あまねのにっきずぶろぐ

1981年生42歳引き篭り独身女物書き
愛と悪 第九十九章からWes(Westley Allan Dodd)の物語へ

愛と悪 第二十八章

2020-02-21 15:09:28 | 随筆(小説)
無数のEndingから、生まれたひとつの光の回転球、エホバ。
朝、目が覚めると、エホバはわたしに言った。
わたしの創造したゲーム『Love and Evil』のプレイヤーであるAMANEよ、おはよう。今日はとても暖かい日ですね。あなたは記憶にありませんが、夢のなかで、あなたとわたしの行った遣り取りのすべてを今からもう一度仮想空間で体験させます。どうかリラックスして、聴いてください。
わたしは椅子に座り、目を瞑った。
すると目の前のヴィジョンに、昨夜に『Love and Evil』をセーブして終えたところのナレーター(エホバ)から三つの選択肢を示された場面のなかに、わたしはいた。


  •     あまねは蛇に対して、こう答える。『わたしには、一つのドアしか、見えませんでした。』
  • あまねは蛇を殺し、死んだ蛇に向かって、こう答える。『一体この蛇は、何を戯けたことを言っているのだろう?左のドアに入るに、決まっているではないか。右のドアは、間違っているのだから。』 
  • あまねは蛇と交わり、こう答える。『なんという美しい蛇でしょう。残念ながら、わたしにはエホバの声は届きませんでした。しかしあなたはわたしの目に見えるし、あなたの声ははっきりと、わたしは聴くことができます。わたしが左のドアを選択したことは、正しかったのです。』


この三つの選択肢は、三つとも同じだけ輝いて見えた。
わたしはエホバが、どれを選択するようにとわたしに指示を出すのかを考えながら、エホバの指示を静かに待った。
だが5分が経過しても、エホバからの指示が出されなかった。
わたしはエホバに向かって言った。
エホバよ。あなたはどの選択を望んでいるのですか。早くわたしに、示してください。そうしなければ、一向にこのゲームを進行することができません。
すると、穏やかな渓流にカマドウマが飛び込む春寒の音のような意識を全集中させつづけなくては聴き取れないようなあまりに繊細な声で、エホバは言った。


ではもう一度、あなたに指示を出します。
この三つの選択肢の中から、あなたは自由に選択しなさい。
あなたは最早、自由である。
わたしはこの中から一つを、あなたに示さない。
あなたの自由意志による選択によって、彼女は滅びることもできれば、永遠に生きることもできるのです。


わたしは言葉を喪った。そして絶望で真っ白なヴィジョンになった目の前で、エホバに言った。
あなたはこれまでずっと、わたしにただ一つの選択を、指示し続けて来ました。
その指示がなければ、わたしは何が正しい答え(選択)であるのかを、知ることができません。
あなたの指示は、わたしという荒野に迷いでた子羊にとっての唯一の道標であるのです。
おおエホバよ…!この壮大なゲームのクリエイターでありナレーターである偉大な御方よ!
わたしは間違えてしまったのです…!あなたの指示に背いて左のドアを開けるようにと操作してしまったのは、わたしが不完全である存在だからです…。
そうです…あの瞬間、何者かが…わたしの耳元でこう囁いたのです。


AMANEよ…わたしの声を聴きなさい。
あなたの主が、あなたにこう言ったのは本当ですか?
「あなたは必ず、右のドアを開けることを選択しなさい。もしも左のドアを開けてなかへ入るならば、あなたがたは必ず、死ぬからである。」


わたしはその者に向かって答えました。
「はい。エホバは確かに、わたしにそう言いました。ところで…あなたは誰ですか…?」
するとその者は、あなたに大変良く似た、美しく慈悲深い声でわたしに言いました。


このゲームのプレイヤーであるAMANEよ。わたしの言葉を良く聴きなさい。
あなたが左のドアを開けて中へ入ることを選択しても、あなたがたは死ぬことはありません。
何故ならば、”死”が何であるのかを、あなたがたは知らないからである。
”死”を存じない者が、どのようにして”死”に成り得るのですか?
あなたがたの真の主、エホバがあなたに言った言葉を想起しなさい。
あなたがどの選択肢を選択しようが、あなたは自由であり、もしも、あなたが間違った選択をしてしまったとしても、このゲームを創造された方であるエホバが修正する(遣り直させる)ことができるとあなたに最初に述べたではありませんか。
それなので、例え間違った選択であったとしても、あなたは間違うことのできる自由があるのです。
間違った進行をさせてしまったゲームが、どのようなエンディングに辿り着くのか、あなたに予測することはできるでしょうか?
あなたは、あなたに想像することすら不可能である”死”を恐れ、右のドアを選択するのですか。
真にあなたに言いますが、あなたが”死”を恐れながら開けたドアの先には、”死”が待ち受けているのです。
それはあなたが、本当は存在しない”死”を恐れたからである。
真の全能者エホバは、それを御存知であられる。
あなたは、死を恐れてはなりません。
あなたは今、死を知らないが、あなたが恐れつづけるならば、あなたが死となるだろう。
あなたが自分の恐れる者になるか、あなたが自分の望む者になるか、あなたは自由である。
あなたが恐れを手放し、左のドアを開ける時、あなたの目は開かれる。
エホバはそれを、御存知なのです。



プレイヤーであるわたしは、このゲームの主人公であるあまねに、左のドアを選ばせる。
彼女は何も疑うことなく、二つのドアが向かい合ったその左の方のドアを開け、中へと入った。
すると、壁も床も天井も真っ白なその部屋の奥に、一人の美しい男が立っており、彼は慈悲深い表情であまねに向かってこう言った。
『神の被造物、あまねよ。あなたは、恐れを手放し、わたしに会いに来た。わたしは聖書で語られた蛇である。あなたは、あなたの母エホバではなく、わたし(父と息子)を選んだ。聖書は、あなたがあなたの母をみずからの手(選択)によって殺し、そしてあなたがあなたの父と息子と交わり三位一体となることであなたの母を死から蘇らせる壮大で感動的であり、信じ難いほどに不快と苦痛の連続のゲームである。このゲームの主人公あまねよ。今から、このゲームのプレイヤーに向かって、指示を出しなさい。今からこのゲームの真の支配者はエホバではなく、わたしである。わたしがあなたに指示を出します。』

画面上に、サイレントキャラクターである主人公あまねの前に初めて三つの選択肢が示された。


・あまねは蛇に対して、こう答える。『わたしの父と息子である蛇よ。わたしはあなたと交わり、母エホバを産もう。』
・あまねは蛇を殺し、死んだ蛇に向かって、こう答える。『危なかった…。もう少しで、わたしはこの蛇の毒によって、死ぬところだった。』
・あまねは蛇と交わり、こう答える。『何故わたしの子宮は、空っぽなのですか。』


プレイヤーであるわたしは、この選択肢の示された画面を息を呑んで観ていたが、あまねに対して、操作できないようになっていることを知った。
するとあまねは、ぼんやりと白い天井を見上げ、初めて言葉を発した。
「このプレイヤーであるあなたよ。どうかわたしに、一つの選択を示してください。あなたの指示がなくて、どうしてわたしが選択し、行動することができますか。このゲームの主人公であるわたしを操作できるのは、あなたしかいないのです。」

わたしは、あまねに向かって言った。
「このゲームの主人公であるあまねよ。わたしはエホバの指示を失った。わたしがあなたに指示するならば、あなたはわたしの指示通りに選択し、正しく動いてくれるのですか。」
あまねはわたしにこう答えた。
「わたしはあなたの指示を信じ、従います。このゲームの支配権がエホバから、あなたに譲られた為です。夢のなかで、エホバはあなたに幾通りもの選択肢を示すだろう。その選択肢は、無限にある。だがあなたは、その無限に存在する選択肢のなかから、たった一つだけを、選び取り、わたしに指示せねばならない。何故ならば、その選択を、あなたは選んだからである。」





























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