仮の世に咲きて紅白さるすべり 鷹羽狩行
さるすべりは百日紅と漢字で書きますが、「仮の世に」という最初の句に仏教的な響きがあります。仏教では人間は過去世、現世、来世の三つの世を生きるといわれています。過去世も来世も無限のはるかな時間を持っています。それと比べると現世はわずかな時間に過ぎません。ですから、現世で栄華を極めてもたいしたことではなく、不平不満があっても、一瞬のことに過ぎないのです。この句は、仮の世の華やかさを「さるすべり」に託したのではないかと思います。
天王寺の境内には10本の「さるすべり」の太い木があり、紅白以外にも紫、ビロード状の赤もあります。樹皮がツルツルしているとことから、猿も滑って落ちてしまうほどにツルツルということから、名づけられたともいわれています。私がこの30年間手塩にかけて育ててきた花で、縮れた小さな花がまとまって咲きます。花言葉は「雄弁」です。それこそ百日咲くといわれていますから、夏から秋まで楽しむことができます。ぜひ天王寺に御出で下さい。
合掌