[28日 ロイター] - ドナルド・トランプ次期米大統領が外交政策の詳細を詰めるのを、世界はまだ待っている状態だ。これまでに彼が発した言葉を考慮してみれば、ロシアと北大西洋条約機構(NATO)加盟国は、トランプ時代における「負け組」となる可能性が高い。
ロシアについては、トランプ次期大統領がプーチン大統領を称賛しているからである。NATO諸国については、トランプ氏が、加盟国の「ただ乗り」によって、米国が応分以上に同盟維持コストを負担せざるを得なくなっている、と考えているためだ。
今回は1月20日に予定される大統領就任に先立ち、上記以外の意外な3つの「勝ち組」と「負け組」をご紹介しよう。
<負け組>
●メキシコ
メキシコの元外相は、トランプ氏の当選を自国にとって「純然たる災厄」であると嘆いた。彼は正しいかもしれない。トランプ氏は選挙期間中、メキシコを悪者扱いし、国境を隔てる新たな壁の建設費用を負担させ、メキシコ系移民による本国への電信送金を禁じ、数百万人を強制送還し、北米自由貿易協定(NAFTA)を再交渉もしくは終了させると約束した。
トランプ氏が当選した翌日、メキシコ・ペソの対ドル相場は史上最低の水準まで下落した。理由は簡単だ。トランプ氏が選挙期間中に約束した通り、メキシコから輸出される多くの商品に35%の関税をかければ、メキシコ経済はあっというまにリセッションに陥ってしまうだろう。メキシコ系移民の本国送金を禁止すれば貧困が拡大し、数百万規模の強制送還があればメキシコ国内での犯罪発生率、失業率の急上昇を招きかねない。
●日本
トランプ政権誕生により、日本は2つの側面で負け組となる可能性がある。まず、選挙期間中、トランプ氏が日米同盟にどれだけ肩入れするかという疑問が生じている。トランプ氏は、在日米軍の駐留コストを日本政府にもっと負担させるべきだと述べ、日本がそれに応じなければ米軍を撤退させる可能性があると示唆した。
また彼は日米同盟を不公平だと非難し、「日本が攻撃されれば米国はただちに支援に駆けつけなければならないが、米国が攻撃されても日本は助ける必要がない」と指摘した。
またトランプ氏は、就任初日に米国が環太平洋経済連携協定(TPP)から脱退すると約束している。安倍晋三首相が重点政策として掲げるTPPは、2月に米国を含む12カ国によって調印された。
安倍首相は輸出の追い風になることを期待して、TPPの国会承認を得ようとしているところだが、トランプ氏はTPPを「災厄」と呼んでいる。いくつかの問題についてはトランプ氏も意見を変える可能性が窺えるが、彼の選挙運動においては自由貿易に対する反対が重要な柱になっていただけに、TPPは「死んでしまう」可能性が高く、日本にとってはかなり大きな長期的損失をもたらしかねない。
●モルジブ諸島
インド洋に浮かぶ小さな列島であるモルジブ諸島では、最高地点が海抜2.4メートルしかなく、トランプ氏の勝利によって最大の打撃を受ける可能性がある。この諸島の一部はすでにインド洋に没しており、今世紀末までにモルジブという国全体が消滅してしまうものと予想されている。
モルジブ諸島がトランプ政権の期間中に消滅するわけではないが、トランプ氏は「地球温暖化は中国による捏造」と主張しており、政権移行チームの環境保護庁長官にも気候変動懐疑派を指名している。さらにトランプ氏は、昨年の画期的なパリ気候変動対策協定からの脱退をめぐっても矛盾する発言を重ねており、モルジブの長期的な命運にとっても幸先はよくない。
<勝ち組>
●イスラエル
トランプ氏が選挙期間中に主張した立場は、イスラエルのネタニヤフ首相率いる連立与党と完全に一致している。トランプ氏は在イスラエル米国大使館をエルサレムに移転することを約束しており、ある上級顧問は、イスラエルによるヨルダン川西岸地区への入植は「和平のための障害ではない」と発言している。
またトランプ氏は、イスラエルが執拗に反対するイラン核開発合意を非難している。
これに加えて、選挙期間中のトランプ陣営の文書には、380億ドル(約4.3兆円)というイスラエル向けとして過去最大となる米国の軍事支援パッケージは、支援の「最低額であり、最高額ではない」と記されている。
●エジプトとトルコ
トランプ氏は明らかに独裁者を好み、国家建設を嫌う傾向を見せていることから、彼がエジプトの独裁的指導者であるシシ大統領に魅了されているとしても不思議はない。9月にシシ大統領と会談した後、トランプ陣営は声明のなかで、「エジプトの対テロ戦争への力強い支援」に感謝し、トランプ氏が勝利した場合にはワシントンを訪問するよう呼び掛け、トランプ政権がシシ大統領の忠実な同盟国となることを約束した。
民主主義に対するシシ氏の姿勢が決して誉められたものではないことにはまったく触れなかった。(ムスリム移民の米入国を制限するとの同陣営の声明にも触れなかったようだ)。大統領選での大勝利後、トランプ氏と最初に言葉を交わした海外首脳がシシ氏であったという事実からも、エジプトが、トランプ勝利による「勝ち組」なろうとしているように見受けられる。
トルコのエルドアン大統領も、やはりトランプ勝利から利益を得ようとしているように見える。7月にトルコで発生したクーデター未遂事件の後、エルドアン氏が政敵を弾圧したことをトランプ氏は称賛。市民の自由侵害を理由にエルドアン氏を批判する可能性を一蹴している。
トルコ側から見てさらにありがたいのは、トランプ氏の顧問を務める陸軍出身のマイケル・フリン氏が投票日に寄稿した論説において、クーデター計画を背後で操ったとしてトルコ政府が批判しているイスラム教指導者ギュレン師を、米国を安全な隠れ家として不当に利用しているイスラム教過激主義者として批判したことである。
●欧州の極右ポピュリスト
欧州は全般的にトランプ氏の当選に対して衝撃と落胆の反応を示しているが、例外もある。欧州の右派ポピュリストたちだ。
ハンガリーで独裁色を強めつつあるオルバン首相はトランプ氏の勝利を「素晴らしいニュース」と表現し、フランス国民戦線のルペン党首は「自由な米国民」を祝福し、英国独立党の党首で欧州連合(EU)脱退キャンペーンの先頭に立ったナイジェル・ファラージ氏(選挙期間中も積極的にトランプ氏を支持していた)は、トランプ氏の当選後、満面に笑みをたたえてトランプ・タワーを訪れて同氏と面会した。
欧州のポピュリストたちが興奮する理由は想像に難くない。1つには、オランダ、フランス、ドイツのポピュリスト政党はどこも、今年の自国での選挙において、トランプ氏の勝利が有権者にとって1つのモデルになることを期待している。さらに、トランプ政権で影響力の強い首席戦略官兼上級顧問となるスティーブ・バノン氏(トランプ氏の前選対本部長であり、いわゆる「オルタナ右翼」系メディアサイト「ブライトバート・ニュース」主宰者)、は、欧州の右派・反移民ナショナリストを尊敬していると伝えられている。
<結論は時期尚早か>
改めて確認しておくが、トランプ氏の外交政策が何をもたらすかという点について確固たる結論を出すには時期尚早であり、選挙運動と違い、実際の政権運営では制約を課せられることをトランプ氏が学ぶ可能性は高い。実際、トランプ氏の政権移行チームはすでに、イスラエルや国境の「壁」に関する外交政策上の公約をいくつか後退させつつある。その一方で、トランプ氏が計画しているロシアとの関係改善や、イスラム国との戦いにおけるシリアのアサド政権との協力については、議会幹部からの抵抗に直面している。
だが、トランプ次期大統領が必然的に妥協を余儀なくされる部分もあるとはいえ、1つだけ明白なことがある。トランプ氏は、よかれ悪しかれ、既存の地政学的な秩序を、予想もできない形で確実に揺さぶるだろう。
以上、ロイターコラム
安全保障もTPPも日本が負け組と解説しているが、真反対と私は思う。
中国の脅威があり、オバマ政権では南シナ海、尖閣とアメリカは後手で日本にとって中国から侵略される方向のシナリオ通り進んでいたが、トランプは軍事時に力を入れることは間違いない。日本防衛にはプラスであり、勝ち組と言える。
さらにTPPについては、日本の国柄を壊すため私は反対してきた。
単なる関税撤廃であれば自由貿易で日本景気が向上するが、非関税障壁をなくす行為が日本を守る法律をすべて変えることになり、経済植民地の道をたどることになるため、将来の日本を壊してしまう。そういうTPPをアメリカは止めると言っており、日本は勝ち組になる。
ただ、二国間のFTA交渉においては、TPP同様非関税障壁を守らないといけない。