赤峰和彦の 『 日本と国際社会の真相 』

すでに生起して戻ることのできない変化、重大な影響力をもつ変化でありながら一般には認識されていない変化について分析します。

人はなぜ二セ科学を信じてしまうのか?

2023-11-20 00:00:00 | 政治見解



人はなぜ二セ科学を信じてしまうのか?  :231120情報

——昔から世界各地で現れては消える数々の"ニセ科学”。「アヤシイものは遠ざければ安心」? ……じつはその姿勢こそ、問題を大きくしてしまう危険性をはらんでいる。 となれば、あえて核心に迫り、理解を深めていくことが得策といえるだろう。――

ある科学者のコラムからの引用です。



人が“ニセ科学”の先に望むもの

ニセ科学(=疑似科学)は、人々の心のスキマを突いて巧みに暮らしの中に入り込んでくる。

まずは 私たちが疑似科学を信じてしまう心理学的な要因について、代表的なものをいくつか挙げてみよう。 まず大前提として、世界はさまざまな事象が複雑に絡み合ってなりたっている。そのため私たちは無意識のうちに、生きることに「意味」を探し、また「秩序」を見出して安心を得ようとしている。

一方の疑似科学には単純明快な答えがあることが多いので、それを信じることで「不確実性や不安感を軽減してくれた」と感じやすいのだ。

また自身の所属するグループが疑似科学的な信念を受け入れている場合、自身もその信念を支持することで「仲間と特別な知識や理解を共有している」と感じ、安堵する(そして抜け出せなくなる)。

この心の動きは、宗教における信仰心と似ている。「認知的バイアス」(特定の情報を強調し、他の情 報を無視する傾向)にも注意が必要である。

疑似科学的な情報にのめり込んでしまうと、科学的な証拠を提示しても意図的に見て見ぬふりをしたり、論理 的思考を無視したりするようになる。それが疑似科学を妄信している状態である。そうならないように. 情報リテラシーを向上させることがとても重要に なってくる。

思い込みが疑似科学を生み出す

認知心理学の概念の一つに、「選択的注意」(情報を受け取る際に特定の刺激や情報にのみ注意を向け、 他の情報を無視する傾向)がある。人間の脳は同時に多くの情報に注意を向けることが難しいため、私たちは注意を特定の情報に集中させる必要があるのだ。

この「選択的注意」は情報の関連性や個人の関心に基づいて働く。つまり、情報が個人の目標や興味、関連性に合致すると、その情報に対する注意が高まるのである。

情報過多の現代社会において、「選択的注意」はその他の情報を適切に処理し、判断能力を向上させるー助となるだろう。その一方で、それが過剰に働けばかえって収集する情報に偏りを生じさせたり、重要な情報の見落としを招いたりしてしまう。

具体的には、「選択的注意」によって特定の情報を得た後、「確証バイアス」が加わると、人は既存の信念を支持する情報をさらに積極的に集めるようになる(それが科学的に正しいか否かは問題ではない)。そして自分の思い込みを強化していき、ときにはその目的を遂げるために疑似科学的な情報を受け入れるようになってしまうのだ。

「確証バイアス」によって起こる情報の歪みは、大きく2つに分かれる。

1つめは、多くの情報の中から自分の考えに適合するもののみをピックアップするもので、いわば「量的な確証バイアス」である。

他方、曖昧で多義的に解釈できる情報や、材料不足で解釈できない情報から、仮説に一致する解釈を導き出す「質的な確証バイアス」がある。

私たちは日々、これらを駆使して自説に都合の良いデータを確証的 に集めている。それにより、たとえトンデモない仮説であっても、日々観察する膨大な事実の中からそれを確証する情報を選択的に見つけ出し、有利に解釈できるのだ。

たとえば「B型の血液型の人はひねくれている」という(トンデモな)仮説を信じている場合、周囲の人の中にひねくれているB型以外の人がいたとしても、注意を引かない。それはあなたがそもそも B型の人のみに注目しているから。

もしも「観察 した中にはA型やO型などのひねくれた人がいた」 という反証的データが見つかったとしても、「たまにはそういう人もいるよね」と例外化され、重要性を低く認識されてしまうのである。

さらには最初から「B型の人はひねくれているはずだ」という期待を抱いて周囲を観察しているために、B型の人に 限ってひねくれ具合が強調されてしまうことにもつ ながる。

こうしてB型にまつわる誤信念は強化され、そこにまたバイアスがかかった観察を生む。これが、確証ループ"によって信念が成長していく構図である。


現代社会を生き抜く思考を養おう


ここまで記事を読まれた方の中には、そもそも「疑似科学にはそれほど危険はないよね。どうしてそこまで目くじらを立てるの?」と疑問に感じている人もいるかもしれない。

確かに、大規模な環境破壊や核の恐怖といった "正統な科学”がもたらす危険からすれば、前述した「血液型占い」などは小さな問題に思える。しかし「科学の仮面を被った科学ではないもの」の存在を容認し、放置してしまえば、その歪曲した情報は 必ず周囲に影響を与えてしまう。

そしてやがて新たな,信者"の輪を拡げてしまうことにつながるのだ。さらに言えば、疑似科学が蔓延ることでこれまで連綿と先人たちがつないできた本物の科学の信頼を失墜させてしまうことになりかねない。

では、どうすれば疑似科学に騙されずにいられるだろうか。「疑似科学かもしれないものに近づかなければいい」と考えるのは、「自分は健康だから病気について知る必要がない」と考えるのと同じくらい愚かなことである(菊池聡著『なぜ疑似科学を信じるのか思い込みが生み出すニセの科学』より)。

かといって「疑似科学」の定義については、これまでも長らく論じられてきたものの、未だ「科学」 との明確な境界線が引けていない。なぜなら「疑似科学」は、「健康な科学を踏み外してしまった科学」であるからだ(その名もズバリ「病的科学」という表現もあるほど)。

はっきりと言えるのは、疑似科学とは、「科学的な外観を備えているにかかわらず実際には科学としての要件を満たしていないために誤った結論に至った研究やそれにもとづく主張」であるということである(前述書より)。

なぜ、これほどたくさんの疑似科学が現れては消えていくのか――それこそ、私たちが無意識のうちに科学に対して大きな信頼を寄せていることの証しにほかならない。

最後に、科学リテラシーの専門家が設定した「科学性評定の10条件」による、科学や擬似科学の段階を判定する方法を紹介したい(冒頭の図)。この4 観点10条件に基づいて科学的根拠の強弱を推し量りつつ、心の偏りにも注意することで、専門家でなくても科学性の判断ができるだろう。

またこのとき重要になるのが、あえて物事を批判的に捉えて判断する「クリティカルシンキング」である。この合理的 な思考力を鍛えることは、疑似科学を見破るための みならず、ビジネス上の判断や将来起こるかもしれ ない事象を正しく見極めるのにも役立つはずだ。




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