[東京 2日 ロイター] - トランプ次期米大統領の政策期待を背景にドル高/円安が急速に進展し、日経平均.N225も1万8000円台を回復した。日本の政策当局や輸出系企業にとっては「神風」とも言える現象だが、その間に官民が挙げて取り組むべきは生産性向上だ。惰眠をむさぼっていては、神風が逆風になった時に後悔することになるだろう。日本の政策当局と企業は試されている。
<当局も予想しなかった大幅な円安・株高>
2日の東京市場では、ドル/円JPY=EBS、日経平均とも反落したが、中期的なドル高/円安、日本株高の基調にまだ大きな変化の兆しはない。
11月9日(日本時間)の米大統領選の結果判明の過程で、101円台まで円高が進んだ際には緊張感が高まった政府・日銀にとって、足元の円安・株高は「予想もしなかった展開」(関係者)という。
円高・株安で個人と企業の心理が急速に冷え込み、消費と設備投資が落ち込む「負のスパイラル」に落ち込むリスクを考えれば、現下の円安・株高は日本の政策当局が何もしなくても発生した「神風」だ。
当初、市場参加者の大勢は、円安・株高は一過性であり、円高への逆戻りに身構えていた。しかし、次期米財務長官への就任が決まったムニューチン氏が、CNBCテレビで15%への法人税引き下げなどを明言すると、米長期金利の上昇とドル高はしばらく続くとの声が大きくなっている。
完全雇用に近い状況での大幅減税と公共投資、石油輸出国機構(OPEC)の減産合意と原油価格上昇など受け、米債市場における米長期金利US10YT=RRの上昇はしばらく続き、3%が射程圏に入ったとの予想が急速に力を得ている。
私は、トランプ次期大統領が「ドル高けん制」の発言をするまで、ドル高は継続すると予想する。また、しばらくの間はけん制発言をせず、ドル高を容認する可能性が大きいとみている。
トランプ次期政権の経済政策の柱が減税などの大規模財政出動であるなら、その実行に伴うドル高に対し、初期段階からけん制して政策の矛盾を露呈させることは避けると思われるからだ。
<猶予期間に何をするべきか>
一方、「棚ぼた」的な円安・株高は永遠には続かない。いずれ終息するときがやって来るだろう。
そのときまで、日本の政策当局と輸出系企業は「猶予期間」をもらったことになると考える。
この「猶予期間」を有効に使って、次に訪れるであろう「嵐の時」に備える必要がある。何をなすべきか──。
私は、衰えが見える日本企業の生産性の向上に、官民が総力を挙げて取り組むべきだと主張したい。
たとえば、クリスマス商戦を前に米国で注目されているアマゾン・ドット・コム(AMZN.O)の倉庫用ロボット。倉庫の棚を移動させるロボットの導入によって、商品の選別、梱包、出荷までの時間が、人的対応だけと比べ約4分の1に短縮されたという。日本でも、こうしたAI(人工知能)を駆使したロボットの開発と活用が進めば、今は労働集約的な物流関係の生産性を飛躍的に向上させることができるだろう。
ロボット化の進展で関連した設備投資も増加し、プラスの循環が生まれることになる。
AIやIoT(モノのインターネット)、ビッグデータ関連の新規設備投資を対象に減税を実施すれば、民間のイノベーティブな対応を政府サイドが支援する形が整う。
ロイターが大企業400社を対象に実施した10月企業調査では、ロボットの未導入企業が6割に上り、IoTやAI活用を検討しないと回答した企業が約4割を示した。
円安・株高が継続している間に、こうした企業の対応をあらため、最先端技術を駆使して、生産性の引き上げに取り組む態勢を一刻も早く整えるべきだ。
<無為な猶予期間なら、キリギリスの運命に>
トランプ次期政権と似ているところが多いと言われている1980年代のレーガン政権下では、ドル高が大幅に進んだ。
だが、政権発足から4年8カ月後の1985年9月、ドル高を調整するプラザ合意が公表された。
トランプ次期政権においてドル高が進んだとしても、どこかの時点で調整が入り、一転して大幅な円高基調に転換する可能性を見ておく必要がある。
アリとキリギリスの寓話(ぐうわ)ではないが、今のうちに円高進展に耐えられる「体力」を付けておくことが重要であり、そのキーは各企業の生産性向上だ。
円安・株高の「猶予期間」を無為に過ごすと、キリギリスの運命が待ち構えているだろう。
以上、ロイターコラム
今回は、トランプに期待して円安、株高に振れている。アメリカ国内の景気は間違いなくよくなると思う。
日本は、自立への道を考えないといけない岐路にきていると思います。防衛、経済ともにアメリカ頼みというスタンスを考え直さないと痛い目に合うと思われます。