あまねのにっきずぶろぐ

1981年生
愛と悪 第九十九章からWes(Westley Allan Dodd)の物語へ

掌編小説集「Girls」

2017-03-16 21:08:54 | 物語(小説)
「I will marry A Snowman⛄️」


雪だるまはぼくに言いました。
「春になれば、わたしと結婚してください」
ぼくは雪だるまに問いかけました。
「どうして春にならないと結婚できないの?」
雪だるまは答えました。
「それは春にならなければ、今の姿のわたしのままでは、あなたを抱きしめただけであなたが凍えてしまうからです」
ぼくは納得して、春を待ちました。
そして待ちに待った春がやってきました。
ぼくはぼくの作った雪だるまのところまではち切れそうな喜びのなか走りました。
でもそこには、溶けて小石ほどにちいさくなった雪の塊だけがありました。
ぼくは悲しくってその雪の塊を食べてしまいました。
すると、とっても冷たくて凍るような涙が出てきて、それは地に落ちるまでは雪になりました。









Nicoletta Ceccoli









「Sailor's Love」


船乗りたちはみな想いを馳せます。
ぜひともあの人のみなとに辿り着きたいものだ。
しかし海が涸れ果てているなら、船を出すことさえできません。
どうすればこの海に水が満ちるか、一人の船乗りは真剣に考えました。
毎日毎日、涸れた大地に向かって船乗りは言いました。
「わたしはあなたを愛しています。わたしをどうか受け容れてください」
しかし大地は涸れたままで乾いた風が船乗りの頬を撫でるばかり。
船乗りはきっと犠牲が足りないのだと想いました。
「わたしがあなたをどれほど愛しているか、わたしが今から証明いたします」
そう言うと船乗りは自分の大事な両脚を刀で切り落とし、愛する大地へ捧げました。
すると天からとつぜん大雨が降ってきて、その雨は五年間ものあいだ止むことをしませんでした。
船乗りは五年間を月の船のなかで一人で過ごしていましたが、それはそれは苦しい五年の月日でした。
食べものは三日に一食ちいさなパンだけ、それ以外は雨水で過ごしました。
そして五年後にやっとみなとに着くことができた船乗りは心から喜んで大事な大事な贈り物をみなとで待っていたお姫様に手渡しました。




















「Blue Rabbit」


うさぎさんはさびしいと死んでしまうというのはほんとうです。
なぜなら、うさぎさんたちはほんとうに、ほんとうに、さびしがりやだからです。
さびしすぎて、そのストレスからびょうきになってしまうというわけです。
うさぎさんたちをさびしがらせたら、きっとすぐに死んでしまうにちがいありません。
だからうさぎさんがほんとうにだいじなら、ほんとうに、ほんとうに、可愛がってあげてください。
うさぎさんたちはみんな、それをこころから願っています。
ほんとうです。うさぎさんたちが、そう言っていました。
うさぎさんたちは嘘をつきません。
こころの綺麗ないきものなのです。
だからもしきみが、きみのうさぎんさんをほんとうに愛しているというのなら、
いつもいつも、いつでもいつでも、毎日何時間でも!ずっとずっとずうっと撫でてあげてください!
うさぎさんたちはほんとうにそうしてもらうのを待っていますし望んでいます!
そうしないと、ほんとうにあなたを置いて月にいっちゃいますよ?
嫌でしょう?!
そんなのって、あなたはぜったいに、ぜったいに哀しくってならないでしょう?
だから毎日彼らを、ぼ、ぼくを!可愛がってください!おねがい!

うさぎはそう飼い主の少女に本を読み聴かせている振りをして自分の気持ちをぶちまけました。


















「Love of the Gingerbread Man」


”ジンジャーブレッドマン”というやつは、世界で一番むかつくやつです。
しかしきゃつは、逃げ足だけはとっても速い(頭は悪いくせに!)ので、追いつくことがなかなか難しい。
少女はむかつくジンジャーブレッドマンを捕まえてやるために、彼に毎日のようにラブレターを送りました。
ありったけの愛の告白の言葉をネットで検索して調べて、そのすべてを活用しました。
すると馬鹿なジンジャーブレッドマンは案の定、すぐにこの”罠”に引っかかりました(笑)
”明日あたしのおうちに来たら、あたしの一番大事なものをあなたにあげる♡”
これで引っかかるなんて、なんて馬鹿なのかしら(笑)
待っていたらちょうどお昼にきゃつは少女の家のドアをノックしました。
トントントン。
ドアを開けるとジンジャーブレッドマンは大きな真っ赤なバラの花束を持って突っ立っていました。
まぬけな顔で(笑)
少女は笑いをこらえて彼を家のなかへ上げました。
そしてドアが閉まった瞬間に後ろの手に隠していたミルクパンで思いきり彼をぶん殴ってやりました。
粉々に粉砕されたジンジャーブレッドマンはそれでも声を発しました。
「きみを愛してるよ!」
少女は死んでないことにむかついて今度は熱湯をかけてやりました。
彼はどろどろになりましたが、それでも叫びました。
「どうしたらぼくを愛してくれるんだろう?!」
少女はヒステリックに叫んで絨毯に火をつけると外に出ました。
家は焦げ焦げになってしまいましたが、今でもその近くまで行くとジンジャーブレッドマンの焼けたばかりのいい匂いがして声が聴こえてきます。
「ぼくはどうしたら、きみに愛されるのかなあ!」
少女は後悔して、いつも新しいおうちへ帰りました。





















「Mama's Secret」


ある日、少女がママのお部屋に入って何か面白いものを見つけようとママの机のすべての引き出しを調べました。
すると一番下の引き出しは鍵が閉まっていて開けられませんでした。
少女はその引き出しの中にはきっと一番面白いものが入っているに違いない!と思ったので
無我夢中になってその鍵が何処にあるかを家中探し回りました。
すると死んだパパの大事な遺品のしまってある洋服ダンスの一番下の引き出しの一番奥に鍵を見つけました。
さっそくママの部屋に戻って閉まっていた引き出しに鍵を差し込んでみると鍵が開いて引き出しが開きました。
少女はその引き出しを外へ出してひっくり返しました。
その一番上の写真のようなものをめくって見てみると、そこには自分そっくりの姿と自分が今着ているのとまったく同じ洋服姿の少女が笑っていました。
ほかのものもすべて同じ少女の映った写真で、ママとパパと一緒に微笑んでいる写真もありました。
名前と日付が書いてあるのを見てみるとその名前は自分の名前と同じで日付は自分の生まれる十年前でした。
少女は最初、自分のお姉さまなのだろうかと想いましたが、でもそれならどうしてママが教えてくれないのかがわかりません。
それに自分の顔とまるで瓜二つのその顔はどう見ても自分自身のように想えてなりませんでした。
少女はきっとこの少女は自分の前世なのだと想いました。
大好きなママにまた愛されたくってきっとまたママの子どもに生まれてきたんだと想いました。
あんまりそっくりだから、きっとママが教えてくれなかったんだと想いました。
そのとき、家のドアを開ける音が聞こえました。
ママが帰ってきちゃった!少女は慌てて引き出しのなかのものを全部引き出しに詰めて鍵を閉めました。
何事もなかったかのようにママを迎えると微笑みました。
明日は検診の為に毎月一度行かなくてはならない病院の日です。
少女はなぜかいつも数時間そこでお薬で眠らされます。
いったいなんの検診をされているのでしょう?
帰った日はいつもお腹のあたりに金属と油のにおいが染み付いてなかなか取れないのが気になります。
でもママがとっても大切な検診だからって言うので、少女はママに愛されるためいつも良い子でいたいのです。



























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