数日前、東宝の「ハワイ・マレー沖海戦」という映画をDVDで観た。
昭和17年制作である。
- 東宝ビデオ -より
戦争中の映画であるから、国威高揚、プロパガンダ的なもので
あるのはわかっているのだが、「はたして本当はどんなものか・・・」と
興味があったのだ。
映画の最初に「後援 海軍省」と出たときには、「うお~・・・」と思ったね。
出演は、大河内伝次郎、原 節子。
そうそうたるスターばかりである。
もっともこの時代「海軍省後援の映画」となれば、好むと好まざるとに関わらず、
出演しなければならなかったのだろう。
この点は、同情する。
カラヤンもシャネルも「ナチス協力者」として、しばらく迫害されたが、
彼らも生きていかなければならない。
やりたくない仕事もやらざるを得なかったのだ。
特別な才能を持った人たちの悲劇だ。
この映画は昭和17年制作で、まだ日本が調子よかったころの映画である。
真珠湾攻撃のちょっと後だ。
だから悲惨な場面は出てこない。
もっとも、出てきても海軍省の検閲に引っかかるだろう。
出てくる、空母、戦艦、航空機は全部本物だ。
特撮監督は、あのウルトラマンの円谷英二だ。
もっとも円谷英二は、あまりに映画に協力したので、後でGHQから
調べられたそうである。
天皇を神と仰ぎ、軍人精神、侍魂のくだりは、「はいはい、出ましたね」と
思っていたのだが、噂に聞いていたことが実際、映画で話をされると、
「ほんとなんだな」と思った。
だって、リアルタイムの映画だからね。
なによりすごかったのは、日本軍の軍人が1人も死なないのだ。戦争映画なのに。
死なないどころか、撃墜されたり墜落したりが、一つもない。
そして、戦闘機が真珠湾を攻撃して終わる。
「オチ」がないのだ。
早い話が「もはや、映画ではない」のである。
名だたるスターが、この脚本を見てどう思ったのだろう。
「こんな国民的映画に出られて幸せだ」と思ったのだろうか。
「こんなくだらん映画、出たくはないが・・・家族、関係者に迷惑がかかるからな」
と、内心仕方なく引き受けてくれた人がいたことを望んでいる。
今、我々は色々な予備知識があってこれを見ているから、
「なんだこれ」「こんなの、あるわけねえじゃん」と思うが、
何も知らずに、当時の国民はこれを観ていたのか、と思うと
背筋が凍る思いがする。
おまけ
久しぶりに「はま寿司」で昼食。
地味に「アジ」がうまいねえ。
ふと、疑問に思ったのだが、液晶画面で「ハマチ」を注文したとする。
「注文品」の皿が2つ流れてきた。
1つは「ハマチ」、もう1つは「鯛」。
日本人なら区別がつくが、外国人観光客なんぞは、どっちが
自分のものかわかるのかね。