阿部ブログ

日々思うこと

環境破壊を極小化する「海水」資源の開発

2012年02月04日 | 日記

日本の排他的経済水域の広さは世界第4位と言われ、この海底にはコバルトリッチクラストやマンガン団塊、熱水鉱床、メタンハイドレートなどの豊富な海底資源が眠っている。但し海洋資源は、海底に存在するだけではなく「海水」自体が莫大な資源の宝庫であり、様々な元素が溶け込んでいる事は良く知られている。


この海水から資源を回収する研究は1960年代から行なわれており、特に日本では45億㌧とも言われる海水ウランを捕集するプロジェクトが継続して行なわれ、現在では世界の最先端を行く研究実績がある。この海水に溶け込んだウランの資源化は、原子力研究所と電力中央研究所(以降、電中研)が中心となり様々な実証実験を繰り返し、実用化の一歩手前にきている。最新の研究ではウラン吸着材料として天然由来のタンニンを用いると低コストかつ高効率でウランを捕集する事が実証されており、東京工業大学は資源ベンチャー企業「NuSAC」を立ち上げ、海水ウランの捕集、及び化学法濃縮技術で海水ウランを濃縮し、国産海水ウランによる原子燃料ビジネスの確立を目指している。

現状ではウラン鉱石からのウランと海水からのウランには、約2.5倍の価格差があるとされているが、電中研によれば、陸上のウラン資源については採掘時に膨大なエネルギー消費とCO2を排出し、かつ鉱山労働者などの健康被害と放射能汚染など環境破壊を惹起している事を考えれば、海水ウランの利用は地球環境負荷軽減の観点から現実的な対応策であり、今後の政策動向によるがエネルギーギー安全保障の観点からも望ましいと評価している。

この他、海水からはバナジウムを吸着する事が可能となっている。バナジウムは、最近スマートグリッドで注目されているレドックスフロー電池の主要材料であり、事故が多発しているNAS電池に替わり、今後レドックスフロー電池の生産が本格化すると年間4000㌧~5000㌧の資源確保が必要とされる。但しバナジウムも典型的な遍在型資源であり、主要生産国の中国は昨年、レアアース、チタンと共にバナジウムを国家の直接管理下におき統制を強めている為、バナジウム資源の確保には困難が予想される。

今後、戦略的に重要な鉱物資源の争奪戦が激化する中、黒潮などの海流が提供する濃縮した海水資源環境を活用する事は、資源生産国や資源メジャーなど外部要因に左右されない資源であり、その意味で海水資源開発は、海底資源開発に続くもう一つのフロンティアであると言える。

中国が資源税の法令を改正し天然資源の国家管理を強化

2012年02月03日 | 日記

昨年、中国政府は「レアアース・鉄鉱国家計画鉱区」11か所を指定し、同国内における貴重なレアアース資源、及びバナジウム・チタン磁鉄鉱の国家管理を強化した。

この動きに併せて資源税に関する法令の改正が行われ、昨年11月に施行された(主席令第605号)。
中国の資源税とは、天然資源の合理的な開発や利用を促進する事を目的として、同国内の鉱物資源(石油、天然ガス、石炭、非金属鉱石、非鉄金属鉱石や塩)の採掘と生産を行う企業などが政府に納付する税金。

改正までは資源税については、売上量による従量税であったが、今回の改正により売上金額による従価税への転換が行われた。
また今回の改正では、莫大な石炭資源を有し発電における石炭依存が極めて高いする中国ならではの対応として、石炭をコークスの原料となる粘結炭とその他に分け、また非金属資源をレアアースとその他に細分し、かつ世界的に同国内に偏在するバナジウム・チタン磁鉄鉱など貴重な鉱石については実質的な増税を行う。

更に外国企業と共同で石油・天然ガスの開発・採掘を行う場合には、今までは資源税と鉱区使用料を課していたが、今回の改正からはこの鉱区使用料を廃止し、資源税のみを課すこととに政策を変更し、これに関連する「対外協力海洋石油資源採掘条例」と「対外協力陸上石油資源採掘条例」の2法令が改正されている。

経済成長を維持拡大する事が中国共産党の至上命題となっている現在、極力海外での資源開発を推し進め、国内資源の保護保全を優先させる政策は、今後の食糧やエネルギー資源の世界的な争奪戦を更に激化させる可能性が高く、同国の政策動向の注視が今後も必要である。