会津天王寺通信

ジャンルにこだわらず、僧侶として日々感じたことを綴ってみます。

養老孟司氏の『バカの壁』『一番大事なこと』を再読 柴田聖寛

2021-08-10 08:55:58 | 読書

 

  いよいよ読書の秋到来ですが、皆さんはどんな本を読んでいられますか。私は養老孟司氏の『バカの壁』『いちばん大事なこと』を再読しています。いずれも2003年に出版されベストセラーになった本です。とくに『バカの壁』は流行語にもなりました。
 最近になって多様性ということがしきりに口にされますが、私からすれば、それは様々な考え方を尊重することが前提でなければなりません。しかし、そこに立ちはだかるのが偏見と、自分だけが正しいという思い上がりです。それを払しょくしなければ、かえって、多様性は混乱を生むだけです。それを教えてくれるのが『バカの壁』です。とくに人間というのは、自分が知りたくないことについては自主的に情報を遮断してしまいます。そのことを養老氏は問題にしたのでした。
 物を知っているというのは、もともとはコモンセンス、つまり常識があるということでした。物知りということではなく、正しい判断力があるということなのです。NHKなどのマスコミの報道に振り回されている人たちは、コモンセンスをもう一度再確認すべきではないでしょうか。マスコミとて絶対の存在ではないのです。
 養老氏によれば、カール・ポッパーという哲学者は「反証されない理論は科学的理論ではない」と述べています。「全ての白鳥は白い」ということを証明するためには、たくさんの白鳥を発見しても意味がなく、「黒い白鳥は存在しないのか」という厳しい反証にさらされるというのです。
 確実なことというのは、あくまでも探し続けるからこそ意味があるのであって、それをイデオロギーとして他人に押し付けてはならないのです。
 また、養老氏は『いちばん大事なこと』では、環境問題の難しさについて触れています。人間の力で感染症や自然破壊を阻止できるというのは、まさしく一方的な見方であり、「自然に本気でつきあっていれば『ああすれば、こうなる』が通らないことが体験できる」と書いています。結論的には「環境を破壊しない」ということにつきるのですが、人間はもっと謙虚にならなければならないのです。この二冊の本をぜひ手に取ってもらえれば、と願っています。世界が違ったものに見えてくるはずですから、

      合掌


比叡山で伝教大師1200年大遠忌御祥当法要  柴田聖寛

2021-08-07 10:27:58 | 天台宗

 

 久しぶりのブログのアップとなりました。新型コロナの爆発的な感染拡大は今も続いており、例年になく暑い夏となっていますが、皆さんにはいかがお過ごしでしょうか。私も75歳の後期高齢を目前にして、健康の大切さを改めて再認識している次第です。大病をしたわけではありませんが、ときには休養というのも大切ではないでしょうか。 
 宗祖伝教大師1200年大遠忌御祥当法要が去る6月3日から5日にかけて、比叡山延暦寺大講堂において厳かに執り行われました。天台ジャーナル令和3年7月1日号で詳しく報じていますので、皆さんに知っていただくために、簡潔に紹介したいと思います。コロナ禍ということもあって参列者を極力少なくし、法要の模様は3日間ともインターネットを通じた全国中継を実施しました。
 3日は御祥当逮夜法要を伝教大師御影供(みえく)が行われました。森川宏映天台座主猊下を大導師に、延暦寺一山住職が出仕。内陣須弥壇(しゅみだん)中央に奉安された伝教大師御影の功績を讃えた祭文が読み上げられました。御命日の4日は、午前中に御廟の浄土院で論議法要「長講会」が執り行われ、午後からは祥当法要。根本中堂から分灯された不滅の法灯を先頭に出仕僧らが入堂し、大導師の森川映天台座主猊下が法則(ほっそく)で伝教大師に報謝を捧げられた。5日の御祥当後法要は大樹孝啓探題大僧正を大阿闍梨に、天台宗・延暦寺両内局員、延暦寺一山住職の出仕で努められ、宗祖への恩徳が示されました。
 4日の祥当法要で挨拶された阿部昌宏総務総長は「最澄さまはわたしたち、そして皆さまの側におられます」とおっしゃいましたが、私もまた天台宗の一住職として、同じ思いを持っています。規模は縮小されたとはいえ、10年間にわたる祖師先徳鑽仰大法会の掉尾(ちょうび)を飾るにふさわしい法要となりました。

             合掌

 

 


根本中堂の十二神将、梵天、帝釈天などの修理進む  柴田聖寛

2021-03-25 08:02:44 | 天台宗

 

 

 国宝延暦寺の根本中堂と重要文化財の延暦寺根本中堂回廊の保存修理事業が本年で5年目を迎えました。今回の「平成の大改修」では、根本中堂にとどまらず、伝教大師の御自作である薬師如来坐像の周囲に安置された、十二神将、梵天、帝釈天の十四体、さらには、一内陣内の祖師壇と毘沙門壇内の秘仏なども修理しています。
 担当しているのは、滋賀県大津市の楽浪文化財研究所で、比叡山時報令和三年3月8日号では、所長の高橋利明氏に取材して現状を記事にしています。
 その記事によりますと、十二神将はどれも長年の埃が積もっていて、宝冠なども汚れて変色が目立ちました。像の表面も剥離剥落が著しくわずかに彩色が残っているものの、下地のむき出しになった箇所が多く見受けられました。
 修理に当たっては、彩色は補色の範囲内で、解体は傷つけないように配慮しました。汚れを取り除くために和紙を布海苔溶液水で水張りするということも行われました。緩みや亀裂の箇所は一旦取り離し清掃をしてから、樹脂系接着剤を用いました。割損箇所はヒノキ材で補修して形状を整えました。光背や光背の火焔は一旦取り離してから、形状を整えて鍍金を施し強固に取り付けました。
 当時の姿をそのままに再現することを優先されているせいか、手を加えるのではなく、あくまでも修理ということにとどめたのでした。法灯を守り続けるというのは、時代を超えて大切なものを伝えることです。子・丑・寅・卯・梵天・帝釈天の六体は終わっており、比叡山国宝展に常設展示されているとのことですので、私も近いうちに拝観させていただくつもりでおります。

           合掌


伝教大師1200年忌の記念事業特別展『最澄と天台のすべて』 柴田聖寛

2021-03-21 13:00:34 | 天台宗

 

 天台宗の宗祖伝教大師1200年大遠忌の記念事業として、今年10月から令和4年にかけて特別展「最澄と天台宗のすべて」が東京、九州、京都の3つの国立博物館で開催されます。主催は読売新聞で、延暦寺をはじめ、天台宗の全国の各寺院所蔵の国宝や重要文化財を中心にして、仏像、仏画、経文が出陳されることになり、今から大きな話題になっています。
 天台ジャーナルの令和3年3月1日発行の第216号では、その特別展のことが一面で紹介されています。出陳予定の主な寺宝としては、兵庫教区一乗寺の国宝「聖徳太子及び天台高僧像」の全10幅(東京・京都会場のみ)や、仏像では三岐教区願興寺像の重文「薬師如来坐像」(東京会場のみ)、四国教区等妙寺蔵の「菩薩遊戯坐像(伝如意輪観音)」(九州・京都会場のみ)、東京教区の深大寺の秘仏「慈恵大師(元三大師)坐像」は205年ぶりに寺外公開されます。
 このほか、会津の芦名氏の出ともいわれ、徳川家康の側近だった天海大僧正、第3代天台座主であった慈覚大師円仁、伝教大師と最澄の論争を発展させたと評される平安時代中期の天台宗の僧、恵心僧都源信のゆかりの名宝が展示されることになっています。
 東京国立博物館での開催は10月12日から11月21日まで。私も拝観したいと思っておりますので、何人か募って出かけることも検討しておりますので、参加したい方は会津天王寺の私の携帯090―1498―4150にまで、連絡のほどよろしくお願いいたします。

               合掌


東日本大震災犠牲者追悼と新型コロナ終息祈願法要   柴田聖寛

2021-03-09 19:51:08 | 信仰

「会者定離(えしゃじょうり)」という言葉があります。知り合った者には、必ず別離があるという意味です。大般涅槃経には「夫れ盛んなるは必ず衰うることあり、合会すれば別離あり」と書かれており、世の無常を表現しています。とくに天変地異や感染症は人類にとっての一大脅威であり、いつの時代も悩まされてきました。今は始まったことではないのです。
 東日本大震災では2万2000人(関連死含めて)余り、新型コロナウイルスでは8308人(令和3年3月8日現在)の方が亡くなられました。誰もが予期できなかった悲しい出来事であり、身内を奪われた方々は未だに信じられないと思います。残された私たちができることは、先立たれた霊を供養するとともに、パンデミックの一日も早い終息を願ってお祈りを捧げることです。
 会津天王寺では観音堂において東日本大震災の犠牲者追悼と新型コロナウイルスの終息祈願の法要を執り行います。日時は東日本大震災から10年目を迎える3月11日午後2時46分からです。
 私が観音経、如来寿量品、般若心経のお経を上げますが、参列を希望される方は、会津天王寺(0242-54-5054)までご連絡をよろしくお願いいたします。

        合掌