気になって会社に行くのが辛いというだけでは認められないでしょう。
辛い気持ちは、入通院慰謝料の上乗せ事由として高めの慰謝料を請求することで、調整がはかられることになると思います」
(弁護士ドットコム トピックス編集部)
【取材協力弁護士】
好川 久治(よしかわ・ひさじ)弁護士
1969年、奈良県生まれ。2000年に弁護士登録(東京弁護士会)。大手保険会社勤務を経て弁護士に。東京を拠点に活動。家事事件から倒産事件、交通事故、労働問題、企業法務まで幅広く業務をこなす。趣味はモータースポーツ。
事務所名:ヒューマンネットワーク中村総合法律事務所