観光客が増えると国が貧しくなる :231119情報
印象派に影響を与えた日本絵画や、戦後の一世を風靡した映画などを通じ、欧米人の日本文化への憧れは強かったものの、20世紀後半、日本は「遠い、高い、分からない」国といわれ、日本へのインバウンドは大きく伸びることはありませんでした。
変化を見せたのは21世紀になってからで、観光関連の民間企業で作るツーリズム産業団体連合会(後に日本観光振興協会と合併)を始めとした観光業界の様々な活動が功を奏し、観光立国を国の重要な施策の一つに掲げた観光立国推進基本法が施行され、2008年には観光庁が設置されました。
これら一連の動きの中で、訪日外国人旅行者数は2013年以降急増した。2005年に670万人であった訪日外国人旅行者数は、2015(平成27)年には1973万人を数え、コロナ前の2019年には3188万人が、コロナ後の今年2023年は2110万人が訪日すると予測されています。
日本に好感を抱く外国人が増えるのは喜ばしいことですが、オーバーツーリズムの具体的な問題点として、
1.住民の生活環境の悪化渋滞、事故、交通機関の混雑・遅延など
2.違法民泊の増加ごみ投棄、騒音、宿泊施設の不足、緊急時の安全確保など
3.観光資源の劣化自然破壊、景観の悪化、文化財損傷など
が指摘されています。
政府やメディアは、「観光業者の利益」だけの問題でインバウンドを語りがちになっていますが、「国家の利益」で考えるとこれはどう判断されるべきか、国際政治学者に見解を伺いました。
観光立国は産業亡国である
私は観光立国 は大反対です。その理由は、観光立国とは産業として終わった国だからです。
ギリシャもそうですが、観光以外には何もありません。イギリスやフランスなど、 かつて産業立国だった国は、いまや観光に頼る国となりました。産業国家 としては終わってしまったので、観光を頼りにするしかないのです。
ドイツとフランスを比べてみればよく分かります。ドイツは観光地として も魅力的で観光客も多くやってきますが、今も産業立国であるといえます。 対するフランスは自国の人口よりもフランスを訪れる観光客のほうが年間 では多く、それがコロナ前の現実でした。フランス人は観光を誇りにしているようですが、それしか頼れるものがないのです。
観光業は過去の栄光を利用しています。エッフェル塔は観光客に人気ですが、エッフェル塔が造られたのは昔のことです。フランスの産業力が過去 に優れていたというシンボルなのです。
またイギリスも産業革命が起きた 国であり、かつては産業国家でした。しかし今では、公園や美術館などの建造物、バッキンガム宮殿の衛兵交代など過去の栄光の残)宰(ざんし)を 見に行く観光業が主力となっています。
それからギリシャやイタリア、フ ランスなどは、地中海に面していて天候も良いので多くの人が訪れますが、 近代的な産業がない国、あるいは終わってしまった国が観光立国になるし かなく、日本はそれを目指しては駄目です。
日本は魅力的な国だ、日本に行きたいと世界の人が来てくれるのはとても結構なことです。アニメーションのファンだという人たちが秋葉原に行ってお金を落としてくれるのは素晴らしいことで、そのことを私は反対しませんし、親日家が増えるのはとてもいいことです。
日本の錦鯉や盆栽が珍しいと、そんな渋い趣味の人たちが来日することもありますね。またラー ンの食べ歩きをしたいとアメリカ人が東京に来てくれるのもうれしいことです、大いにやっていただきたい。
しかし、そんなもので国を立てていこうなんて考えてはいけない。日本が日本らしく、魅力的であれば外国人 は来てくれるわけです。ウェルカムはしましょう。しかし日本がそれを産業の大きな柱にするなんてことを考えては駄目なのです、根本的に間違っています。
近年、総選挙で落ちた自民党のベテラン政治家、石原伸晃さんが内閣官房参与に任命されたとき、日本を観光立国へといった発言をして世論の 批判を受けました。これはもっともなことで、頑張ってもらうとしても方向性が違います。
「観光立国は産業亡国である」これは私が作ったスロー ガンです。観光立国は産業亡国なのです。
京都は有名な観光都市です。観光で経済が成り立っていると思われていますが、そうではありません。京都は実業があるから栄えていたわけです。 しかし、いまや産業が駄目になって、若い人もどんどん流出しています。
京都といえども、決して主力産業が観光産業だったわけではありません。 観光産業「も」ある街だったわけです。今、それが駄目になっているということなのです。
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