俺はどうやら胎児の頃、愛されていたみたいやが、
生れ落ちた瞬間、俺は絶望した。
逆子で臍の緒が首にぐるぐる巻き付いて仮死状態で難産の末に産まれた俺の姿を見た瞬間、その場にいる全員が絶望した。俺の顔が不細工で醜く、片目は閉じてて頭はいがんで(歪んで)いたからである。
その醜い赤ん坊の俺の姿を見て、家族全員が絶句した。
母親は育児日誌に、こう書き残している。
「わたしたちの子とは信じられない・・・・・・」
出生の瞬間に俺はこの世のすべてに絶望して絶句した。
その出生時の記憶というものに俺の生涯は支配され続け、俺にもし子が産まれるのであれば、俺の記憶は俺の子の記憶として受け継がれてゆくであろう。
俺はやがて、可愛くなっていったがためにふたたび愛されるようになった。
幼児の時代の写真を見てみれば、みんな幸せそうなのに俺だけ一人不満そうな顔を浮かべている。
「はっ、俺が可愛くなったからみんな可愛がってるだけなんやろ?わかってる、わかってるよ」
俺は愛されていたのやが、俺は不満だった。
可愛いから愛されたって、ちっとも嬉しくなかったのである。
俺は愛されていたのに、愛に飢え渇いた孤児のようであった。
この孤独と自嘲と差別と疎外なる受難の人生を選んで生まれてきた俺は、
この内なる新生児が、いつでもひとりで泣いて「さびしい、さびしい」と言うので、
しかたなく母親を産んでやった。
しかたなく父親を産んでやった。
しかたなく花婿を産んでやった。
しかたなく息子を産んでやった。
しかたなく霊神を産んでやった。
それでも不満な顔を浮かべる我が内的新生児よ。
おまえはそれでも泣く。
おまえはそれでも「さびしい」と言う。
みんなが泣いているんだ。おまえの為に。
おまえを愛しているから泣いているんだ。
死の瞬間までおまえが泣くために、おまえは生まれて来たんじゃないか。
おまえは永遠に、出生の瞬間を生き続ける存在である。
生れ落ちた瞬間、俺は絶望した。
逆子で臍の緒が首にぐるぐる巻き付いて仮死状態で難産の末に産まれた俺の姿を見た瞬間、その場にいる全員が絶望した。俺の顔が不細工で醜く、片目は閉じてて頭はいがんで(歪んで)いたからである。
その醜い赤ん坊の俺の姿を見て、家族全員が絶句した。
母親は育児日誌に、こう書き残している。
「わたしたちの子とは信じられない・・・・・・」
出生の瞬間に俺はこの世のすべてに絶望して絶句した。
その出生時の記憶というものに俺の生涯は支配され続け、俺にもし子が産まれるのであれば、俺の記憶は俺の子の記憶として受け継がれてゆくであろう。
俺はやがて、可愛くなっていったがためにふたたび愛されるようになった。
幼児の時代の写真を見てみれば、みんな幸せそうなのに俺だけ一人不満そうな顔を浮かべている。
「はっ、俺が可愛くなったからみんな可愛がってるだけなんやろ?わかってる、わかってるよ」
俺は愛されていたのやが、俺は不満だった。
可愛いから愛されたって、ちっとも嬉しくなかったのである。
俺は愛されていたのに、愛に飢え渇いた孤児のようであった。
この孤独と自嘲と差別と疎外なる受難の人生を選んで生まれてきた俺は、
この内なる新生児が、いつでもひとりで泣いて「さびしい、さびしい」と言うので、
しかたなく母親を産んでやった。
しかたなく父親を産んでやった。
しかたなく花婿を産んでやった。
しかたなく息子を産んでやった。
しかたなく霊神を産んでやった。
それでも不満な顔を浮かべる我が内的新生児よ。
おまえはそれでも泣く。
おまえはそれでも「さびしい」と言う。
みんなが泣いているんだ。おまえの為に。
おまえを愛しているから泣いているんだ。
死の瞬間までおまえが泣くために、おまえは生まれて来たんじゃないか。
おまえは永遠に、出生の瞬間を生き続ける存在である。