はざまの庵

分類し難い存在を愛でる覚え書き by aiwendil お気軽にコメントをどうぞ。

<font size="-3">せんだいメディアテーク「イメージの庭vol.3『Saccadic Suppression』」。</font>

2006-06-08 23:52:32 | アートなど
せんだいメディアテークで開催中の「イメージの庭vol.3『Saccadic Suppression』」でインスタレーション作品をひとつと、上映プログラムをひとつを見て参りました。
元々のお目当ては映像クリエーター集団wow。以前の「イメージの庭vol.2」で『The poetry of suburbs』を見てクラクラして以来ものすごく気になっていたグループです。
今回のイベントでは、このwow関連のインスタレーション作品「Motion Texture」と上映プログラム「R」を見たくて足を運びました。
インスタレーション作品はしっかり見られましたが、時間の関係で目的の上演プログラムは観られず。代わりにタナカカツキ氏とresfestを特集したプログラム「G」を観賞しました。

「Motion Texture」は、天井から床に映写された映像が、鑑賞者が踏み込むことによって水面のようにさざ波立ち変化してゆく、とても美しい作品です。映像の上で遊ぶのはもちろん、椅子も据えられている親切設計ですので、ただひたすら眺めているのも一興。
偶然性と一回性を鍵にした作品だけあって、見ていてまったく飽きません。
ちなみにこの作品、QuartzComposerというアプリケーションで作っているそうなのですが、これ、私が先日飛行機雲を作った時に使用したのと同じソフト。同じアプリケーションでこんなにもスゴいものができるのかと舌を巻きました。脱帽です。
この作品は一階のオープンスペースで無料公開されていますので、興める方はぜひ足を運ばれてみてはいかがでしょう。
なお、この作者さんは在仙のクリエーターで、「未来派図画工作」というサイトも運営してらっしゃいます。
公開されている数々の作品はとんでもなくハイクオリティ。
「20世紀ボヤージ」「少年少女オデッセイ」などのスクリーンセイバー群は圧巻。Macユーザーは必見です。
(未来派図画工作のサイトは→こちら

上映プログラム「G」はresfest2005の受賞作11本と、タナカカツキ氏作品16本。
時間の都合ではじめの4本は見逃してしまいましたが、残りはしっかり観賞。
印象に残ったのは以下の5本。
Wilfrid Brimo『Shakedown "Love Game"』: 潔くあけすけな感じに好感。
Sally Arthur『Perfect』: 前の『Love Game』と同じ展開かと思いきや、突き抜けたどんでん返し。思わずニヤリ。
田中裕一『POLYTICS"I My Me Mine"』: 以前の田中裕一氏のトークイベント時にも見たミュージックビデオ作品。ロボットダンスを踊る人々。ストロングマシーン2号ちゃんの姿が忘れられない。"This person is not menber of POLYTICS."というテロップが大好きです。
タナカカツキ『SUNDAY』: 両手両足をばたつかせて飛翔する人影たち。異様な光景。しかし、私も腕で空気を掻いて飛ぶ夢をよく見るので、よ~く考えれば客観的にはこんな光景なのかも・・・と妙に身につまされました。
タナカカツキ『小さなおっさん』: アイデア勝ち。やられました。あのチープさも立派な表現上の武器ですね。
タナカカツキ『RS-3000/ring a rose eat propher 21』: 風景の中の風景の中の風景の中の・・・・・と続く入れ子構造で男女の一生を表現。クローズアップに終始するのかと思いきや、ズームダウンで伏線を生かす手法に感嘆。

タナカカツキ氏の作品をきちんと見たことがなかったので、まとめて見られて新鮮でした。色遣いや頻出モチーフに作家個性が現れていたような印象を受けます。好きな人はハマるだろうなと頷けました。
わたくし個人的にはカラフルすぎる表現がいまいち好きではないので氏の映像にはそれほど反応しませんでしたが、構成等で感得するところが大きかったです。
この他、resfest部門ではNAMIKIBASHIの「SAKURA WONDERFUL JET」があって思わずびっくり。
大画面で見たい方はぜひ(笑)。
なお、上映プログラムは「G」「R」「B」の3種。
7階シアターで販売されているパンフレットを購入すると、すべてのプログラムを開催期間中何度でも見ることができるそうです。非常にお得。ショートフィルム好きにはおすすめです。

この「イメージの庭vol.3」は6月14日(水)までの開催。
詳細はせんだいメディアテークのHP→こちら でご確認を。



<font size="-3">ユニクロのゲシュタルト崩壊。</font>

2006-05-29 21:25:58 | アートなど
私がいつも密かに覗いているhashさまのHASH BLOGで知った情報(該当記事は→こちら)です。

ユニクロがニューヨークへ進出したらしいのですが、それはさておきサイトがたいへん面白い!
UNIQULO Soho NY Site→こちら
英文字とカタカナのロゴが規則的かつ不規則にリズムを刻んで動くさまは見ていてまったく飽きません。
眺めるうちにゲシュタルト崩壊めいた感覚が惹起され、それがまた心地良い。
非カナ文化圏の方々にとってカナロゴはこう見えているのではないか?とさえ思えてきます。
ちょっとした疑似体験をしているかのようで興味深いです。
フラッシュばりばりのサイトなのでちょっと重いかもしれませんが、一見の価値ありかと。
おすすめです。




<font size="-3">KKP#5「TAKE OFF」5月20日公演。</font>

2006-05-20 23:54:51 | アートなど
兵庫県の神戸オリエンタル劇場で上演されている、小林賢太郎プロデュース公演第5作「TAKE OFF」の昼および夜公演を観て参りました。
神戸の方々のノリににんまり。やはり、公演の土地柄というのは確実に存在すると思います(笑)。
ネタバレになるといけませんので内容には触れませんが、連想したことを2点だけ。
まず、題名を知った時からずっと連想していた「OpenSky Project」。これを、再び思い出しました。
「OpenSky Project」とは、現代アーティストの八谷和彦氏が主催するアートプロジェクト。軽量小型の飛行機(まるでメーヴェのようなもの)で有人飛行ができることを証明する、というものです。この「OpenSky Project」のテストフライト動画を先日見たばかりだったので、公演中、本筋とは無関係なところでいろいろなことに思いを馳せてしまいました(笑)。
「OpenSky Project」のことが気になる方は八谷氏ご本人のサイト→こちら をどうぞ。

連想もうひとつ。
KKPは、すべての作り手のための作品なのかもしれない、と何となく感じました。
ものをつくるということにはそれ自体に何か特別な価値があるのではないかと感じさせてくれる、とでも申しましょうか。
これは佐藤雅彦氏の諸講演や先日の岩井俊雄氏の講演を聴いていても感じたことなのですが、人はなぜものをつくるのか、という命題への答えを、各人が各作品を通じて世に呈示しているのかもしれない、そんなことを考えた次第です。



<font size="-3">東京日帰り part2。</font>

2006-05-14 23:54:06 | アートなど
本日は、昨日に引き続き、日帰りで東京へ行って参りました。
目的は岩井俊雄氏の公開講座。
(詳細はこちら→東京工芸大学 芸術学部 メディアアート表現学科 特別公開講座[岩井俊雄 創作の軌跡~パラパラマンガからメディアアートまで]

午後3時から6時までの予定だったのですが、岩井氏大サービス。
1時間以上も延長して、結局終わったのは7時過ぎ。
岩井氏の原点とも言える幼少期の体験のことに始まり、驚き盤やゾートロープとの出会い、パラパラ漫画とコンピュータ、インタラクティブということ、アナログ映像メディアの進化を仮想して作った作品群の話、音と光を追求した話、娘さんとの交流をきっかけとした最近のアナログ回帰の話、などなど、実演あり映像あり解説あり質疑応答ありの、まさに「岩井俊雄のすべて」とも言えそうなほど熱意あふれる講義でした。
ぜひとも見てみたいと思っていた「Seeing Debussey」の映像、「Another time, Another space」の映像や実演が見られて、もうそれだけでも興奮気味なのに、「エレクトロプランクトン」と「TENORI-ON」のライブパフォーマンスまであって、いろいろな意味で動悸が止まりませんでした。
講義自体が東京工芸大学の公開講座だったこともあり、聴講者のほとんどが学生さん。
理路整然としながら的確に言葉を選んで表情豊かに語る岩井氏の姿には、学生さんたちへの熱い思いのようなものを感じました。
加えて、娘さんとの交流から再発見した「作ることの楽しみ」について述べる岩井氏の真剣さに感服。
映像メディアとアートの進化を体現しているかのような岩井氏が、メディアのもたらす身体感覚にこだわり、その本質的な意味について真摯に取り組んでいる様子が伝わってきて非常に感慨深いものを感じました。
『娘に携帯やパソコンなどのデジタルデバイスを渡すようになる時までに、ハイテクとアナログをミックスしたような何か、僕ならではの"何か"を作りたいと思っている』と語った岩井氏。
今後、氏がどのような世界を展開してくださるのか、ものすごく楽しみです。ますます目が離せません。
4時間もぶっ続けで語り通し、終いにはマイクのほうが先に電池切れで参ってしまった(笑)ほど熱心に語ってくださった岩井氏に心から感謝。

なお、講義のメモを取ってきたので簡単な覚え書きをアップしようかと思ったのですが、あいにくちょっと熱を出してしまいました。興味のある方は、期待せず長期的にお待ちいただければと思います。



<font size="-3">東京日帰り part1。</font>

2006-05-13 23:57:10 | アートなど
今日は日帰りで、東京現代美術館で開催中の「カルティエ現代美術財団コレクション展」を見て参りました。
前評判があまり聞こえてこなかったので高をくくって午後2時半ごろに入場。
しかし、完全に見くびっておりました。
午後6時閉館のアナウンスで慌てることに。
ぜんぜん時間が足りません。
映像作品と、写真のスライドショー作品が誤算の元でした(笑)。
全般的に大型の作品が多く、作品形態も様々。見応えたっぷりです。
特に印象に残っているのは以下の二つ。

ポスターの写真にもなっている「イン・ベッド」が圧巻。予備知識なしに見たので度肝を抜かれました。
敢えてここでは詳細を書きませんが、あれだけでも一見の価値はあるかもしれません。
フィルム作品の「我らの世紀」にも不思議な魅力を感じました。クロニクルとドラマ、両者の要素が混在しているとでも申しましょうか。モノクロで台詞もないのに、30分もの上映時間があっという間に感じられました。
ちょっとだけKKP を連想させるような場面もあって個人的にニヤリとしてしまいました。
時間さえあればもう一周見たかったです。残念。

そういえば、なんと、目の前にご本人がいらっしゃる作品もありました。
松井えり菜氏。多摩美術大学の在学生で、2005年に作品がコレクションに収蔵されたとのこと。
たしかに個性的な作品&人物でした。ご本人含めて「作品」なのかもしれません。
何となくタニシK氏のことを思い出しました。

他にも印象的な作品群がたくさんありました。
面白い物好きにはおすすめ。
詳細はこちら→東京現代美術館HP でご確認を。



<font size="-3">意図せずガンダムづくしだった日。</font>

2006-05-08 22:47:22 | アートなど
昨日、5月7日は、録画していたTV番組ひとつと、現代美術の展覧会をひとつ観ました。

録画していたのは4月13日にNHKBS-2で放映された「忙中趣味あり」。ラーメンズの片桐氏ご出演ということで録画していたわけですが、なかなか時間がとれずに放置してありましたところ、連休最終日にようやく見ることが叶いました。
趣味に熱中する人たちを紹介したこの番組。登場する人々もなかなかの強者揃いです。一般市民でこれですから、片桐氏がどんな扱いで登場するのだろうと思っていたら、密着ドキュメンタリー形式。
ガンダムプラモデルのジャンクパーツを使った顔アートができるまでを追ったものでした。
自宅の一室で繰り広げられる作業と、意図を超えて巨大化してゆく作品。
なにもかもが片桐氏らしい(笑)。
いつも常識を越えた「自分の作品」を生み出してしまう片桐氏に天性の芸術家魂を感じました。

さて、午後からは、仙台市のせんだいメディアテークで開催されている「ガンダム展」を見て参りました。
過日こちらのブログでも紹介いたしましたが、これ、ガンダムをテーマにした現代アートの展示会です。
むかしアニメをあまり見ていなかったせいか、ガンダムにはいまひとつピンとこない私ですが、八谷和彦氏の関わる「サイココミュニケーター適性試験」という作品が見てみたくて足を運びました。
2月の文化庁メディア芸術祭でデモテープを見て面白そうだなあと思っていた作品です。
体験型の作品で、いわば「ニュータイプ適性試験」という体裁をとっています。
一次試験でカードの絵柄当て検査をして、2回続けて当てることができると二次試験の受験資格が得られます。二次試験では二人がペアになって、一人が送信者、もう一人を受信者として役を割り振ります。受信者は足下だけを見ながらテストフィールドに吊るされた球体を避けて進まねばなりません。ふつうならば球にぶつかってしまうところですが、そうならないように送信者が思念を送ってうまく導く、という試験です。送信者は頭部に、受信者は耳の下に簡易電極を貼り付けます。送信者は眼球を動かすことで脳の前頭前野を活動させ、その活動電位は増幅器を通って受信者に届き、平衡感覚に作用して受信者の進む方向に作用を及ぼします。
私は残念ながら一次試験で落ちてしまった(笑)ので体験することはできませんでしたが、二次試験の被験者を見ていると案外送受信はうまくいっているように見受けられました。特に子供の反応性が良く、なんだか妙に感心してしまいました。
送受信装置に興味津々です。
二次試験のテストフィールド脇には、この適性試験の元となった論文(を模した作品)が展示されており、そのあまりの徹底ぶりには読んでいて思わずニヤニヤしっぱなしでした。コンセプトや心意気はもちろんのこと、場のアートとしての完成度の高さにはただただ脱帽です。
体験型はこの1作品のみでしたが、他にも圧巻の巨大彫像や、アニメの効果音を具現化した立体作品、スクリーンでアニメ作品の某場面イメージを映像化したインスタレーション、モビルスーツを題材にした絵画、アニメ作品中のモチーフを再現した書画、写真、ペイント、インスタレーションなど、実に多様な作品が展示されていました。
図録には様々な文化人のコメント・解説が寄せられており、中でも斉藤環氏と茂木健一郎氏の解説が印象的でした。

やはり、アニメ原作を知らない私にとってはピンとこない部分が多かったのですが、それでもなかなかに興味深い意欲的な展覧会ではないかと思います。きっと原作ファンにはたまらない催しだったのではないでしょうか。
不思議なもので、原作と切り離せるような作品(つまり、直接的な絵や設定をモチーフに使っていない作品)のほうが私には面白く感じられました。
各作品に対する原作ファンの方の感想も聞いてみたいなあと、何となく思った次第です。

ところで、ガンダム展を見ていてふと思ったのが、直前に見た片桐氏の立体作品のこと。
あの展覧会の会場に片桐氏のガンプラ顔アート作品があっても、まったく見劣りしないんじゃなかろうか、と(笑)。
ガンダムと迫力とコンセプトと個性が見事に同居した片桐氏の作品は、立派に芸術なんだと思います。

そして気がつけば、意図せずガンダムづくしだった昨日。
何だか妙な気分です(笑)。
なお、このガンダム展は5月21日まで。仙台の次は愛知県高浜市と北海道札幌市を巡回する模様です。
詳細はこちら→せんだいメディアテーク「GUNDUM 来るべき未来のために」  でご確認を。



<font size="-3">栗コーダーカルテット楽譜集を購入。</font>

2006-05-05 22:52:15 | アートなど
過日こちらでもご紹介していた「栗コーダーカルテット楽譜集」を購入しました。
買うまでの楽しみにと思い、詳細な収録曲情報を見るのは控えておりましたところ、楽譜を開いてにんまり。
大好きな「マヨネーズ第2番」が載っている!
ダウランドの曲もなにくわぬ顔で入れいているあたり、古典へのひそかな敬意を感じました。
「ピタゴラスイッチオープニングテーマ」は二重奏バージョンもあり、親子への気遣いがとても微笑ましい。
そして、「Jam ザ・ハウスネイル」のオープニングテーマには思い切り笑ってしまいました。
短いっ(笑)!
潔いページの白さが素敵です。
巻頭と巻末にはメンバーによるコメントも。
そして、なにより『らしいなあ』と感じたのが、一番最後のページ見開き。
ライブ演奏と流動的で有機的な音楽を愛する彼らならではのサービスに思えます。
気になる方は、ぜひ実物を手に取ってみてはいかがでしょう(笑)。
ポップなリコーダー演奏集団、栗コーダーカルテット。CDも楽譜も、あわせておすすめです(^^。



<font size="-3">本城直季「small planet」。</font>

2006-04-27 20:11:53 | アートなど
写真家、本城直季氏の写真集「small planet」を購入しました。
近所の書店で発見、即購入したわけですが、まさかこんな田舎の小さな本屋にあるとは思ってもみなかったので驚きました。

本城氏の写真はとても特徴的です。
使っているのは「実際の風景をまるでミニチュアのように撮る」という手法。
その手法を利用して独特の世界観と空気感(トーン)を構築しています。
KKP#3「PAPER RUNNER」のパッケージデザインにも使われていますので、ラーメンズ好きにはおなじみの写真家さんかもしれません。
美しい透明感と奇妙な錯視感が同居した写真は、きっと一度見たら忘れられないでしょう。
氏の手法と作品はすでにひとつの「分野」なのではないかと思えます。

「つくりものみたい」に見える現実も、よく考えれば実際には「つくりもの」。
本城氏の写真作品は、私たちが住む世界のほとんどは誰かが作ったものだということを思い出させてくれるような気がします。
不思議で美しいクラクラに満ちた写真集。
巻末には佐藤雅彦氏による解説も掲載されています。
ちょっとしたおすすめ。
気になる方はamazonのリンク↓から様子をうかがってみてください(笑)。

<iframe src="http://rcm-jp.amazon.co.jp/e/cm?t=hazamanoiori-22&o=9&p=8&l=as1&asins=4898151728&fc1=000000&IS2=1&lt1=_blank&lc1=0000ff&bc1=000000&bg1=ffffff&f=ifr" style="width:120px;height:240px;" scrolling="no" marginwidth="0" marginheight="0" frameborder="0"></iframe>


<font size="-3">佐藤雅彦×茂木健一郎対談「ひらめきのくらくら」。</font>

2006-04-25 04:48:28 | アートなど
茂木健一郎氏のブログ「クオリア日記」で音声ファイルが公開されている対談、「佐藤雅彦×茂木健一郎『ひらめきのくらくら』」を聞きました。
この対談は、茂木氏の「ひらめき脳」刊行記念イベントとして4月23日(日)に青山ブックセンターで開催されたもの。
私は参加できませんでしたが、茂木氏の音声ファイルのおかげで内容を余すところなく(?)楽しむことができました。
茂木氏のブログ該当記事は→こちら

3月末に購入していながら使用していなかったiPod nanoをやっとセットアップしたところだったので、nanoへデータを入れ、明日の通勤時に聞こうと思っていました。
しかしふと魔が差して、さわりだけでも聞いてみようと思ったのが運のつき。
冒頭から茂木節炸裂。
対する佐藤氏の受け答えの面白いこと面白いこと。
結局寝ないで全部聞いてしまいました。
夜中だというのに一人で大爆笑してしまうこともしばしば。
そして、佐藤氏の語る認識傾向に頷くこともしばしば。
私も通学経路はいろいろ試していたクチだったので、佐藤氏と一緒になって『え~っ、茂木さん、小学生だったらふつう寄り道して色々なところを通ろうとしますよ~!』と心の中で訴えていたら、会場アンケートではこっちが少数派とのこと。
釈然としないながら、佐藤氏との傾向の類似に思わずニヤニヤしてしまいました。
対談の雰囲気としては昨年8月にあった両氏対談の延長というべきか、『茂木氏による佐藤氏分析』といったスタンスは相変わらずでしたが、今回はそのおかげで佐藤氏にも思わぬ発見があった模様。
聞いていて非常に微笑ましく思えました。
それと、今回音声ファイルを聞いていて気付いたことがひとつ。
茂木氏はメタファーと既存の概念を持ち出して話題を展開することが多く、対して佐藤氏は自分の経験則に基づく概念をなるべく正確に言語化しようとしながら話すことが多いように感じられました。
それと、佐藤氏には非常に厳密なリズム感が備わってらっしゃるようにも感じられました。CMの音を口頭で再現するときの正確性が尋常ではないような気がするのです。CMで使用した音は、リズムが完璧なユニットとして佐藤氏の中に存在していて、それを再生しているのではないか、という印象を受けました。

佐藤氏の「『時代性という文脈に依らない表現』を大切にしたい」という意見。
そういえば、児玉裕一氏や小島淳二氏、谷篤氏も同様の趣旨のことをおっしゃっていたことを思い出しました。
確固たる個性を放つ表現にはそういった要素が備わっているものなのかもしれません。
そして、冷静に考えてみると、私自身が好む表現は「文脈に依らない独自のルールを持つ」ものである傾向が強いようです。だから、面白いけれど人にはなかなか説明し難く、そしてそれがすなわち『分類し難い不思議なもの』なのかな、と妙に納得してしまいました(笑)。

いずれにせよ、こんなに面白くて貴重な対談を公開してくださった茂木氏に心から感謝です。



<font size="-3">東京遠征4/15。</font>

2006-04-16 01:32:34 | アートなど
本日4月15日(土)は、東京台場の日本科学未来館で開催中の企画展と関連シンポジウム、そして八重洲の和田画廊で開催されている鈴木太朗氏の作品展示を観て参りました。

まずは、科学未来館の企画展。
「脳! 内なる不思議の世界へ」というテーマでの展示だったのですが、私にとっては不満の残る企画展でした。
内容はいろいろな生物の脳(神経節や中枢神経系含む)の標本展示、そして、脳のはたらきを意識させる体験型展示、脳の測定装置などの紹介、といったものです。
無脊椎動物からヒトにまで至る動物の神経節~脳を総覧できる標本は圧巻でしたが、欲を言えば比較解剖学的見地からの解説が欲しかったなあと思えます。小脳の大きさや嗅球の大きさの違いに着目するだけでも興味深さが大分変わってくるだろうにと思えて残念。
簡単な体験型装置を多用してみたり、NINTENDO DSが至る所にあったりと、観客へのアプローチ工夫は見て取れるのですが、どうにも私には『シロウト騙し』といった印象が拭えませんでした。
あの展示を見て『へえ~、科学ってすげ~っ!』とは絶対にならないと思うのです。
どのようなコンセプトでの企画展なのかが曖昧だったように思えます。
『脳の不思議』を謳うのならば、もう少し『なぜだろう?』と思わせる工夫が欲しかったなあと感じました。
まあ、こう感じるのは私が生物畑の人間ゆえ見る目が厳しくなっているせいかもしれません。

さて、次に、13時半からの特別シンポジウム「脳の不思議 認知の仕組み×表現の広がり」に参加してまいりました。これは上記企画展の関連イベントとして日本科学未来館7階みらいCANホールで開催されたもの。
過日こちらのブログでも情報を挙げておりましたとおり、佐藤雅彦氏と坂井克之氏がパネラーとして出演されました。
こちらは予想以上の面白さ。あまりにエキサイティングで、終了後に会場を出てからもしばらく動悸とクラクラが止まりませんでした。
シンポジウム前半は演者おふたりによる研究内容プレゼン、後半は互いのプレゼンを聞いてのパネルディスカッション、さらに最後には会場からの質問も受け付けていました。
完璧な学会付属シンポジウム形式です。
佐藤氏は表現について、坂井氏は認知(主に脳のショートカット関連)についてプレゼンテーションなさいました。
佐藤氏のプレゼンは期待に違わず、真摯でわかりやすい内容。実例をビデオ映像で示しながら解説を加えてゆくのでとても説得力があります。加えて、本人は大真面目なのに会場の笑いを誘うあの不思議な空気のおかげで、始終和やかで示唆に富む講義でした。最後には「TOKYO STRUT」という新作アニメーションも披露。バイオロジカル・モーションを基礎としたシンプルでラディカルな、非常に美しいアニメーションでした。思い出すだけでもドキドキしてしまいます。岩井氏との対談のときに話題に上っていたのはこのアニメーションのことだった模様。佐藤氏と植田美緒氏共同名義のようです。早く一般公開されることを熱望してやみません。
佐藤氏の話は interesting で exciting で happy。 毎度のことながら感服してしまいました。

坂井氏は佐藤氏の後というハンデ(笑)を負わされつつ、脳のショートカットというホットな話題をわかり易く丁寧に示してくださいました。脳のショートカットというのは、言わば一般的な情報処理経路を飛び越えて、経路の『奥』で情報が処理される現象です。今までの常識を覆すような画期的な知見なのだそうで、ここ1~2年で盛んになってきた分野とのこと。認知の本質に迫るエキサイティングな概念をたくさん紹介していただきました。
ちなみに、脳のショートカットとその周辺の話をした後、坂井氏はこんな言葉でご自分の発表を締めくくってらっしゃいました。
『脳科学は佐藤雅彦氏を先回りできるか?』
坂井氏は佐藤氏に嫉妬している(笑)のだそうです。
認知科学者が必死になって模索していたようなことを露呈させる表現を、佐藤氏はポンッと生み出してしまう、と(笑)。
坂井氏は、『佐藤氏は脳のショートカット現象を表現手法に使っているのではないか?』という仮説を提唱してらっしゃいました。
そんなわけで坂井氏は佐藤氏の表現に興味津々の模様。佐藤氏も脳のショートカットに興味津々の様子。互いの仕事が示唆的にはたらいたらしく、ディスカッション終了後のみならず終演後もステージ上で熱心に話し込んでいた両氏の姿が印象的でした。研究者同士の幸福な出会いは喜ばしいことです(^^。
会場からの質問は3つほど。両氏ともいずれにも丁寧に答えてらっしゃいました。
私も坂井氏に質問をしたかったのですが、時間の関係で叶わず。残念です。
なお、シンポジウム内容に関しては、覚え書きとして簡単にレジュメをアップする予定ですのでいましばらくお待ちくださいませ。

そういえば、今回特に印象に残った場面がひとつ。
佐藤氏がCMをつくる過程の作業(映像のブラックアウトコマ数を1フレームづつ調整していたという話)を評して『それって完全に実験心理科学ですよね?』と突っ込みを入れた坂井氏。これには私も同感。大きく頷いてしまいました。
やはり佐藤氏は潜在的に研究者魂をお持ちなんだと思います(笑)。

さて、最後に、八重洲の和田画廊で開催中の「現象からの新しいかたち展 -再構築芸術へのいざない-」。
こちらは、メディアアートという括りに収まりきれない3人の現代アート作家を週替わりで紹介する展覧会とのこと。
展覧会冒頭を飾る今週の作品は鈴木太朗氏の新作。
あきあかねさんのブログ「オムレツおばさんの独り言」の記事で開催を知り足を運びました。
鈴木氏の作品実物を初めて見たのは今年の2月。
横浜BankARTで開催されていた「エレクトリカルファンタジスタ」で鈴木氏の作品「風の通り道」を見て感銘を受けた(そして、たまたま作品の調子が悪くとても悔しい思いをした)ので鈴木氏の作品はとても気になっておりました。
そこへきてこの情報。鈴木氏の作品展示はちょうど明日(16日)まで。行かない手はありません。
行ってみると、こぢんまりとした画廊に作品は一点のみ。ですが、これがとても面白い。天井からテグスで吊り下げられた無数のプロペラたち。これが、触れようとすると次々上に逃げてゆくのです。じ~っとしているとプロペラはまた降りてきて手に留まります。が、ちょっと動くと即逃げてしまう。まるで小さな羽根ある生物の群落に迷い込んだかのよう。
プロペラ軸の上下運動はセンサーとモーターで厳密に制御されていますが、じつはプロペラそのものは角度をつけただけの紙なのだそうで、上下運動に伴う空気抵抗によってプロペラが風車のように回るカラクリになっているそうです。サラサラと優しい音をたてて軽やかに逃げるプロペラたちは美しくてどことなくユーモラス。大人が見ても十分すぎるほどに面白いけれど、子どもたちが見たら大興奮して喜びそうだなあと感じました。
会場には作家の鈴木氏ご本人がいらっしゃり、作品の解説をしてくださいました。キュレーターの方や、たまたま会場を訪れていたメディアアート作家の方とお話することもでき、とても貴重な体験になりました。
ゆりかもめ全線不通の影響で時間がギリギリになり一時は行けるか否か危ぶまれたのですが、足を運んで本当によかったなと思います。

15日は、午前3時の「エレ片のコント太郎」にはじまり、長~く充実した1日でした(笑)。
寝なくても平気な体質に感謝。



<font size="-3">【情報】茂木健一郎×佐藤雅彦 トークショー「アハ!体験 ひらめきってなに?」。</font>

2006-04-12 19:48:41 | アートなど
茂木健一郎氏のブログ「クオリア日記」で知った情報です。

4月23日に東京の青山ブックセンター本店で、茂木氏の書籍刊行記念トークイベントが行われるそうです。
ゲストは佐藤雅彦氏。テーマは「アハ!体験 ひらめきってなに?」。
残念ながら既に参加受付は締め切られているようですが、茂木氏の関わる対談なのでおそらく後ほど音声ファイルが公開されるものと思われます。
茂木氏に期待しましょう(笑)。
なお、トークイベント詳細は→こちら
でご確認ください。



<font size="-3">東京現代美術館「転換期の作法」リベンジ&ポツネン「○-maru-」3月21日公演。</font>

2006-03-22 01:10:23 | アートなど
本日は、東京現代美術館で開催中の「転換期の作法」再観賞と、東京グローブ座で上演されていた小林賢太郎氏の「ポツネン『○-maru-』」3月21日14時公演(東京千秋楽)を観て参りました。
「転換期の作法」は、前回観られなかった映像作品を観たくて行ったのですが、やはり今回も時間切れ。
アゾロのギャラリーをめぐる映像を観られなかったのが残念です。

「ポツネン『○-maru-』」千秋楽公演では、小林氏がいろいろとやらかしてらっしゃいました(笑)。が、アドリブも程良く、総じて穏やかな温かい公演だったと思います。
詳細はいずれ覚え書きにて。
ところで公演中、ひとつ告知がありました。
「ポツネンオリジナルトランプ」が発売される模様です。
詳細はRahmens.net で近日発表とのこと。
小細工・小物好きは要チェックです。



<font size="-3">多摩美術大学情報美術科卒業製作展&現代美術館「転換期の作法」。</font>

2006-03-13 02:53:17 | アートなど
土曜は東京出張のついでに、美術展2つを観て参りました。
まず、横浜の赤レンガ倉庫1号館で3月10日(金)から12日(日)まで開催されていた多摩美術大学情報芸術科の卒業製作展。
先日の文化庁メディア芸術祭の会場でチラシをみかけて気になっていたもの。
(サイコロをモチーフにしたデザインがシンプルで非常に美しいのです。)
横浜在住の、大学時代からの友人を誘って行ってきました。
行ってみれば、規模の大きさに驚きました。
かなりの作品数です。
しかし卒業製作展とあって、まさに玉石混交。
荒削りなもの、企画倒れのもの、コンセプト勝ちのもの、アイデアは良いのに技術が追い付かないもの、ハイクオリティのもの、等々。
特に印象に残っているのは、前川峻志氏の「千篇書道」という作品。暗い中、スクリーンに映写されている画像に表示されたアドレスへメールを送ると、その文字が円の集積として美しく表示される作品です。
文字数制限によるエラーが頻発しており、技術的には課題があるものの、充分メディアアートとして世の中に通用する作品に思えました。これには友人も面白いと絶賛。アイデア勝ちだと思います。
そして、文化庁メディア芸術祭のアート部門でも優秀賞を受賞していた津島岳央氏の「メディアアートの寓意」。会場での調整に難航しているようでしたが、やはり群を抜いたクオリティが印象的でした。
映像作品もひととおり観てきたのですが、やはり『映像は難しい』ということを痛感させられました。
絵には力を入れていることが感じられましたが、いかんせん、音にまできちんと気を使っている例は少なく、映像表現における音の扱いの重要性を再認識しました。
こうやってみると、自ら『素人』と名乗っているコンドルズの作る映像はかなりのハイクオリティであることがうかがえます。妙なところで妙な認識を新たにした体験でした。
他にも、生徒のご家族とおぼしき方々が大勢いらしていたようで、普段接することの少ないメディアアートというものに触れ、戸惑いと好奇心の入り交じった感想を述べる方々の姿がこれまた印象的でした。


さて次に、木場にある東京都現代美術館で開催中の「転換期の作法~ポーランド、チェコ、スロバキア、ハンガリーの現代美術~」展、ついでに「日本画アニュアル2005」展を観て参りました。
こちらは1人での観賞。
入館時にすでに16時を回っており、閉館の18時までに観られるかがわかりませんでした。
そこで、チケット販売所で聞いたところ、『両方で一時間くらいで観られます。』との話。それでも迷っていると、『中には30分くらいで出てくる方もいますよ。』とのダメ押し。それでわざわざ共通券を購入したわけなのですが、ところがどっこい。フタを開けてみれば、とても1時間なんかでは観られないほどボリュームたっぷりの展示でした。
おかげで、「日本画アニュアル2005」のほうは、15分ほどで駆け足観賞する羽目に。
しかも、片方の半券があれば、もう片方の展示は差額で観られる、と出口に表示されているではありませんか。
ならばわざわざはじめから共通券を買う必要はなかったわけです。
「転換期の作法」は、映像作品だけで3時間20分かかるらしく、事前に手続きをしておけば1回に限り再入場できるサービスを行っていました。
これはとても嬉しいサービスです。
ですが、それでチケット売り場の対応が正当化されるというものではありません。
『どうせ真剣に鑑賞する人間はいないだろう』とでもいわんばかりのチケット売り場の対応。
美術館でこれほど腹立たしい思いをしたのは初めてです。
チケット売り場の方は、もっと責任を持って正しい情報を提示して欲しいものです。
肝心の展覧会内容は、予想通りのクオリティでとても楽しめました。
東欧の現代美術センスは独特の個性を持っており、非常に面白いです。どこかユーモアの漂う作品が多く、とりわけ「アロゾ」というグループの映像作品には声を出して笑ってしまいました。
他にもINERという架空の工業製品シリーズ(肉体労働を再現するためのフィットネス機器)や、架空のバイオ植物シリーズ(完璧な栄養バランスの果実、人間の皮膚で共生する植物etc.)など、どこかラーメンズやNAMIKIBASHIの作品を思い起こさせる作品があってひとりでニヤニヤしてしまいました。
今回は時間がなく、映像作品はほとんど飛ばして観なければならなかったので、ぜひともリベンジを果たしたいです。
「日本画アニュアル2005」のほうは、近年活躍している若手日本画家6人の作品を集めた作品展。
日本画の枠を飛び越えるようなエネルギーと個性を持った作品群に圧倒されました。
じっくり観られなかったのが、ただただ残念でなりません。
なお、両展示とも会期は3月26日まで。
興味を持たれた方はどうぞお早めに。



<font size="-3">美術館&ポツネン「○-maru-」札幌3月3日公演。</font>

2006-03-04 08:56:55 | アートなど
昨日3月3日は、美術館2件と舞台を1ステージ観て参りました。
本当は、午前中にモエレ沼公園へ行こうと決めていたのです。しかし、出かけよう、という段になって盛大に雪が降り始めたので挫折。結局は室内遊技(?)に終始しました。
まずは、札幌の三岸好太郎美術館。作風が極端に変わってゆく、私にとって謎の画家。「のんびり貝」を見たくて行ったのですが、ちょうど開催されていた企画展や建築物としての面白さもあいまって、予想以上に満足。
次に、北海道近代美術館。企画展と常設展の両方を見て参りました。企画展では今までにないほど大量の浮世絵を観賞。人生の「一日浮世絵観賞枚数記録」更新です(笑)。藍擦り浮世絵の実物をはじめて目の当たりにし、その美しさに感動。わたくし、単色の魅力に弱いらしいです。
常設展では、思わぬところで「十牛図」と嬉しい遭遇。日本画やエッチングなど、いろいろ展示テーマがありましたが、私は2階のガラス作品が気に入りました。


さて、その後東急ハンズへ移動。いろいろと素材を買い込み、昨日の「ポツネン『○-maru-』」で気になっていた小細工をホテルで試作。ひとりにんまり。
その後、前日に引き続き、札幌かでる2.7で上演中の小林賢太郎「ポツネン『○-maru-』」3月3日19時公演を観て参りました。
今回は、2日とはまた客席の雰囲気も異なり、非常に興味深い違いを体験。
複数回観てよかったと心底思わせるような、とても印象深いステージでした。
札幌では残り1公演。
最後はどのような空気で終幕するのか、楽しみです。



<font size="-3">メディアアートづくし。(文化庁メディア芸術祭+α)</font>

2006-02-26 23:56:56 | アートなど
東京遠征2日目。本日は展覧会を2つと、オープンスペースアートを一点観て参りました。
まずは、昨日に引き続き、恵比須の東京写真美術館で開催されている「文化庁メディア芸術祭」。
本当は原美術館で「オラファーエリアソン 影の光」をもう一度見ようと思っていたのですが、とても混んでいるらしいという情報なので予定を変更し、こちらへ足を運びました。
朝一番で行ったので、昨日見られなかった3階および2階の展示をじっくりと見ることができました。
3階のアート部門にはとても面白い作品がたくさんあって大満足。とりわけ印象に残ったのが、大賞をとったAlvaro CASSINELLI氏の「Khronos Projector」と村上史明氏の優秀作「spyglass」。
「Khronos Projector」 はスクリーンに映し出された映像が、画面に触れることで部分的に時間を変えてゆく装置です。スクリーンの静止位置を現在として、そこから未来の画像を奥に、過去の画像を手前に重層してあるので、スクリーンをたわませると、その部分だけ画像の時間が行ったり戻ったりするのです。スクリーンのたわみは波のように伝播しますので、触るたびに画面全体が影響を受けます。まるで時空が歪んだかのような映像が展開するわけです。時間軸を奥行きという物理的な位置情報に担わせた結果、驚きと示唆に満ち、かつ非常に美しい作品が出来上がったものと思われます。きっと一度体験したら忘れられないほどの印象を残すでしょう。作者の手腕に脱帽です。
「spyglass」は、望遠鏡を模したヴァーチャルマシン。覗き込んで見ることで風景が360°見渡せるだけでなく、手元のレバーを回すことで遥か遠くの風景を引き寄せることができます。見るという行為、そして、水平線の向こうまでをも見たいと望む人間の欲求を綺麗に体現した作品だと思いました。
本来のコンセプトとは関係ないのですが、わたくし、この「spyglass」を体験して真っ先に連想したものがありました。クラフト・エヴィング商會の「クラウド・コレクター」に登場する『望永遠鏡』です。「spyglass」はまさしく『望永遠鏡』だなあ、と思ったのです。『望永遠鏡』とは、水平線の向こうをどこまでもどこまでも永遠に見通せる望遠鏡。地球を一周して、最後には望永遠鏡を覗いている自分の背中までが見える、という架空の望遠鏡です。作中での吉田伝次郎氏の口癖「いや、ホントの話。」という言葉が聞こえてきそうでニヤニヤしてしまいました。
 他にも、正式な作品名は忘れてしまいましたが、太湯氏という方の「π円札」(π円のお札。ものすごく長~い。背景に細かく延々とπの小数点以下数字が記載されている。)、「Virtual Brownies」(テーブルの上の紅茶缶が勝手に動く。モニタを通して見ると、ブラウニー(妖精)たちが缶を動かしているのが見える。)、「control」(棒状の照明器具が無音で点滅している。ヘッドホンを装着すると、切れかけた蛍光灯のようなザップ音が聞こえる。音を聞くことで、点滅する明かりが切れかけた蛍光灯に見えてしまう。『音が映像を規定する』ことを体感させる作品?)などが印象的でした。π円札は個人的に大ヒット。大好きです。
 エンタテインメント部門とアニメーション部門では、それぞれ「芝浦アイランド3LDK広告映像」と「浮楼 -eight women, one life-」が印象的。どちらもジャンルを越えた美しさ・面白さがあると感じました。
 ところで、図録を見ながら面白いことに気付きました。
 この芸術祭においては、商用作品をエンタテイメント部門、芸術作品をアート部門として分類しています。言うなれば楽しませるための商品がエンタテインメント部門に、消費とは離れたところで個的な表現を追求した真面目作品がアート部門、ということになるようです。しかし展示を振り返ると、私にとってはエンタテインメント部門よりもアート部門のほうが格段に面白かったのです。多種多様なアート作品とくらべると、出来上がった『商品』は、なぜかどうしても精彩を欠いてしまう、そんな印象を受けました。本来楽しませるための『商品』と真面目なはずの『作品』との、楽しさの逆転現象。これはひょっとすると、エンタテインメント部門で紹介されていた現存の『商品』たちがinterestを欠いているからではないか、そんな気がしました。つまり、こういうところが、佐藤雅彦氏の言う『エンタテインメントからインタレストへ』の表現における大切さを実証しているのではないか、そんな気がしてとても興味深く思えました。


 さて次は、メディア芸術祭とタイアップする形で横浜の馬車道近くにあるBankART studio NYK で開催されている「Electrical Fantasista」。少し遠い場所でしたが、メディアアートばかりを集めた企画が面白そうだったので足を運びました。鈴木太朗氏の作品を見てみたかったのも大きな動機のひとつです。
行ってみれば観客は私1人だけ。実際に触ったり体験したりする作品が大半でしたが、おかげで待ち時間もなく作品ひとつひとつをじっくりと味わうことが出来ました。特筆すべきは会場中を埋め尽くした突起のある白いウレタン。カーペットのように床一面に敷き詰められています。ほんのちょっとだけ草間禰生的(笑)。そんな会場へは靴を脱いで入ります。歩き回っても足の裏に優しい質感、まったく疲れません。入り口で荷物やコートを預けられるので、身軽に作品を楽しむことが出来ます。腰を落ち着けたければ、座っても膝をついても寝転がっても大丈夫。それほど広くはない会場でしたが、もてなしの心に満ちた不思議に面白い企画展でした。
 作品数自体は多くありませんが、コマ撮りアニメ体験マシーン、そして、自分を対戦相手にテーブルホッケーができるゲームなど、普段体験できない面白さが満載です。面白いモノ、不思議なモノ好きにはオススメ。
 ひとつ残念だったのは、調整不調の作品があったこと。児玉氏の「モルフォタワー」と鈴木氏の「風の通る路」の調整が難しいようでした。「モルフォタワー」のほうは在廊中に直してくださったので存分に楽しむことができましたが、「風の通る路」は一部照明装置に不具合が。一部ユニットが不自然に点滅してしまい、せっかくの作品の繊細な呼応性が損なわれてしまって残念でした。物理的要件に支えられているメディアアートの弱点を、図らずも体験したようで興味深かったです。


  最後に観たのは、東京丸ビルのブルームバーグショールームに設置されている岩井俊雄氏の作品。
大きなタッチパネルに触れることで、音と光(LED)が呼応する装置です。「floating music」を彷彿とさせるような、とても楽しい作品。私好みです。静電気を検出して認識しているらしく、手が乾いているとなかなか反応してくれないのが唯一の難点。私はマフラーを帯電させて手に持つ裏技で、過剰なほどのセンサリングに成功、数種類のプログラムを盛大に遊んで参りました(笑)。
存分に遊んでからソファーで他の人のプレイを眺めていたのですが、見ているだけでも面白い。参加と観賞、2つの意味で楽しめました。
もしもこの装置が青色LEDが普及してからの作品だったらどれだけ綺麗なものになっていたか、夢想するとちょっとくやしいです。
メディアアートづくし。今回もたいへん有意義な東京遠征でした。


ところで余談。
横浜から東京へ向かう電車に、大勢のイタリア人の方々が乗車してきました。
新橋を東京と勘違いしたらしく、近くの日本人に『トウキョウ?』と訪ねる1人。
応えて『ノー、ノー、新橋。』と答える日本人女性。
するとイタリア人の方々は呼応するように『シンバシ!』『シンバシ?』『シンバシ!』『シンバシ!』『シンバシ!』
笑いをこらえるのがたいへんでした(笑)。