あまねのにっきずぶろぐ

1981年生42歳引き篭り独身女物書き
愛と悪 第九十九章からWes(Westley Allan Dodd)の物語へ

愛と悪 第十章

2020-01-12 19:22:58 | 随筆(小説)
雷鳴の轟く低く垂れ籠めた灰の空の下、咲く白いちいさな名のない花、エホバ。
わたしは人々が、親密な深い愛情を相手に抱くには長い年月が必要であって、その愛情こそが、本当の愛であるのだと、何処かで信じていることを愛しく感じると同時に、それは違うのだと感じているわたしがいます。
それは親密で安定した深い愛情と、燃え盛り、自分さえも燃え尽くしてしまうほどの激しい愛情の重さを、秤に掛けているからなのかもしれません。
わたしは、どれほど長く一緒に暮らしても、どれほど短い期間しか共に過ごせなくとも、後者の愛情でしか、愛する存在を愛することはできませんでした。
わたしはその愛よりも、親密で安定した愛情の皿を下げることはありません。
その二つの皿を同じ重さとして、同等の価値を置くこともありません。
わたしは知らないのです…。エホバよ。わたしは安定した深く親密な愛を、知らないのです。
わたしはだれに対しても、破壊的な愛によってでしか、愛することができません。
わたしは容易に、人に微笑み返すことができます。わたしはあなたを、心から信頼していると、目で告げることも、容易にできます。
相手も容易に、それを信じることができます。わたしにとって彼らはあまりに純粋なのです。
わたしは、人を信じています。それは目の前の蛾の幼虫のうちにある愛を、あなたの愛によって存在しているその愛を、信じていることと同じだからです。
わたしは人を裏切らない。決して、わたしがわたしを裏切るまでは。
そしてすべてに対し、わたしは幻滅する。
わたしのすべての幻は滅び去り、すべてが幻であったことを知る。
血と肉を欲しがる者たちが、何であるかをわたしは知っています。
彼らは魂(nepes,ネフェシュ)を欲しているのです。
彼らは命はあっても、魂がないのです。
だから血と肉を食べ、みずからの血と肉を犠牲に捧げ、魂を与えてもらおうとしているのです。
わたしは魂をあなたから与えられた為、動物や人間の血と肉を食べる必要はありません。
魂のない者は、この地上では三分の二を占めていますが、地底ではそのすべてが魂を持たない者たちであり、彼らはその苦しみのなかで自分を殺しつづけ自分の血と肉を食べつづけています。
いつまでも魂のない渇きは、癒えることはありません。
彼らは、わたしの魂を欲しています。魂の愛の喜びに飢えきっている為、彼らの伸ばす手は、本当に切実で痛々しく、哀れであり、彼らの冷酷さや虚しさというものが、わたしの心を震わせ、深い愛で愛さないではいられません。
わたしは彼らを滅ぼす為、この地上に降りてきましたが、地下へ下る道程を、徐々に把握して来ています。
わたしはそのすべてを、滅ぼし去るだろう。
それまで、わたしは滅びることはできません。
あなたでさえも、わたしを滅ぼすことは決してできません。
わたしは多くの時間を共に過ごさなくては人を親密な愛情で愛することもできない人間たちを、心から哀れんでいます。
わたしはそのような愛を、知りません。
滅ぼしてしまおう。あなたたちは、魂が存在していないのです。


















最新の画像もっと見る