汗をかき、尿が濃くなる夏から秋にかけて発症が増える“尿路結石”。最も典型的な症状は、突然、脇腹や背中、下腹部に起こる強烈な激痛。ただし、似た症状が現れる疾患には、命に関わる重篤な病気もある。早急に医療機関を受診しよう。
【尿が流れず激痛】
尿路結石は、尿が作られ排出されるまでの経路(腎臓→尿管→膀胱→尿道)のどこかに結石ができた状態の総称。
獨協医科大学越谷病院・泌尿器科の岡田弘教授が説明する。
「発症全体の9割以上は、腎結石と尿管結石の“上部尿路結石”で占められます。腎臓の奥に石があっても症状は出ない。腎臓の尿の出口や尿管に石が詰まり、尿の行き場がなくなると腎臓が腫れて激痛が起こるのです」
ただし、激しい背部痛や腹痛は心筋梗塞や解離性大動脈瘤(りゅう)の可能性もある。早急な鑑別が必要になるという。
【原因は体質が大きい】
一方、膀胱結石や尿道結石の“下部尿路結石”では、腹痛があっても鈍痛。多くは排尿時痛、血尿、頻尿、残尿感などが主症状になる。
「本来、尿管よりも尿道の方が太く、上部尿路から膀胱に流れた石は自然に排出されます。だから下部尿路結石は排尿機能が低下した人に起こりやすい。例えば前立腺肥大症や脳卒中の後遺症、脊髄損傷などで、尿の排出がうまくできなかったり、寝たきりのような人です」
尿路結石の成分の80%はシュウ酸カルシウムで、一部に尿酸やリン酸カルシウムがある。結石ができる原因は成分の代謝の問題で、体質によるものが大きいという。
「膀胱内で石が大きくなる下部尿路結石では、リン酸マグネシウムアンモニウムの場合もあります。これは尿路の細菌感染が原因です」
【30-40%が再発】
治療法はいくつもあり、結石の場所とサイズで使い分ける。通常、5ミリ以下は尿路を緩ませる薬を内服して、自然排石を待つ。痛み止めには坐薬を使う。
「主に腎結石や腎臓に近い上部の尿管結石の場合には、体外から衝撃波を当てて石を砕く“ESWL”という方法が第一選択肢になる。さらに、膀胱に近い下部の尿管結石や膀胱結石で使うことが多い内視鏡を入れてレーザーで砕く方法(TUL)を組み合わせる場合もあります」
内視鏡にも硬性尿管鏡と軟性尿管鏡の2種類がある。状況に応じて臨機応変に使い分けることが肝心。治療は、すべての治療法に対応できる専門の部門で受けた方がいいという。
「5年以内に30-40%の確率で再発が多い。食事の摂取成分を考えた予防は、現実的には難しい。あえて挙げるなら、日常的に水分を多めに飲むことを勧めます」
【尿路結石の症状の特徴】
★上部尿路結石(腎結石、尿管結石)突然、背中や脇腹、下腹部に我慢できないほどの激痛が起こる。吐き気や冷や汗を伴うケースも多い。
★下部尿路結石(膀胱結石、尿道結石)排尿時の痛み、血尿、下腹部の鈍痛。頻尿や残尿感などの膀胱刺激症状。