はざまの庵

分類し難い存在を愛でる覚え書き by aiwendil お気軽にコメントをどうぞ。

京極夏彦「邪魅の雫」読了。

2006-10-09 01:25:04 | 京極夏彦
京極夏彦氏の京極堂シリーズ新刊「邪魅の雫」を読みました。
土曜の夜から読み始めて、本当はもっと少しづつ読み進めるつもりでしたが、うっかり一晩で読了。
鉄鼠に劣らぬ800ページ越えのボリュームをぐいぐい読ませる手腕は毎度ながらさすがです。

昭和28年の東京、平塚、大磯を舞台に、奇妙に連鎖する変死事件の謎を巡るミステリー的妖怪小説。
キーワードは雫、邪悪、世間、死、殺。
雫がぽたぽたと垂れるような構造と、茫洋としてつかみどころのない邪気。調子を削がれて『らしくない』登場人物たち。
今回は直接的に妖怪名が前面に押し出されることも無く、声高な妖怪小説でこそありませんが、作品全体を覆う空気はまさしく邪魅という『妖怪』現象を描き出していたと思えます。
青木と益田、そして過去の作品にも登場する面々が頻出。
榎木津の露出は少ないものの、同時にこれはある意味榎木津の事件なのかもしれません。

個人と世間・社会・世界との関係性をめぐるモチーフが非常に面白いなと思いました。
また、第7章で展開する作家と批評をめぐる議論には拍手喝采。
書評が、作品という一次テクストを元にした二次創作であるという言説には大いに頷。
書評を4分類した林檎の喩えは秀逸です。

伏線と、もつれ合った事実。
意外性と予定調和の同居する展開。
思わず頷いてしまう言葉たち。
随所に笑いどころも多数。
とにかく極上のエンタテインメント小説だと思います。
活字好きにはおすすめです。
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2 コメント

コメント日が  古い順  |   新しい順
こんにちは! (かずは)
2006-10-20 06:17:17
こんにちは!
満を持しての京極堂シリーズ新刊!
やっぱり面白かったですよね。
ちなみに、書評のくだりは、ブログで感想を書き散らす身としては、非常に心強かったです(笑)
返信する
>かずはさま (aiwendil)
2006-10-22 14:44:34
>かずはさま
ようこそ!
そう、すべての解釈は正解なのです(笑)。
文学に限らず、あらゆる表現作品においてもこれは言えることだと思います。
常々思っていたことを京極堂が理路整然と述べていたので、何だか妙に嬉しくなってしまいました。

多忙で遅れてしまいましたが、そちらへも寄せていただきますね。
TBともどもありがとうございました。
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