青空に白い月

ゆったりゆるりと生きましょ~よ

病院に持って行ってはいけない本

2008-07-08 21:57:42 | 入院・病院

今日は病院の日

診察前検査として血液検査がある時は、いつも診察の予約時間よりちょっと早めに病院へ行くようにしている。

どうしてかといば、単純に遅いと混むからという理由もあるが、その検査結果が出ないことには診察も出来ないので、ちょっと早めに受付前に採血だけを済ませるようにしているからである。

だから私は今日も早めに家を出る筈だったが、ちょっと寝坊してしまい、病院に着くのがいつもより10分位遅くなった。

たったの10分

でも病院の朝は、この10分が順番待ちでいくとかなり後ろに後退してしまう。

そして順番が後ろに後退するという事は、時間にすると更に後退してしまうことになる。

着いた時には10分程度の遅れが、要約採血が終わる頃には30分近くになり、受付を済ませる頃には、もう既に患者さんで椅子が大分埋まっていた。

いつもであれば、私が待合室に付く頃にはまだ椅子が結構開いていて、私は科の受付からは離れたところにいつも座る。

ところが今日は流石に混んでしまっていて席を選べるような状態ではなかったから、受付の真前に座った。

私はこの受付の前っていうのが結構苦手であり、どうしてかというと、かなりこの受付の作りがオープンな感じになっていて、まともに対面しているから、何となく目のやり場に困るからだ。

でも座れた方がいいので、仕方なくそこに座ったが、そこは実によく患者と受付とのやり取りの会話が聞こえてくる。

ある中年女性二人組みは、仕事の都合で順番を早くして欲しいようなことを訴えて受付の人がしきりに説明しているし、あるおじいさんは診察前の採血が無いはずだったのに採血することになって駄々をこねている。

まぁ~、それはそれで私の退屈しのぎにはなっているけどね、私だって人の文句ばかりを聞いているのはハッキリ言ってゴメンなのだ。

そもそも今日の私は待ち時間も退屈せずに済む筈だったのだ。

あのフレーズを読むまでは!

私は今朝出掛けにたまたま思い付き、本立てに立ててあった文庫本を一冊セカンドバッグにしのばせておいた。

そして待合室でその本を読み始めた。

自分の本棚から持ってきたのだから、前に読んだことのある本だったが、内容は当に忘れ去っていたから、初めて読むように最初は楽しかった。

だが、その楽しさが問題だった。

私を大変な状態に陥らせたのは、ほんのワンフレーズ。

その本は、作者の面白いエピソードを短編でたくさん綴った本であったが、その中にこんなエピソードがあった。

その若い女性作家は、友達の男性に面白がってよくこんな事を聞いた時期があったそうだ。

”もしもこれから一生を無人島で生活しなければならなくなったとして、連れて行くならどっち? 「人魚」と「魚オンナ」”

魚オンナとはつまり、下半身が人で上半身が魚という、なんとも奇妙な生物の事である。

これに対しては若い男性達から、たくさん面白いことが聞けたと書かれていて、会話できた方がいいとかいう格好つけた意見から、単純に自分の性欲を満たしたいという素直な意見までいろいろ。

中には、魚おんなとの間に子供が生まれるとしたら、やっぱり魚オンナなの?という質問があり、作者がどうして?って聞くと、もしも人間の子が生まれるならその子が大きくなるのを待って・・・云々

多分普通だったら、それが一番最強のおばか回答だと思うだろうけど、まだそれが序の口だと思わせる人がいたというのである。

その人はボ~っと作者の方を見据えたまましばらく考えて、質問の意味が分かっているのかどうなのか不安になってきた頃、ようやく一言こう言ったのだそうだ。

「食える部分はどっちが多いんだ?」

・・・・・・・

私はこの堕ちのワンフレーズに見事に負けた。

つまり、みんな待ち時間でイライラしていて、どこか体に不具合を持っている人が大勢いる、その込み合った病院の待合室で私は見事にツボにハマってしまった訳だ。

もう可笑しくて可笑しくて後一歩で拭き出すところを私はひたすらこらえトイレに行った。

そんな時に限ってトイレにも誰かいるもので、私は先客の隣で用を足しながら、それでも面白くて多分かなりニヤついていたから、傍から見ればちょっと精神的な病気があるように見えたに違いない。

「食える部分はどっちが多いんだ?」

それで私の読書は終わった。

待合室の席に戻ってからも、私は受付まん前の席でまた思い出した。

「食える部分はどっちが多いんだ?」

結局診察室に呼ばれるまで、そのワンフレーズは私の心を支配し続け、ツボにはまりまくったのだった。

そうそう肝心の診察は、薬は現状維持

そして血液検査の結果は、ステロイド服用者とは思えないほど、優等生。

だそうである。

でも今日の病院でなにより記憶に残ったのは、診察結果でもなければ、待合室の人観察でもなく、

「食える部分はどっちが多いんだ?」

これであったことは、言うまでもない。


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6 コメント

コメント日が  古い順  |   新しい順
うははははは! (ぷろぱ)
2008-07-08 23:26:58
最高です。わたしは明日、病院なので、思い出して笑わないように気をつけます~。

FAKEさんの具合は悪いときもあったけど、いい結果で何よりでした♪
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ぷろぱさん、こんばんは(^^♪ (FAKE)
2008-07-09 00:29:37
私はもうその場で大爆笑したかったですよ。
だって人魚にしても、魚オンナにしても、普通は人間部分を思い浮かべてどっちがいいか考えるのに、この人に関しては確実に魚の部分中心で考えてたって事でしょ。
黙ってしばらく何を考えていたかといえば、食べられる量ですよ。
どっちが多く食えるか悩んでいたっていうのをリアルに想像したら、もう可笑しくて可笑しくて。

いやー、まだ面白い。
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FAKE さん (遊工房)
2008-07-09 07:35:38
それなんて本?
教えて!
朗読会で読もうかな
爆笑させる本があったら
どんどん教えて!
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ぷっ!ふははは(^m^)。。。なんとまあ、面白い話し... (おとめ)
2008-07-09 18:16:03
笑うって色々な病気には最高によい治療らしいですね。

でも検査結果が良くて、本当によかったです(^^
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遊工房さん、こんばんは(^.^) (FAKE)
2008-07-09 21:18:32
私が好きなその作家さんの名は鷺沢 萠(サギサワ メグム)さん。
2004年に35歳で亡くなったと聞いた時に、もう彼女の作品が読めないと知り、とても残念に思いました。

本来は賞をとるほどの小説家さんなのですが、私が大笑いしたのは彼女のエッセイの中の一つで、
「途方もない放課後」っていいます。
吹き出す面白さでいったら、
「THEY THEIR THEM]
も面白い本ですよ。

古本屋さんでも100円とかでよく見かけます。
面白さ抜群(^^♪
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乙女さん、こんばんは(^.^) (FAKE)
2008-07-09 21:28:40
全く予期しない発想の楽しさ。
私そういうの大好きなんです。

面白くしようとがんばっていないところが面白いんですよねー。
やめられない。

ちなみに私だったら人魚を連れて行きますよ。

だって漁をするのに便利そうじゃないですか(・へ・)
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