阿部ブログ

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重希土磁石を超えるフェライト磁石の開発に成功 ~電磁波吸収特性も抜群~

2012年09月10日 | 日記
英国科学雑誌「Nature Communications」オンライン版によれば、東京大学とDOWAエレクトロニクスとの共同研究で、保磁力がナント31kOeに達するフェライト磁石の開発に成功したと報じている。これは凄い!

フェライト磁石は、安価なモータや磁気記録媒体、電磁波フィルタなどとして、広く利用されている。ただ、フェライト磁石は、結晶磁気異方性が低いので、保磁力が小さいとの弱点があった。しかし、今回開発されたフェライト磁石は、希土類磁石の代表選手であるネオジム-鉄-ボロンの保磁力25kOe、最強のサマリウム-コバルトの30kOeを超える保磁力を達成しており、これでディスプロシウムなど重希土類を使用しない磁石の普及により中国への依存度を更に低減させる事が出来る。

東京大学とDOWAエレクトロニクスの共同研究チームは、メソポーラスシリカと呼ばれる物質の表面にナノオーダーの穴が無数にあいたガラスを鋳型として用い、これにイプシロン酸化鉄(ε-Fe203)という特殊な磁性ナノ粒子の鉄イオンの一部をロジウムイオン(Rh3+)で置換した『ロジウム置換型イプシロン酸化鉄(ε-RhxFe2-xO3)』を作製したと言う。

「Nature Communications」によれば、理由は定かでないが粒子サイズが30nm程度のナノ粒子状態で焼成する事が、通常のフェライト合成法では得られない保磁力を有する物質『ロジウム置換型イプシロン酸化鉄』を生み出したのではないか?と推測している。元々『ロジウム置換型イプシロン酸化鉄』は、結晶磁気異方性が発現する物質でもある。

また『ロジウム置換型イプシロン酸化鉄』の電磁波吸収特性を調べた結果、ミリ波領域で周波数選択的に電磁波を吸収を傾向を示しており、その共鳴周波数は209GHzに及ぶことが今回の研究で判明している。ミリ波のような高周波数を吸収する磁性材料は他にない。F22ラプターは機体表面をある種の高分子でコーディングしているが、これを今回の『ロジウム置換型イプシロン酸化鉄』と言うフェライト材にするとどのようなステルス性能を叩き出すのか?

よく知られるように磁石に電磁波を照射すると、電磁波を吸収する。この共鳴周波数は保磁力が大きいほど高くなる特性があり、今回開発された『ロジウム置換型イプシロン酸化鉄』の電磁波吸収特性が将にこれを証明している。日本のステルス実証機「心神」でその電磁波吸収特性を評価してみたいものだ。

しかしながら中国のレアアース禁輸措置が、契機となり日本における脱レアアース磁石の開発に拍車がかかっており、中国の重希土類への依存度は更に下がる事となる。

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