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2.国の財政破綻はあり得ない――ザイム真理教の闇を暴く
:231124情報
昨日からの続きです。引き続き、高橋洋一氏の『日本は99%財政破綻しない理由』を、許可を得て引用しています。
重要なのは負債額ではなく 資産と負債のバランス
ここで公会計の基本に立ち返ってみよう。「政府の財政は破綻の危機にある」という主張の論拠が1000兆円もある」というものだが、これはバランスシート( 表1参照)の右側の「負債」の部分 にしか言及していない。
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左側の「資産」の部分に触れていないのだから、 公会計的には片手落ちである。会計の知識を持っている人間が見ると、たとえ負債額が大きくても、資産額とのバランスが取れていれば 経営状況としては何の問題もない。
つまりつぶれようがないのだ。また民間企業であれば「資産」が「負債」よりも少し大きく、その差額は株主の純資産になるのが普通だが、政府の場合は「負債」のほうが 少し大きくても破綻はしない。この点は、政府が民間企業とは異なる部 分である。
その観点で日本政府のバランス シート(表1)にある「資産」の合計額を見てみると、681兆26288億3700万円となっている。 負債合計は1273兆729億3500万円なので、資産合計から負債合計を引いた資産・負債差額を出せばバランスがわかる。
その差額は計算するまでもなく、バランスシートに591兆8100億9700万円 と書かれている。ここが重要で、正しく言い換えると「日本政府の純資産はマイナス591兆8100億9 700万円」となる。「国の借金が 1000兆円もある。破綻だ!」と 騒ぐ人たちは、この「資産から負債を引いた差額が591兆8100億9700万円」という事実が見えていない。
すると今度はこの「日本政府の純資産は マイナス591兆8100億 9700万円」という金額が問題となってくる。しかし、これは個人としてとらえれば、もちろん巨額だが、国としてはさほど問題のない額だ。
日銀の決算を連結する際は 「資産」だけが加算される
また、私が「日本財政は健全である」とする理由は、ほかにも大きく2つある。その1つが日本銀行(日銀)の存在である。日銀は実際には株式会社ではなく特殊法人であるし、政府は日銀の株主総会には行っていない。
しかし50%以上の資本(株式 ではなく出資証券)を政府が持っているし、予算の認可権や役員の任命権もあるのだから、日銀は会計的には完全なる子会社として考えていい。
また日銀は私が最初に作った政府のバランスシートには入っていたが、 現在政府が公開しているものには入っていない。おそらくは何らかの意図が働いて、抜くことになったの だろう。
ここからは分かりやすいように、政府を企業として考えてみよう。すると「たくさんの子会社を抱えているグループ企業」ということになり、一般的な公会計の手法に則れば、政府のバランスシートを作る際にも子会社の決算を連結するべきであることは言うまでもない(表2=冒頭画像、左)。
つまり正確な数字を出すためには、100以上もある子会社の決算書をすべて作成してまとめなければならないのだから、たとえ会計士であっても民間人には成し遂げることができない範疇となる。しかし私は当時、財務省内にいてすべての特別会計の知識があったために、結構簡単に作ることができた。
その結果、政府に「資産と負債がどれぐらいあるか?」をつぶさに知ることとなったのだ。 本来であれば、日銀は政府の子会社の代表格なのだから、当然、連結させるのが正解である。そこで日銀のバランスシートを見てみると、資 産の中で「国債」 の8兆7210億 6903万7000 円が際立って大きいことがわかる(日銀 は10日おきにデータを公表している。数字は執筆時点で2021年12月20日現在のもの)。
日銀は、民間金融機関が保有している国債を買って、その代金を民間金融機関の当座預金に振り込むか、日本銀行券(=日銀券。つまり紙幣) として発行して渡す、ということをやっている。したがって私たちにとっての資産である「お金」は、日銀の会計的には「債務証券」、つまり負債になる。
ただしこの日銀券は、 日銀にとっては負債として扱われるものの、返す必要がないものである。このように見てみると、日銀の「負債」は実質的にはゼロとなり、政府の決算に連結させたときには資産だけが加算されることになるのだ。
徴税権による莫大な収入は 「資産」にカウントされない
私が「日本財政は健全である」とするもう1つの理由として、政府には「見えない資産」、会計の言葉でいうところの「簿外」があることが挙げられる。それは徴税権を行使して国民から回収する資産(=税金) である(表3=冒頭画像、右参照)。
税金額は「ファイナンス理論」によって計算することができるのだが、 ここでは詳細は割愛して結論だけを述べると、フローの数字の20倍から 25倍の金額が毎年、何もしなくても国に入ってくる計算だ。これは民間企業でいえば、毎年誰かが巨額の寄付をしてくれるようなものである (すなわち、あり得ない)。
フローは30兆円から50兆円くらいあるので、税金は600兆円から 1000兆円の間くらいになるはずだ。1000兆円はいくら何でも多過ぎるので、ここでは仮に600兆円としておこう。これらを足し算するだけでも、 国の資産は1600 兆円となり、負債は 1400兆円なので 完全にクリアできているわけだ。
ただしこの徴税権で得た資産も、 やはり今のバランスシートには含まれていない。
“子会社”への貸付金が 多額の金利収入を生む
私がバランスシートを作ったこと は知られているので、今でも海外の人から「日本財政はどうなの?」と 聞かれる。そのとき私はもちろん、 即座に「資産と負債のバランスが取れている」「政府が発表しているバランスシートには徴税権や日銀のことは含まれていない」といったことを、データを交えて説明することが できる。
するとすぐに質問者は「それなら破綻しようがないな」と納得して、そこで話は終わってしまうのだ。しかし海外の人に限らず、中には「国の資産の中には現金化しにくいものもあるじやないか」とクレームをつけてくる人もいる。
もちろん政府の資産の中には、土地などの不動産も200兆円ぐらいはあり、それは現金化するには多少の時間が必要になるだろう。しかしそれを担保に融資を受けることもできる。
そのほかはほとんどが金融資産である。そして実は、保有する金融資 産のうちの多くは政府の子会社にあたる団体へ貸付されており、政府は毎年そこから多額の金利収入を得ている。「膨らんだ負債の利払い費が大変」と主張する人もいるが、それよりこの金利収入のほうが、はるかに大きいのだ。この部分だけを見ても、「破綻の心配はない」と言える だろう。
(つづく)
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