赤峰和彦の 『 日本と国際社会の真相 』

すでに生起して戻ることのできない変化、重大な影響力をもつ変化でありながら一般には認識されていない変化について分析します。

中露同盟の内実——ロシアが中国の属国になった日

2023-11-06 00:00:00 | 政治見解



中露同盟の内実——ロシアが中国の属国になった日 :231106情報

ソ連崩壊時からロシアに在住し、ロシアの手の内を知り尽くした北野幸伯さんが「中露同盟」について大変興味深いお話をされています。許可を得て掲載いたします。


私の本に『中国ロシア同盟がアメリカを滅ぼす日』があります。出版されたのは2007年、16年前のことです。当時なじみのなかった「中国ロシア同盟」という言葉は、今なら、「とてもしっくりくる」でしょう。実際、中国とロシアは、いつも一緒に動いています。

中ロは、一体化して金正恩政権を守っている。
中ロは、ハマスのイスラエルに対する大規模テロを非難しない。
中国は、ロシアのウクライナ侵略を非難しない。

今なら誰でも、「中国ロシア同盟は、アメリカと戦っていること」を認識しています。ところが、この本が出されたのは16年前。その当時、「中国ロシア同盟」という言葉を使っていた人は、ほとんど、あるいは全然いませんでした。

28年間モスクワに住んでいた私から見ると、中国ロシア同盟は、2005年に成立したのです。
その前に、アメリカとロシアは、
・ユコス問題(2003年)
・グルジア(現ジョージア)・バラ革命(2003年)
・ウクライナ・オレンジ革命
・キルギス・チューリップ革命
などで対立していました。

プーチンは、ロシアの勢力圏である旧ソ連諸国で、立て続けに革命が起こっていることを心配していました。そして、彼は、カラー革命の背後にアメリカがいることを確信していた。

「このままでは、ロシアでも革命が起きる!」 それで、「中国と組んで、アメリカ一極世界をぶち壊そう!」と決意したのです。それが、2005年でした。

さて、中国とロシアの事実上の同盟関係は、すでに18年間続いています。しかし、両国関係は、この期間に変化しました。2005年、同盟を持ちかけたのはプーチンでした。当時は、「プーチンが主導し、中国が従う」という感じだった。というのも中国は、2012年に習近平がトップになるまで、アメリカとも良好な関係だったからです。

ところが、今ロシアは、中国の「属国」になってしまいました。 なぜ?

プーチンが、ウクライナ侵略をはじめたからです。なぜそれでロシアは中国の属国になったのでしょうか?

ウクライナ侵略をはじめたプーチンには、いろいろな誤算がありました。たとえば、欧州が、ロシア産石油、天然ガス、石炭の輸入を劇的に減らしたこと。もう一つは、欧米が制裁として、ロシアの主要銀行をSWIFTから排除したこと。

困ったロシアは、中国に助けを求めました。一つは、「欧州に売れない資源を買ってくれ!」。もう一つは、「SWIFTを使えないから輸出ができない。中国版SWIFTと呼ばれるCIPSを使わせてくれ!」。

結果、どうなったのか? ロシアは、中国に石油、天然ガス、石炭などを大量に、しかし【激安】で、【人民元】で輸出することになった。要するに、ロシアは、【人民元圏】に取り込まれてしまったのです。プーチンは、習近平に頭が上がらなくなりました。

たとえば、今年5月、「中国中央アジアサミット」が開催されました。ここで習近平は「中国中央アジア運命共同体をつくる!」と宣言した。

中央アジアは、「旧ソ連国」。プーチンが、「ロシアの勢力圏だ!」と常々主張してきた地域です。ところが習近平は、「中国は中央アジアと運命共同体をつくる」と言う。これ、別の言葉で、「中央アジア、もらいますよ」ということでしょう。

ですが、属国の悲哀。プーチンは、習近平に抵抗することができないのです。

ところで、超名著『エネルギー危機の深層 ──ロシア・ウクライナ戦争と石油ガス資源の未来』の中で、原田大輔先生が、興味深いエピソードを取り上げておられます。

2023年3月、習近平がロシアを訪問しました。原田先生によると、ロシア政府は、習近平から「3つのお土産」
を期待していたそうです。
1、ウクライナ東部4州のロシアへの帰属承認
つまり、習近平は、ロシアが2022年9月にウクライナから奪った4州(ルガンスク、ドネツク、ザポリージャ、ヘルソン)を「ロシア領である」と認めてくれる?
2、武器または半導体等、欧米制裁で不足している物資の供給
3、欧州代替を成立させる「シベリアの力2」による長期天然ガス供給契約での合意

しかし、プーチンに対して強い立場にいる習近平は、ロシア側の願いをことごとく無視したのです。この事実について原田先生は、どう見ておられるのでしょうか?

〈中国にしてみれば、ウクライナ侵攻については国連決議でも世界の大多数の国が反対を表明しており、そうした中でロシアの肩を持つことは世界から反感を買い、欧米諸国も中国に対する敵対を強めることは明らかであった。〉(150p)

中国は、「4州はロシア領だ!」と認めたり、武器や半導体をロシアに供与することはできない。なぜなら、ロシアの味方をすれば、国際社会や欧米諸国が反中になるからだと。

〈また天然ガスについても需給は満たされており、わざわざ今5年後の天然ガス調達に動き、ロシアへの依存度を高める必要はない。待っていれば、いずれロシアは追い詰められ、さらにガス価格を値下げしなければならないことも明らかであり、今は買うべきではないという判断が働いたのだろう。〉(150~151p)

待っていれば、ロシアはさらに苦しくなり、ロシア産ガスはもっと安くなるだろうと。

皆さん、「プーチンは孤立していませんよ。なぜなら中国がいるからです」という主張を聞いたことがあるでしょう。本当にそうなのでしょうか?

米中ロ関係は、実際どうなっているのでしょうか?

まず、中国ロシアの事実上の反米同盟が存在している。これは間違いありません。しかし、2005年に「中ロ同盟」が成立した後、中国は常に「自国の利益のみ」追求してきた。結果、ロシアは、中国の属国に落ちた。

習近平が訪ロした際、プーチンは、「どうか、三つのお願い、どれか一つでもお聞きいただけないでしょうか?」と懇願した。習近平は、「あなたの願いを聞けば、わが国の評判が下がるではないか? そんなことはできない」と軽くあしらった。

だから、米中ロの関係は、
1、反米の中国ロシア同盟が存在している
2、中ロ関係は、「ロシアは中国の属国」
ということなのです。


▼日本も要注意

ところで、二国間関係において、中国が常に「WIN(中国)ーLOSE(他国)」を目指す国であること、日本も決して忘れてはならないでしょう。

たとえば1970年代初め、アメリカと中国は、事実上の「反ソ連同盟」になりました。その後、アメリカは、中国に資金と技術を惜しみなく提供し、まさに「中国を育てた」のです。同じことを日本もしました。

中国は、日米の資金と技術をどんどん受け入れ、巨大化していきました。そこそこ強くなった1990年代、江沢民は、国内における反日教育と、世界における反日プロパガンダを開始。日米を分断させることに成功します。

中国は2010年、GDPで日本を超えました。そして2015年ぐらいになると、アメリカも、「しまった!俺たちは騙されていた!」と気がつきはじめます。

2018年米中覇権戦争がはじまりました。中国のような国のことを、本当の「自国ファースト」とよぶのでしょう。

しかし、だからといって私たちが、「ジャパンファースト!」「WIN(日本)ーLOSE(すべての他国)を目指せ!」となるべきではないでしょう。

日本は、いつでも「WINーWIN」を目指すべきです。その一方で、中国政府の本質が常に「WIN(中国)ー LOSE(日本)」であることを理解し、決して忘れないことも重要です。

プーチンも、「気づいた時には遅かった!」と地団駄をふんでいるかもしれません。想像ですが。




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