[16日 ロイター] - 来年は確実に、あるいは高い確率で政権の座に就くと思われる指導者の一群は、ロシアのプーチン大統領に対し、はっきりとした憧れを示している。それも長続きはしないかもしれない。いや、われわれはそれが長続きしないことを願うべきだ。
自由世界における随一のリーダーとなる次期米大統領のドナルド・トランプ氏は、ロシアの独裁者であるプーチン氏の統治手法がお気に入りで、プーチン氏にはいつも「好感」を抱いていると繰り返し発言している。
「彼は強力で有能な指導者だ」とトランプ氏は言う。ロシアのジャーナリストであるマーシャ・ゲッセン氏の意見では、両者は事実を無視するという点で驚くほど似ているという。「単にプーチン、トランプ両氏が嘘をつくというだけではない」とゲッセン氏は書いている。「2人は、嘘のつき方と目的が同じである。露骨に、真実そのものよりも力を優先させる」
フランスでは大統領選に出馬する右派の主要候補2名が、プーチン氏とロシアを好意的に見ている。
国民戦線のマリーヌ・ルペン党首は、ロシアのある銀行が寛容な態度を示したおかげで、フランスの大統領府であるエリゼ宮をめざす選挙運動資金として940万ユーロ(約11億5000万円)の融資を受けることができた。彼女はプーチン氏を、「西側が仕掛ける新たな冷戦」に「冷静な頭脳」で対応しているとして敬意を表している。
フランス共和党のフランソワ・フィヨン党首は、やる気を失った左派が「よりよい選択肢がないため」に彼を支持した場合には、ルペン氏よりも上位に入ると予想されているが、彼もやはり「冷静な頭脳」のプーチン氏の友人と見なされている。
憲法改正をめぐる国民投票でレンツィ前首相が敗北した後、さらに不振に陥っているイタリアでは、対ロ貿易の再開による経済上のメリットを得ようとして、これまで以上に対ロシア制裁の緩和に熱心になっている。ジェンティローニ新首相は、まだ外相の座にあった先月、トランプ氏が「原則を放棄することなく」対ロ関係を改善するならば、イタリア政府にとっては好都合だろうと発言している。
欧州で最も有力な政治家であるドイツのメルケル首相は、制裁の必要性を淡々と繰り返している。だが、そのメルケル首相もここ数カ月、財界ロビーからの圧力を受けており、2017年にホワイトハウスとエリゼ宮が親ロシア派の大統領に占拠されるならば、態度を変えざるを得なくなるかもしれない。
現在、国連安全保障理事会の常任理事国5カ国に含まれる民主主義国のうち、制裁に参加しているのは仏・英・米の3カ国である。だが来年半ばには、西側諸国のうち断固として制裁を続けているのは英国だけになる可能性がある。そして、脱退を決めた欧州連合(EU)の加盟国に対して、英国政府はもはやさほど大きな影響力を発揮していない。
こうした展開になる可能性を考えると、われわれはロシアについて確認しておかなければならない点がある。何しろそのロシアは、心からの抱擁ではないにせよ、友好のあいさつとして両頬にキスのふりをする相手となるのだから(それも、片頬に2回、反対側に1回、というロシア流になるかもしれない)。
第1に、対ロ制裁が科されたのは、ロシア政府がウクライナの広大な地方(クリミア)を併合したうえ、ウクライナ東部にロシア軍を派遣し、当地の住民が民主的に選ばれたウクライナ政府に対して蜂起することを支援したからである。ロシアは現在、ジョージアの2つの地方(アブハジア、北オセチア)、モルドバのトランスニストリア地方、ウクライナのクリミア地方と東部を、公然と、あるいは事実上、支配下に収めている。
第2に、プーチン氏とシリアのアサド大統領との連携は、シリア反体制派に対する勝利と、西側諸国にとっては屈辱をもたらした。アレッポの破壊された市街と、埋葬もされず放置されている数千名の死者が、その証拠である。プーチン氏は、何もかも破壊し殺りくすることで反体制派を鎮圧しようとするアサド大統領を一貫して支援している。アレッポ陥落は、そこで行われた断固たる残虐行為と、また専制君主の没落を早めるための軍事介入は二度と行うまいと決意した西側諸国の際限のない言い逃れの結果を示している。これによってロシアは、専制君主たちの最高の友人、「独裁者インターナショナル」の代表となったのである。
第3に、ロシアのメディアは単に国家の支配下にあるのではなく、西側諸国の流儀で言えば、国家によって制作されている。国内のチャンネルにおける政治宣伝は徹底的かつ情熱的で、実にドラマチックである。海外放送(複数の言語による「ロシア・トゥデイ」)は、もっともらしさと高度な編集技術を駆使して、西側諸国について画一的なディストピア像を描き出している。
これと連動しているのが、西側のウェブサイトに対する確信犯的なハッキング行為である。現在では、常に否認してはいるものの、西側諸国の選挙への介入を目的としている。
米中央情報局(CIA)は、民主党全国委員会のファイルがハッキングされ、不都合な部分がジュリアン・アサンジ氏の「ウィキリークス」経由で拡散した事件の裏にはロシア政府の存在があったと結論づけている。トランプ氏はこの報告が真実であることを否定したばかりか、いずれ自分の指揮下に入る主要な情報機関であるCIAを、いつも失敗ばかりしていると酷評し、自分は「賢い人間」だからCIAのブリーフィング(状況説明)などまったく必要ないとさえ付け加えた。対ロ関係の改善とは、少なくとも米国大統領の側では、ロシア政府によるハッキング活動に対しておだやかな無関心を示すことなのかもしれない。
ロシア政府は、どの野党も他と際立った力を持つことがないよう、またアレクセイ・ナバリヌイ氏などの人気の高い反体制派の政治的影響力を奪うよう手を尽くしている。今や稀少になってしまった経済的果実を身内だけで囲い込むため、何千人もの起業家を投獄している。NGOが海外から資金を集めることや(広義での)政治に関わることを禁じてしまった。
強制収容所で命を落とした少なくとも数百万人の生死を記録するため、ソ連時代の最後に設立された「メモリアル」と呼ばれる機関を廃止しようとさえ試みている。ロシアが国内においても国際社会においても、暴発することはないものの、極度に統制された危険な存在になりつつある兆候がますます増えているように思われる。
米国のエコノミストでコラムニストのザカリー・カラベル氏が書いているように、民主主義諸国にとって、中国、エジプト、サウジアラビアなどにおける独裁者との付き合いが日常茶飯事であることは確かだ。しかし、ロシアの場合はいくつかの理由で事情が異なる。
ロシアは複数の欧州諸国と国境を接しており、そのいくつかに関しては、占領とまではいかないまでも、政権転覆を狙っている。ロシアは欧州の一部とも言えるし、そうでないとも言える。ロシアにとって西側諸国は、軽侮の対象でもあり、羨望の対象でもある。自らを欧州文明であると称することもあれば、欧州とは別のユーラシア文明であると称することもある。ロシアの文化(特に音楽、文学作品、演劇)は西側の文化を豊かにしてきた。現在の支配者は反欧米を貫いているが、ますます多くの人々が、自由に旅行、読書、議論し、みずから徹底的に物事を考えるようになり、欧州の人間に近づいていっている。欧州もロシアも、他方を放っておくことはできない。
プーチン氏のゼロサム的な世界においては、他者に属するものを奪おうとするが、自分に属するものは決して譲らない。ホワイトハウスの「ディールメーカー最高責任者」が、世界の独裁者たちの象徴とも言える存在を相手にどのような交渉結果を引き出そうとするのか、実に魅力的な見世物だろう。いや、われわれが単なる見物人であれば、見世物でもいい。しかし、実際にはそうではない。リベラルとは程遠い2人の指導者が見せる動きによって、われわれは皆、犠牲とまでは言わずとも、深刻な影響を受けることになるのだから。
以上、ロイターコラム
今求められているリーダーは、強くてグローバリズムに立ち向かう人間が必要だと考えます。
それが、プーチンです。
トランプも同様にアメリカ支配をしている1%に対抗するリーダーということで次期大統領として選ばれたと思います。
日本でも弱いリーダーが結果的に国益を損失しています。
たとえば、三木首相とか宮沢首相は弱くて最悪でした。