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-日々余話- Duorest Chair
もう十数年、長年愛用してきたデスクワーク用の椅子
-これはある知人筋から貰い下げてきた麻雀用の椅子で、とにかくパソコン相手のデスクワークにはすぐれもので、徹夜同然の長時間作業もこの椅子のお蔭でいくたび助けられてきたことか-
が、さすがにとうとう寿命が尽きたか、半年ほど前に壊れてしまって、偶々所有していた些かアンテイツクな木製のものを臨時に使っていたのだが、このところ続いたハードな事務作業に身体のほうが悲鳴をあげて降参、
年も年なれば、とにかく身体に少しでも負荷のかからぬ椅子をと、昨日、稽古場の帰りに買い求めてきたのが、Duorest Chairなるもの。
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写真のごときものだが、購入してきたのは肘掛け部分がちょっぴり異なるタイプ。開発したメーカーはドイツの会社らしいが、この正規版はずいぶんと高価なもので、どうやらこっちは追随の海賊版メーカーのものかと察せられるが、それでもお値段、19900円也、こいつもなかなかにすぐれものではある。
とにかく、なお暫時は続くハードな作業も、この椅子を頼りに乗り切らずばなるまいと、朝の6時までかかってしまった昨夜に引き続き、今夜もまだこんな時間まで起きて、こんな気晴らしを綴っているしだいだ。
―山頭火の一句― 「三八九-さんぱく-日記」より-40-
2月5日、まだ降つてゐる、春雨のやうな、また五月雨のやうな。
毎日、うれしい手紙がくる。
雨風の一人、泥濘の一人、幸福の一人、寂静の一人だつた。
※表題句の外、2句を記す
「三八九日記」は、このあと空白の15頁を残し、最終頁に以下の句が記されている。
味取在住時代 三句
久しぶりに掃く垣根の花が咲いてゐる
けふも托鉢、こゝもかしこも花ざかり
ねむり深い村を見おろし尿する
追加一句 -味取観音堂の耕畝として-
松はみな枝たれて南無観世音
行乞途上
旅法衣ふきまくる風にまかす
山頭火の三八九居における一見のびやかそうにみえた日々も4ケ月と続かなかつた。
「結局はよくなかつた。内外から破綻した。ただに私自身が傷ついたばかりでなく、私の周囲の人々をも傷つけるやうな羽目になつた。
事の具体的記述は避けよう、過去の不愉快を繰り返して味はひたくないから。
私はまた旅に出るより外はなかつた。」
と別なところ-随筆-で記している。
またしても泥酔の果ての失態事であったか、この年の4月の末頃だろう、警察の留置場に何日か打ち込まれていたようで、木村緑平宛のハガキでそれと知れる。
そのハガキに記された2句は、留置場内での作である。
裁かれる日の椎の花ふる
暗い窓から太陽をさがす
6月、とうとう山頭火は三八九居にも住めなくなつて引き払う。彼はまたサキノの許に転がり込んだ。彼自身本意ではなかつたろうが、サキノにとっても迷惑至極、またぞろの家庭復帰が立ちゆくわけもない。
年初の個人句誌「三八九」発刊は、自立・自活をめざしたものであつたが、3号で止まつた。
句作も行き詰まつたか、以後、半年ほどの間、ほとんど消息が伝わらない。
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