はざまの庵

分類し難い存在を愛でる覚え書き by aiwendil お気軽にコメントをどうぞ。

この世のモノはみんな誰かが作っている。

2007-07-10 00:35:00 | ことば
Renga
近所にある新しい道にはレンガ敷の歩道がついています。
今日ここを歩いていて、ふとメディアアーティスト岩井俊雄さんの言葉を思い出しました。

昨年の5月に東京工芸大学で受けた岩井俊雄さんの公開講義。
その席上で岩井さんはこんなことをおっしゃいました。
『この世の中にあるものはみんな必ず誰かが一から作ったものなんですよ。』
モノ作り遊びを通して幼い娘さんにこのことをわかってもらいたい、という話の流れで登場した言葉だったのですが、わたくし、これにたいへん大きな衝撃を受けました。

普段まったく意識することはありませんが、たしかにこれは紛れもない真実。
フォークひとつとっても、工業デザイナーがいて、金属採掘業者がいて、金属製造者がいて、加工職人さんがいて、パッケージデザイナーがいて・・・と多くの人が関わり、誰かが実際的な『作る』作業をしてはじめて形になるものです。
紙袋のデザインしかり、広告チラシしかり、工業部品しかり、家庭用品しかり。
園芸品種や農薬、野菜や食品、建物から家電、爪楊枝や画鋲にいたるまで同様。
量産品であっても、原型をデザインした人や、製作機械をつくったりプログラミングした人が必ずいるはずです。
この世の中にあるものは、誰かが意志と労力をもって作り出したものしか存在し得ないと言っても過言ではありません。
そう考えると、じつにクラクラしてしまいます。
しかし、これは忘れがちな事実。
ともすると、私たちは『出来合いのモノは勝手に生じてはじめからそこにあった』かのような錯覚に陥ります。
作った人の存在を意識することは稀で、ひどくなると『それっぽい何か』は自然に転がっているかのように考えてしまいます。
この岩井さんの言葉を聞いてから、私も『この世のモノはみな誰かが作ったものだ』ということを常に念頭に置くよう心がけていましたが、やはりどうしても忘れてしまうこと多々。
今日も、レンガの歩道を歩いていてふと思い出し、ハッとしました。
レンガも誰かが作っているわけです。
そして、この途方もない数のレンガを誰かが工事で並べているわけです。
おそらく水平をとりながら一個一個手で敷き詰めていったはず。
この長い歩道の全長と、全国に存在する工事現場に想いを馳せて、しばしクラクラしてしまいました。

忘れがちだけれど大切な真実。
『この世のモノはみんな誰かが作っている』。
自戒と感謝を込めて、これからも折りに触れひそかにつぶやいてゆきたい言葉です。


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